松下政経塾 The Matsushita Institute of
Government and Management

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関西研修
2006年5月

研修レポート

関西研修レポート
杉本哲也/卒塾生

 

 塾主ゆかりの地を訪問することによって、政経塾の理念と塾生の使命を認識する毎年恒例の関西研修。今年の目的は例年と違い、「塾主を知る」ことだけでなく、「様々なことを体験する」ことにもあった。

 今回の研修での行程順に、各訪問先での出来事や感想を簡単に述べる。

 まず研修の始めに京都のPHP研究所を訪れた。ここでは、塾主研究の第一人者である江口社長や佐藤本部長より塾主の人間観・国家観に関するご講義を頂いたり、塾主の考えについて塾生同士でディスカッションを行ったりした。今まで塾主の思想に関する本を何冊か読んだことはあったが、江口社長や佐藤本部長のお話を聴かせていただいて、初めて塾主の人間観や国家観を少し理解することが出来た。そして次に、塾主の別邸であった真々庵を訪れた。真々庵の荘厳な庭を見たり、塾主が毎朝お祈りをしていたという根源の社の前でお祈りしたりして、私は塾主の人間観をより一層はっきりと理解することが出来た。さらに、裏千家家元邸内にある今日庵を訪れ、お家元のお話を伺った。また中島宋基業躰先生による御点前を頂き、今日庵の各部屋を見学させていただいたことで、塾主が最も大事にしていたという茶道の精神の最高峰を肌で感じることが出来た。

 その後、丹後へ移動し、今度は田植えを体験した。田植えをするのは小学生の時以来であるが、等間隔に効率よく苗を植えるのにはかなり苦労した。そして次の日には、田植えをした田で採れた米を使って、酢造りを営んでいる飯尾醸造を見学させていただいた。飯尾醸造は精魂込めて育てられた米を原料に、昔ながらの方法で酢造りを行っている会社で、長い時間をかけて醸造された酢は、自然の恵みが濃縮された逸品であると感じた。

 さらに今度は、塾主のお墓参りに出かけた。塾主のお墓は和歌山県の千旦という駅の近くの塾主生誕の地付近にある。塾主という人間を生み出す根本となった地を自分の目で確かめたが、田んぼや畑の後ろに山が聳え立っていて、なんともいえない日本的情緒が漂う地であった。次の日には大阪・門真にある松下電器本社を訪問した。塾主が社長をしていた頃の松下電器とは随分変わってはいるが、何か塾主の経営理念なるものを感じた。その後、歴史館や資料館を訪問見学し、塾主の経営観というものに対する理解が一層深まった。

 最後に伊勢にある修養団の道場を訪れ、禊を行った。五月とはいえ冷たく感じる五十鈴川の水の中で心を清められた思いがした。そして、最終日に伊勢神宮を参拝した。日本人の心のふるさとである神殿を参拝し、改めて自分が日本人であるということを認識した。

 今回の関西研修は、塾主の教育方針の柱である現地現場主義の真骨頂だったのではないかと思う。つまり塾主を知るために、塾主が生まれ育った場所や経営を行った場所、考え耽った場所を体感したり、実際に塾主とお会いしたことがある方々に会って塾主の話を聴いたりと、まさに塾主研究の現場訪問であったと言える。また田植えや禊、伊勢神宮参拝などを実際に体験してみて、農家の方々の愛情や自然の恵み、神の恩恵を現場で体感したといえよう。そして私はこの関西研修を通して、「感謝する」ことの大切さを学んだ。以下に私がそう感じたきっかけについて2点述べる。

 PHP研究所の江口社長から語っていただいた塾主のお話の中に次のようなものがあった。「塾主のことが熱烈に好きな、ある中小企業の社長がたまたま新幹線の中で塾主に遭遇した。その社長は塾主と話をするきっかけを作るために塾主にみかんを贈った。塾主はその行為に大変感激なさって、京都駅で新幹線を降りた後、その社長が座っていた席の窓の外に歩いてきて、姿が見えなくなるまでお辞儀をして、感謝の気持ちを表明された。」
また塾主はどんなに忙しくても来客が帰る際には必ず玄関まで出向いて、来客の姿が見えなくなるまで深くお辞儀をしていたそうだ。実際私たち塾生がPHP研究所を去るときには、江口社長は佐藤本部長と共に玄関まで見送ってくださり、姿が見えなくなるまでお辞儀をしてくださった。その後、真々庵に行っても、松下電器本社や歴史館、資料館に行っても、塾主に関わりの深い場所では必ず関係者全員が見送ってくださり、姿が見えなくなるまで頭を下げてくださった。つまり、たとえどんな些細なことであろうとも「感謝の気持ちを行動で表す」、ここに塾主の人間観が集約されていると感じた。

 また修養団では、食事を頂く前に全員で手を合わせて「天地一切の恵みとこれを作られた人々のご苦労に感謝いたします。いただきます。」と唱和してから、食事を頂いた。そして実際、ご飯は一粒も残さずに食べた。修養団に行く前に私たちは田植えを経験した。私たちが田植えを行った田で採れた米は酢造りに使われてしまうのではあるが、田植えを経験することで私たちが食べている米を作られている農家の方々のご苦労が少しわかった。そして実際にお米が出来上がるためには、田植えだけでなく、雑草取りや稲刈りなどの労働、さらには天地自然の恵みがあって初めて成り立つ。さらに私たちが食べられる状態になるためには、農家の方々だけでなく、米の商売をする方々、米を調理する方々のご苦労が必要なのである。私たちは普段何気なく生活を送っているが、実際にはこのように多くの人々や天地自然の働きに助けられて生きているのだ。私はこれらの人々のご苦労や天地自然の恵みに感謝しなければならないと強く感じた。

 今回の研修を終えて、この素晴らしい環境で研修させてもらっている自分の境遇と政経塾を建塾された塾主への感謝の念が一層深まった。そして私たち塾生の使命は、塾主への感謝の念を表明すべく、塾主の想いに応えることであると感じた。今回、関西研修でお世話になった方々に感謝申し上げると共に、塾生の使命をしっかりと胸に留め、世の中に貢献できる人間になれるよう研鑽していきたい。

2006年5月 執筆
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