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経営理念レポート

「真に国家と国民を愛し、新しい人間観に基づく政治経営の理念を探求し、人類の繁栄幸福と世界の平和に貢献しよう」

 松下政経塾の塾是。塾生として、一字一句拳々服膺しなければならない言葉だ。しかし、私の中で一点理解に困難な言葉があった。それは、「経営」という言葉だ。社会人として企業で勤めた経験の無い私にとって未知の領域であり、自己体験として物語ることのできないものであった。しかし、この「経営」という自己の理念を持たない限り、塾主の「政治経営」、「国家経営」、そして「自治体経営」を、私が実践者として実現することは困難なのではないかと考えた。

 「『経営』とは何か」。
私は、自らの経営理念を打ち立てるべく、「製造実習」、「販売実習」の研修を通じて、皮膚感覚で実感した視点から解を導き出していきたい。

1、製造実習 ~人が夢と希望を吹き込むものづくり~

 2009年10月26日から11月6日の間、私は滋賀県東近江市にあるパナホームの第三工場にて、家の外壁を作る「2P外壁」の生産ラインにて、次から次へと流れてくるパネルに、ただひたすらビスを打っていた。

 「ものづくり大国」として世界に冠たる技術を有し、我が国の繁栄に歴史的な役割を果たす製造業の現場を体験し、また製造業の現場で働く人々との協働作業を経験することで、日本の製造業の在り方を自ら探求する研修であった。

 私が配置された生産ラインは、迅速さと効率性が求められていた。製造現場で働く経験の無い私にとって、全てが新鮮であった。外装材を外壁のパネルに取り付け、パネルにエアードリルで穴をあけ、ビス締めするという工程に携わったのだが、次々と疑問が湧き出てくる。
「これは何ですか」
「この機械は何ですか」
「これはどのようにして使うのですか」
同じラインで働いていた人に何回も何回も問い続け、大いに迷惑をかけただろう。

 だが、従業員の一人の言葉が今でも私の心に鮮明に残っている。
「自分が作った外壁が組み立てられ、家ができ、その家に20年、30年、そして50年と住み続けてくれると思うと達成感を感じるんですよ」

 モチベーション高く、仕事に誇りを持って取り組む。そして、自ら作る製品に夢や希望を吹き込み、お客様に提供する。これこそ、まさに日本のものづくりの真髄ともいえる言葉であった。

 誰もが「働く」ということに誇りを持ち、家を買い求めるお客様に夢と希望を吹き込みながら作業に取り組む人々の姿。そして、作業の迅速化と同時に、質の高い製品を作るため、明確な「目標」を打ち立て、目標を達成すべく、皆が「共助の精神」で一つ一つの作業に対し、丁寧にそれぞれの想いを込めて取り組み、皆が議論をして、日夜創意工夫を積み重ねていく。人と人とが手を取り合い、日々生成発展しながら、日本を支えるものづくりの現場。これこそが、まさに経営の真髄ではなかろうか。

2、販売実習 ~信頼と絆、そして「耳を傾ける」~

 2009年11月30日から12月11日の間、「町の電器屋さん」といわれるパナソニックの専門店で販売実習に取り組んだ。電化製品をお客様のお宅へ搬入、商品説明、訪問販売…。セールスマンとしての経験が全く無い私にとって未知の世界でもあった。しかし、ここで果敢に挑戦することで何かが見えてくるのではないかと考え、一社員になりきる想いで実習先に向かった。

 2週間に渡る販売実習において私が得た学びとは何か。それは、「人情の機微」を知らなければ商売、そして経営は成り立たないということであった。

 ある時、私は自分の率直な疑問を販売実習先の社長に投げかけた。
「商売に必要なこと何ですか」
すると、社長はこう答えた。
「絶えずお客様の言葉に耳を傾けることだ」

 この言葉にこそ、商売の真髄が詰まっているといえよう。

 まさに、顧客のニーズを拾い上げ、時期と瞬間というタイミングがマッチングしなければ消費者は商品を購入しない。いくら、機能的にも、質的にも立派な商品だとしても、時間軸として時期が速かったり、逆に遅かったりすれば見向きもされない。だからこそ、日頃より絶えず、一軒一軒、お客様の下へ足繁く通い、耳を傾け、「今、お客様は何を求めているのか」というニーズを的確に捉えない限り、商売は成立しない。そして、この姿勢があってこそ、そこに「信頼」関係が成り立ち、「ブランドの商品」ではなく、「誰々さんの店だから買おう」という視点で消費者は購入を決定するのだ。まさに、地域に溶け込み、「人情の機微」を把握し、住民との「信頼」があってこそ、商売、ひいては経営が成り立つのではなかろうか。

 しかしながら、これは商売、あるいは経営だけにはとどまらない。
販売実習先の専門店に一本の電話が鳴った。それは、80代の女性からの電話であった。

 「今、変な業者がうちに来てる。助けてほしい。」
そこで、社長に同行し私もそのお家に駆けつけた。その業者は、我々が来た瞬間飛んで逃げて帰って行った。こうした問題は、ここ数年増加しているという。そして、その度にお店に助けを求める電話が相次いでいるという。高齢者に対し、悪徳業者が家に入り込み多額な値段で商品を売り付ける詐欺的行為は全国的にも発生している問題だが、これらの問題に対しても、住民との「信頼」関係があるからこそ、助けを求める姿がある。まさに、商売、経営を乗りこえ、地域の「絆」を守り、「社会の公器」としての使命を果たすことの必要性を考えさせられた一幕であった。

3、「経営」とは何か ~「神は細部に宿る」~

 「私はまだ会社が小さい頃、従業員の人に『お得意先に行って、『君のところは何をつくっているのか』と尋ねられたら、『松下電器は人をつくっています。電気製品をつくっていますが、その前にまず人をつくっているのです』と答えなさい』ということをよく言ったものである。」
松下幸之助塾主が著書「実践経営哲学」の中で述べている一文である。

 「神は細部に宿る」という言葉がある。まさに、経営とはいくら技術のノウハウや新商品があろうとも、まず人をつくり、人を活かすことこそ何よりも必要なのである。そして、社員がモチベーション高く、仕事に誇りを持ち、夢や希望をお客様に提供し、そこに「信頼と絆」を築き上げていく。そうしない限り、一つ一つの細部に至るまで、きめ細やかな経営は成り立たないのではなかろうか。

 これは、商売の世界にとどまらず、政治の世界にもいえることである。国家を経営する上でも、無駄を省き、効率性を求める一方で、官僚機構をはじめとする国家の運営者が、やりがいを持って働ける環境を整備し、国民から「ありがとう」という声が上がる組織を創造する。そして、国民一人ひとりに希望を抱いて歩むことのできる、幸福を実感できる仕組みと環境を整備することで、国家全体に活気をもたらすことができるのだ。そのためにも、細部に渡る「人」へ希望を創造することこそ、「国家経営」の要諦といえよう。

 「経営=人」という経営理念を噛みしめ、「国家経営」、そして「自治体経営」について、私の確固たる経営理念を日々生成発展させていきたい。

以上

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丹下大輔の活動報告

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Daisuke Tange

丹下大輔

第30期

丹下 大輔

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愛媛県今治市議/無所属

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