松下政経塾 The Matsushita Institute of
Goverment and Management

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関西研修
2002年11月

研修レポート

関西研修 感想
上里直司/卒塾生

 

 関西研修には大きく二つの目的があった。一つ目は松下幸之助塾主のゆかりの地をたずね、塾主の想いを感じ取ることである。二つ目は研修で訪れる地域の知事との懇談で、地方自治の現状を感じ取ることだ。研修の感想とそこから出た反省、そして来年の研修への要望を記してみた。

 松下幸之助塾主ゆかりの地を何ヶ所か訪問したが、中でも強く印象に残ったのはPHP研究所の江口専務の講義と真々庵の訪問であった。この二つの出来事から、塾主の、崩れ行く日本をどうするかという想いと、政経塾を設立した想いを垣間見たような気がした。

 「起立、礼、というの(号令)はあまり好きではない」PHP総合研究所の江口副社長は講義の冒頭、こう述べられた。付け加えて、「自分で考え、自分で行動する」人間が、今後求められるとおっしゃった。毎日、朝会で「自主自立の事」と五誓を声に出している。しかし、言葉だけ覚えても、他を頼らず人をあてにせず、自らの足で歩くことがいかに難しいか、最近感じている。また、自主自立が必要であるのは、個人だけの問題だけでなく、日本全国の地域にとっても課題である。行きづまった中央集権を打破するためにも、自立した地域づくり、地域主権の必要性を江口氏は強調していた。「自主自立の事」は、時代を切り開くキーワードになろうとしていることを実感した。

 真々庵にある根源社に祈りをこめる塾主の姿を、以前ビデオで拝見した。塾主にとって神聖な場所で、この社の前にやってきて長時間思索に耽ることが多かったそうだ。現在、根源社は、真々庵、PHP研究所、松下電器産業本社内の三ヵ所にある。そして四つ目を政経塾に建てようと塾主はお考えであった。ただ、周囲が同意しなかったため実現できなかったようだ。これを聞くと、塾主が他の三つの場所と同様に松下政経塾を大切にしていたことがわかる。訪問する前日、江口副社長が「塾主の思いだけはいつも心の根底において欲しい。一秒、一分たりともおろそかにしないで欲しい」と言っていたことも思い出し、つい目頭が熱くなってしまった。それほど大事にされ、期待をかけていた政経塾で研修させていただく喜びと、これまで、塾主の思いを忘れ行動していなたことへの反省がこみ上げてきた。

 日本の混迷を憂えて夜も眠れなかった塾主の姿と、その混迷を打破するために何をすればいいかを考えて根源社の前で祈る塾主の姿が目に浮かんでくる。この松下政経塾は、塾主の憂いと祈りにも似た境地の中から生まれてきたのだろう。そのことを言葉だけでなく、強烈なイメージとして頭の中に映すことができて本当に有意義だった。

 研修の二つ目の目的は、北川三重県知事、木村和歌山県知事、山田京都府知事との懇談である。府県知事との懇談で、自立した地域づくりのため果敢に挑戦されているという印象を受けた。中央を覆う閉塞感を打破できるのは地方からでしかないと確信した。

 北川正恭知事のお話で印象に残っているのは、「価値観を転倒させる」という言葉であった。似たような表現に、「パラダイムを変える」「思い込みの打破」という言葉もあった。現状から物事を考えるのでなく、ゼロベースの視点をもっている。また、その視点で政策を考え、対話(ダイアログ)による、自らの意見を相手に納得させる根気にこれまで日本のリーダーに足りなかった力を感じた。自立した地球市民が増えれば世界も変わる、という理念を足元の三重県から着実に実践している様子がよくわかった。

 木村良樹知事のお話で印象に残っているのは、「開かれた地方」というキーワードであった。それを生み出すのが地域住民と都市住民の「交流」である。知事が取り組んでいる事業の全てが「開かれた地方」と「交流」に関連づけられるように思えた。地域の再生に、市場原理を動かす「競争」だけを持ち込むだけでは不十分で、そこに文化の再確認を促す「交流」を持ち込むことが同時に必要だと改めて感じた。

 山田啓二知事のお話で印象に残っているのは「調整機能」というキーワードであった。山田知事が考える「調整機能」と少し発想がずれるが、政令市と国との調整というのが府政に求められていると感じた。府の人口256万人のうち、5割強、138万人を抱える政令指定都市、京都市との政策面の調整は必要である。道州制、連邦制、市町村合併と課題を抱える地域経営の中で府県の役割の発想の転換も求められると感じた。

 三知事のお話の中で、特色ある地域づくりに向けてどの知事も工夫をこらし、抵抗する勢力に挑んでいく姿が見えました。方法論や手段についてはいろんな策が出尽くされた感もあり、あとはそれをどれだけ実行に移すかということにかかっている。知事には大きな権限があり、変わるようでなかなか変わらない中央より、確実に地域を変えていく。まさしく知事が日本を変えていくだろう。

2002年11月 執筆
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