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「塾主を知る関西研修」を終えて

Ⅰ はじめに

 5月15日から始まり、10日間もの長期に渡る第一回関西研修が無事終了した。

 27期生にとって、初めての外部研修であるばかりか、私自身、これまで30年の人生の中で、ほとんど足を運んだことの無い関西地方での研修だったことから、見るもの聞くこと、すべてが興味深く、また、勉強になるものばかりだった。

 このレポートでは、私がこの研修で、特に印象に残った2つのことについて、その内容と感想、そして、自分自身の今後の研修にどのように生かしていくのかを中心に論じたいと思う。

Ⅱ 塾主研究 ~塾主を近くで感じてみて~

 今回の関西研修の主な目的は、塾主のゆかりの地を訪問することにより、松下政経塾の建塾の理念と塾生の使命を認識することにあった。

 よって、塾主が生前関係した様々な機関で研修をさせていただいたが、中でも、私が一番感銘を受けたのが、京都市にあるPHP総合研究所での研修である。この研究所は、塾主の哲学や思想を研究しており、PHP(平和・幸福・繁栄)を実現したかった塾主の思いの込められた代表的機関の1つである。

 ここで、私達27期生は、主に塾主の人間観について勉強した。研修へ出発する前に、塾主の人間観について書かれた代表作『人間を考える』を読んでいたが、同研究所での講義を受け、自分の中で、より具体的に塾主の人間観を整理できたと思う。

 塾主は、人間には宇宙根源の力によって、万物を活用し、PHPを招来する能力が与えられており、それ故に人間は万物の王者として君臨すると考えている。よって、人間自身が自らの天命を全うすれば、不幸になるはずが無いという考え方である。

 この考え方を著書で初めて読んだとき、私は正直、違和感を持った。単純に捉えるならば、宇宙全体が人間中心に回っているということであり、何て自己中心的なものの考え方なのだろうと思ったのである。これではまるで、人間を神様にした新興宗教のようであると感じたのだ。

 しかし、同研究所において、塾主の生い立ち、仕事や研究を通じての具体的エピソード、松下政経塾建塾に当たっての思いを学び、次のような考え方を持つようになった。

 ご存知の方も多いと思うが、塾主は年少期より家族と離れて働き、青年期には家族をすべて亡くし、天涯孤独の人であった。故に、私が思うに、1人で生きていくためには、他人を愛するしか方法が無かったはずである。それがどんなにひどい人であったとしても、生きていくためには、その人を受け入れ、共生していかなければならなかった。さらには、戦後の悲惨な日本の状況からも、人間にとって孤独を防ぐことが幸せにつながることを塾主は感じていたのではないだろうか。よって、塾主は、世間に新しいPHPという哲学を提唱するに当たり、その中心に「人間」を据えたのだと思う。私から見ると、人間が万物に君臨するというものの見方は、理論構成上、無理があると思うが、あくまでも前提として、上記のような「人間」中心主義の考えがあるならば、納得できるわけである。

 私は、成熟した人間とは、孤独と共生できる人であると、前々から信じている。「孤独と共生できる」とは、「何でも1人で行う、何でも1人で出来る」ということではなく、「他人を受け入れる」ことから始まる。それは、自分自身のこれまでの人生経験から学んできたことであり、私が物事を判断するに当たっての大きな価値基準でもある。今回、同研究所で、上記のような塾主の人間観を学び、自分のこの考え方と近しいことに気がついた。私が松下政経塾に入塾することになった縁を感じずにはいられない。

 私達塾生が研修を通じて目指しているリーダーとは、その使命が大きければ大きいほど、孤独と隣り合わせのはずである。そのプレッシャーに耐えられなければ、国や世界を変えることなど出来るはずがない。塾主は、上記のような人間観を私達に授けることで、孤独と共生する術を与えてくれたのだと思う。よって、私達は、今後、様々な研修や研究、活動を行っていく中で、この人間観を実践していくことを忘れてはならない。今回、講義を通じて、私にこのことを気づかせてくれた、PHP総合研究所に対し、本当に感謝したい。

