論考

Thesis

土壌環境浄化ビジネスはいかがですか?

「土地」は我われの主要な資産であり、日々の生活を営む大切な舞台である。それゆえ、「土の環境保全」は人間生活の生命・財産に直結する重要な政策課題である。こうした認識の下、自治体を巻き込んだ土壌環境浄化ビジネスに取り組んでいる。

「土地は重要な資産であり、生活の基盤である。ところが、近年、土壌汚染によってこの大切な土地が知らぬ間に汚染され、その資産価値が損なわれるだけでなく、人間の生命そのものにまで危険が及ぶ事態になっている。
 「日本には重大な土壌汚染箇所が少なくとも全国に数千の単位であります。」こう断言するのは、千葉県・君津市役所で環境部環境保全課長補佐を務める鈴木喜計(すずきよしかず)さんである。1999年の夏、電通総研を退職し、地域に根ざした政策シンクタンク・ヒストリア総合研究所の創設準備にかかっていた私は、君津市役所で環境行政に携わり、鈴木さんと出会った。鈴木さんは、地質学者として優れた知見と業績を持つ土壌環境浄化のプロフェッショナルである。彼は言葉を続けた。
「全国で工場事業所、クリーニング店、ガソリンスタンドなど、汚染箇所は最多で40数万と推定される調査研究もあります。トリクロロエチレンなど塩素系有機溶剤の発ガン性による健康被害など、コミュニティにとって深刻な公害問題です。」
 アメリカやドイツなど、土壌・土質に関する汚染の規制・浄化に関する法制度が整備された国では、土地取引の際に土壌汚染調査を実施するなど、土壌汚染に対する関心が高い。こうした国では調査で汚染が見つかると、土地売買が中止され、所有者や売主の責任、費用負担で浄化が行われることも頻繁である。ところが、わが国においては、「土」そのものに関する規制・浄化法制はなく、環境行政は水質汚濁防止法などの公害規制法に則り、環境規制物質の汚染について「地下水」汚染などの観点からのみ行われてきた。最近ようやく土壌に関する環境管理法案が環境省を中心に取りまとめられつつある。
 そんな中、鈴木さんが興味深い一言を発した。「君津市では土壌汚染浄化行政の成果を活かして、市長名で土壌汚染調査および浄化に関する特許を取得しているのですよ。これまで権利行使はしてこなかったのですが…。」これからの時代、大学所有の特許の活用など、公的機関や自治体が所有する知的財産権の活用は、地域経済や産業創造の一つの大きなきっかけになる。そう考えた私は、すぐに「是非、君津市の特許活用のお手伝いさせてください」と申し出、2001年4月に君津市と協定書を締結し、特許の管理や利用促進活動を行うことになった。これは、自治体の税外収入への新たな取り組みでもある。「有機塩素系化合物など揮発性汚染物質の簡易で安価な調査・浄化技術」を売り文句に、一つのうねりを作っていきたい。

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薦田宏俊の論考

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Hirotoshi Komoda

薦田宏俊

第6期

薦田 宏俊

こもだ・ひろとし

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