松下政経塾 The Matsushita Institute of
Goverment and Management

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100km行軍
2005年10月

研修レポート

薄れつつある荒行の記憶の中で
源馬謙太郎/卒塾生

 

2005年09月29日 午前10時00分 松下政経塾正門出発
                        鎌倉・横須賀などを経由し、三浦半島を一周
         翌30日 午前09時50分 再び松下政経塾到着

経過した時間23時間50分。
距離にするとちょうど100キロの道のりを、24時間以内に歩ききるという目的を達成することができた。

これは当松下政経塾の恒例行事であり、一年生塾生に対する洗礼行事である。
正直に言うとこの行事について、私はそれほど意識していなかった。やれば当然できると思っていたし、これまでほとんどの先輩が経験しさらにここ数年は脱落者も出ていないということが、プレッシャーとはならず逆に私に高をくくらせていた。実際に脱落者も出さず歩ききり、そして思ったよりも早く筋肉痛とともにそんな行事あったということも徐々に薄れはじめている。しかし現実に歩いているときは、やはり洗礼というだけあって、想像よりはるかにきつかった。
もはや行事とは言うまい。
肉体的にも精神的にも苦痛を伴う「荒行」であった。

以前は塾生各自が一人一組体勢で歩いていたようであるが、現在は数名の組を編成して全員での目標達成を目指すことになっている。チーム全員がゴールできないと、翌年また全員で参加しなくてはならないという連帯責任制。私はイ組の組長として男ばかり3人のチームを、100キロをもう一度歩くというアンビリーバブルな罰ゲームから回避させる大役を担った。つまり目標はただ一つ、全員での完歩である。

各組ごとに戦略を練り、歩くペースなども考えてそれぞれゴールを目指すわけだが、ほとんどが時速5キロのペースで1時間ごとに5分から10分の休憩をとる。それが最も合理的であるように思えたし、10キロごとに上級生が待機してくれているサポートポイントがあるということもあって、イ組もその方針を採った。無理をせず、可能な限りラップタイムを稼いで後半に余裕を持たせようという作戦だった。

余裕がなくなってきたのはちょうど後半に入ったあたりだった。
それまでは余裕を持って歩けていた60キロ地点を過ぎ、頭痛から始まった痛みが徐々に体に広がってくる。
70キロ地点では太ももが硬直し始めほとんど足が動かなくなってきたため、歩くペースを大分落とさせてもらう。
75キロ地点、それまでに稼いできた予備時間を使い果たす。足の指先から腿の付け根まで、足全体に痛みが襲う。
80キロ地点、政経塾に設置されている本部からこのままのペースで行くと時間的に厳しいとの連絡が入り、痛みを抱えたまま歩くペースを元に戻す。

60キロ地点から90キロ地点までがまさに地獄の30キロであった。少しでも気を抜けば頭をよぎることは「痛い」という生理的信号だけ。
さすがにこれはまずいと考え、限界だと思いつつも気力で体の痛みを克服し歩き続け、そして無事イ組全員で完歩することができた。

肉体的・精神的限界に挑戦して、そこから何が見えるかを学ぶのがこの荒行の真髄だろう。
確かにそこから学ぶところはあったし、挑戦した意義は大きかった。
中でも、最も辛かったとき心を強く持ち続けることの大切さと難しさを私は痛感し、結局それが、いたって月並みではあるが、エッセンスであると確信する。
しかし果たして本当にあれが私の限界だったのだろうか。
体の痛みとともにこの荒行の記憶が薄れて薄れていく中で、その思いだけが大きくなってくる。やはり私は、あれは私の限界ではなかったと信じたい。
確かに精神力だけで体の痛みに耐え、100キロを歩くということは尋常なことではない。そのとき確かに「極限」という言葉を感じ、感じては打ち消しながら歩いた。
しかし、今後これ以上の困難はやってくるだろうし、それをも心をしっかり持って乗り越えていけるだろうと、またしても高をくくっている自分がいる。
私の限界はまだまだ先にある。
今後も辛いときこそ心だけは折れないように、そのためにこの100キロ行軍の経験を生かしていきたい。

最後に、この行事を企画運営してくださった塾スタッフの皆様、わざわざ応援に駆けつけてくださった塾員の皆様、各サポートポイントで手厚いサポートをしてくださった先輩方、そしてゴールまでリーダーである私を支えてくれたイ組のみんなに感謝したい。皆様の力と支えがなければ確実にゴールすることはできなかったと思う。ありがとうございました。

2005年10月 執筆
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