松下政経塾 The Matsushita Institute of
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1999年11月

塾報

介護型公共事業への転換を
山井和則/卒塾生

 山井和則塾員(第7期生)は「一番弱い人が豊かに生きることができる国」を求めて、在塾中から世界中の福祉の現場を歩いてきた。現在、介護保険について議論が沸騰している。介護保険を円滑に始めるために彼の話を聞いた(文責:編集部)。

 
 私は大学生の時、母子寮でボランティアをしていました。そこで見たのは、親の貧しさが子の貧しさを生み、ハンディキャップがさらなるハンディキャップを生むという、「貧しさの連鎖」「ダブル・ハンディキャップ」でした。
 世の中には人の関心をひきつける明るいテーマとそうでない暗い問題があります。また、お金になる問題とならない問題という分け方もできます。政治家は注目を浴びる「明るい問題」にヒマワリのように顔が向きがちです。「お金になる」ことにも磁石のようにひかれる。しかし問題は「暗くて・お金にもならない」分野、誰もが注意を向けない・向けたがらない問題です。「涙あるところに政治あり」なのです。私はこの分野こそ政治が解決すべきだと思い、政治家を志して松下政経塾に入塾しました。

 今年の10月から介護保険の申請が始まりました。11月以降に結果が通知され、来年の4月からいよいよ制度がスタートします。65歳以上の高齢者の12%から15%が申請すると言われていますが、健康な残り8割以上の高齢者にも大きな影響があることは言うまでもありません。
 ところが一方で、「介護保険の先送り」が議論されています。もちろん介護保険にも問題点はあります。しかし、それをいかに解決するかこそ政治家は議論すべきであり、「選挙に有利か不利か」という目先のことだけで、21世紀の老後を左右する介護保険が議論されていることに怒りを感じます。「必要なものは必要」「問題点は問題点としてしっかり改善する」という態度が重要です。
 具体的には、たとえば、「保険あってサービスなし」にならないか、という問題があります。その最たるものが「痴ほう対策の切り札」とされる痴ほう性高齢者向けのグループホームです。介護保険のメニューに入っているのに全国で100カ所足らずしかなく、大半が希望しても利用できません。

 この例のように介護保険の過渡期対策には、介護職員や介護施設の増加が必要とされます。日本は今、雇用創出と内需拡大が至上命令です。景気対策として介護サービスの充実に力を入れれば一石二鳥ではないでしょうか。
 実際、茨城県福祉部の調査研究(1998年3月)でも、ホームヘルパーの雇用や老人ホームなどの「介護型公共事業」は従来の「建設型公共事業」に比べ経済波及効果がやや高く、雇用創出効果も1.5倍という推計が出ています。福祉は労働集約型の産業なのです。たとえば50人の老人を12人のスタッフでお世話をする場合、サービスの向上はスタッフを増やすか優秀なスタッフを雇う(給与を上げる)ことしかありません。また、「介護型公共事業」は市町村ごとの地域に密着した事業ですから、その地域の中小企業に大きな経済効果を及ぼします。無責任に「介護保険の延期」を言うより、これを機に公共事業のあり方を考え直し、大型建設プロジェクトから、「介護型公共事業」重視に転換することが必要ではないでしょうか。私も、今後とも「安心して年をとれる社会づくり」をライフワークに活動していくつもりです。

1999年11月 執筆
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