論考

Thesis

佐久にも未来がやってくる

昨年10月に行われた長野県知事選挙で、作家の田中康夫氏が当選し、長野県全域に「一般県民の反乱」を巻き起こした。官対民、組織型対草の根型、旧守派対改革派の戦いは、県だけでなく、より市民に身近な市町村レベルの自治体にも広がっている。 昨年11月まで、長野県佐久市で市議を務めた木内均塾員(第9期生)にその様子を報告してもらった。

ミニ集会模様
▲県知事選の際、田中康夫氏のミニ集会を自分の事務所で開く
(写真右側で立っているのが本人)

 本州のほぼ中央、長野県の首都圏への玄関口に位置する佐久市は、人口7万弱の地方都市である。ここでも行政に対する不満が出始めている。長野県政を覆っていた、「市民は税金を納めなさい。使い道は行政が決めます」、へたに口出しすれば、予算編成の際にしっぺ返しが来るという前近代的な気風は、そっくり佐久市にも当てはまる。

 こうした環境の中、「民主主義の基本は積極的な情報公開」と考える私は、自分たちのまちづくりを自分たちの手で行うため、市の総合計画を全市民参加によるワークショップ方式で行おうと提案している。その手始めとして、予算編成過程をインターネットなどで公開することを考えている。

 地方財政が相当な赤字を垂れ流し、国家財政も破綻寸前の今、従来のような施設整備を中心にした「まちづくり」には限界がある。今、地方自治体に必要なのは、すでに手にしている施設を積極的に活用する「まちづかい」の考え方である。加えて、行政評価制度の導入、公共事業への積極的なPFI方式(民間資金の活用による公共施設等の整備)の検討、各種審議会委員の公募制などに代表される高い「透明性」と、365日いつでも開いている市役所など、「住民サービスに重点を置いた行政運営」である。
 また、きめ細かな行政と気候風土にあった政策も欠かせない。例えば、既存商店街の活性化にITを導入したり「御用聞き」を復活させる、福祉サービスに新聞朗読ボランティアを活用するなどである。

 地方自治体運営の方法は、時代とともに急速に変わりつつある。今、時代が求めているのは、効率的でしかも温かみのある行政を行うために、市民の知恵を積極的に活用していくことである。官主導のおまかせ行政は「市民参加型」へと置き換わり、施設中心の行政は「コンテンツ中心」へと変わりつつある。未来を先取りしていく「経営者」が今、佐久市にも求められている。

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木内均の論考

Thesis

Hitoshi Kiuchi

松下政経塾 本館

第9期

木内 均

きうち・ひとし

元衆議院議員

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