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2019年5月

実践活動報告 子どもも大人も成長できる~子どもを中心に働き方、生き方を創る~
松木香凜/松下政経塾第38期生

誰もが自らの力を生かせる社会を実現するために、働く子育て世帯への支援が一つの策であると私は考えてきました。今、様々な企業や行政でその制度や環境が整えられています。今回は、実際に「子どもを中心にして社会を考える」ビジョンを持ち、実施する企業の取り組みを学んできました。

 

 現在、女性の就労率の上昇やそれに伴う共働き世帯の増加など、家族を取り巻く環境は大きく変化しています。女性の就労時間が増えれば、これまで女性たちが主に担ってきた家事という「家族を運営する仕事」は誰の担当になるのでしょうか。共働き世帯が増えた今でも、家事負担の多くを女性が担っており、女性がどのような働き方をしていてもその状況はあまり変わっていません。お金を稼ぐ労働と合わせて、家事も労働であると定義すれば、長時間会社に拘束される人に限らず、仕事と家事を担う人の労働時間も長いものと考えられます。仕事、そして家事によって、自分の時間を持つ余裕がないのは男性も女性も同じです。このような状況において、誰もが自らの力を生かせる多様性に富んだ社会を実現するには、働く子育て世代の家族への支援が必要不可欠となります。仕事と家庭の両立やワークライフバランスといった言葉も近年浸透しつつあります。家族の子どもの目線に立った支援は次世代を担う人を育てるという点で重要です。実際には、企業や行政によってそれぞれ制度や環境が整えられています。今回は「子どもを中心にして社会を考える」をビジョンとし、実施している企業としてKODOMOLOGY株式会社の取り組みを学びました。


①カンガルーム汐留(資生堂の事業所内保育所)

 この会社は株式会社資生堂によって、未来に向けてよりよい社会を作ることを、「子育て」という視点から進めるため、元々実施していた保育事業を分社化して創設されました。
 株式会社資生堂は、化粧品という女性をメインターゲットとしてきた会社であり、女性が以前から多く働く現場であるからこそ、事業所内保育園をいち早く導入し、運営してきました。そのようにいち早く女性が存分に働くにあたり必要な支援に取り組む中で生まれたKODOMOLOGY株式会社の学びから、3つのポイントを取り上げ、ご紹介します。


②KODOMOLOGY株式会社経営企画本部の方々

1. 女性の社会進出の3ステップ

 「まず、女性の社会進出には3つのステップがあります」というお話がありました。
 女性の就労が増え、そして結婚や妊娠、出産といったライフイベントを機に辞めてしまい、キャリアを断絶させてしまう1番目のステップです。そこから、育児休業制度や保育園整備などが進められ一歩上がると、働き続けながらも子育てなどができる、すなわちキャリアと家庭を両立できる2番目のステップに続きます。その先には女性も家庭を充実させながらもキャリアアップも図れるという3番目のステップがあります。

図 1 女性の社会進出の3ステップ

出所)ヒアリング内容より筆者作成

 女性が本当に活躍する職場は、家庭と仕事の両立した上でのキャリアアップまで可能であるところです。男性も女性も関係なく、一人の人間、つまり同じ労働力として評価され、望む人には上に進む道があるということの重要性を感じました。働き方やサポートを自分に合わせて選ぶことができる企業の環境は働く人々にとって、職場に愛着を生み、より良い人財を集めるための魅力にもなるのだろうと思います。

2. 100年先に何を残すのか

 2015年資生堂内の未来創造局が「100年先の資生堂」を多くの社員とともに考える機会を設けたとき、子どもや子育てへのサポートに関する事業案が多く表出したそうです。そこで、それを実現・実行するために立ち上げられたのが、KODOMOLOGY株式会社です。
 この「100年先」というワードを聞いたとき、松下政経塾の理念にある「国家百年の大計」が私の脳裏を過りました。松下幸之助塾主は、当面の事態に対する方策も必要であるが、それらの根底となる、そして将来にわたり国家国民の真の繁栄のための基本指針となる国家の大計が必要であると述べています[1]。目の前、今見えているものだけにとらわれることなく、その先の繁栄を見据えた方向性を示すものが必要であり、重要なのです。
 未来がどうあればいいものであるかを考えた時、やはりそこに生きる人、世代に向けてより良いものを残し伝えていきたいという意思は、多くの人々の共通の願いであると感じました。待機児童問題がある現在、問題解決のために始まった事業所内保育園も、未来へつながるもの、将来を担う子どものためのものへと、これからも益々進化していくに違いありません。短期的な、目の前の課題解決をしていくその先に、長期的なゴールを考えることや、未来の目論見を立てることの重要性を改めて感じました。子どもに向けて培われ育まれた社会あるいは企業の環境や風土は、次世代への希望を育て、より良き未来を築くための一歩になるでしょう。

3. 子どもだけではなく、大人も成長できる

 親は一日にしてならず。子育ては子どもを成長させるだけではなく、大人も一緒に成長します。子どもの世話やそのふれあいによって、新たな気づきや学びを得られます。実は普段見えていないもの、表面化しにくいものこそが、別の視点を得て可視化されるようになることもあります。KODOMOLOGY株式会社では、大人の成長をサポートすることを目的としてKODOMOLOGY_Caféというワークショップを開催しています。ワークショップは子育てとキャリアの両立などのテーマで開催され、子育てを通して働き方や家事などを改めて考える場となっています。このようなワークショップなどを通して、これから初めて子育てに向き合う人やこれまであまり関わっていなかった人も、様々な人が子どもと一緒に成長する力を得ています。子育てや家事などの身の回り大半の事が、やらなければいけないという「義務」から「当たり前」になるには、決して低くはないハードルがあります。しかしながら、子育ても家事も自分がやらなければ、他に誰かやっている人が確実にいるはずです。ほったらかしのままで子どもは育つことはありませんし、魔法でも使えなければ家事も済みません。脇から手伝うというスタンスでなく主体的に参加するあるいは、一緒に暮らす人同士でどのように分け合うかを考えることによって、子どもと一緒に自分の身の回りのこと、個人としての自分を見直すきっかけにもなるのではないでしょうか。
 貴重な人生の時間を大切に、素敵に過ごすために何が必要であるのか、今後も考え続ける必要があると改めて感じました。


③KODOMOLOGY_Café(大人の成長をサポートすることを目的とした子育てなどに関するワークショップ)

 
[1] 松下幸之助(2010)『新土創成論 日本をひらく』PHP研究所

2019年5月 執筆
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