Ⅲ 農業体験と飯尾醸造見学 ~伝統を守るための努力~

 今年の関西研修で初めて導入されたのが、農業体験である。

 京都府宮津市にある棚田で、1日という短期間ではあったが、生まれて初めて田植えを行った。

 田植えそのものの作業は、初めてということもあり、なかなか思うように進まず、ご指導いただいた地元NPO代表の橋本さんに色々とお力添えをいただき、何とか終えることが出来た。

 私達が田植えを行ったのは、地元企業である飯尾醸造所有の田であり、同社の製品である酢の原料となるお米を栽培している。

 現在、この地区の棚田は、維持する人材が不足し、どんどん減っている。北海道出身の私から見ると、棚田はかなりの文化(北海道の田は、ひたすら平野にあるので。)であり、減っていくことは残念でならないが、地区住民の高齢化や過疎化等、根本的原因の問題が山積されており、解決するためにはまだまだ時間がかかりそうであった。

 そのような状況ではあるが、私は、飯尾醸造の飯尾社長のお話に、この問題を解決するためのヒントがあったように思う。それは、まさに「共生」の概念である。

 本来、酢を製造するに際し、古米や政府備蓄米等、安価な原料を使用すれば、コストの削減につながり、利益を得ることができる。しかし、飯尾醸造では、地元の棚田を活用し、そこで収穫されたお米で酢を製造している。そればかりか、無農薬栽培にこだわり、同社へお米を卸す農家に対し、技術協力や作業機械の提供まで行っている。

 何故そのようなことを行うのかというと、社長曰く、「買ってくれる人がいないと、農家もお米は作らない。買ってくれる人がいないと、やりがいも無い。会社は、自社製品を製造、販売し、利益を得ることだけが使命なのではなく、農家にやりがいを持ってもらい、棚田文化が崩壊しないよう、人材を育成していくことも忘れてはならない。」との回答があり、私は大変な感銘を受けた。同社のこの人材育成を基にした共生観念については、農家に対してだけではなく、工場で使用している道具1つについても、手工品を多く採用しており、日本の伝統技術が耐えないよう努めておられる。

 現在の日本に欠けている精神の1つが、この「共生」の概念であると私は思う。自己の利益だけを追求し効率ばかりを優先すると、互いに認め合い、高め合い、共に生きていくことを忘れてしまい、人間社会は崩壊してしまう。まさに現在の日本が抱える問題の根本がそこにはある。日本人1人1人が、この共生概念を取り戻し、実践することで、必ずや宮津のような問題も解決していくはずである。

 私の個別研究テーマの1つに、「住民自治を確立するための方法を探究する」というものがある。住民本位の自治を行っていくためには、この共生概念が欠かせない。地域的ではあるが、既に飯尾社長のように、共生について実践しておられる方と出会い、大変な刺激を受けた。来年度以降、個別活動に入っていくが、飯尾社長を見習い、まずは身近なところから、地道に活動し、北海道に共生概念を根付かせられるよう、努力していきたい。

Ⅳ 終わりに

 今回のレポートでは、特に心に残った2つの研修について論じたが、それ以外にも様々な研修を行った。たとえば、塾主墓参、松下電器産業本社見学、裏千家今日庵の見学、修養団伊勢道場での禊、伊勢神宮参拝等がある。

 どれをとっても、これまで経験したことのないものばかりであったので、これからの私の人生に大きな影響をもたらすことは間違いない。

 本来であれば、私のような青二才が、このような貴重な場所や機関で研修を受けることは不可能である。これもひとえに、日本をそして世界を平和・幸福にし、繁栄させたいと願い、広く活動され実績を残された、今は亡き松下幸之助塾主のお陰である。

 私達塾生は、そのことを忘れず、塾主の期待に応えられるよう、これから3年間の研修に、より一層精進し、仲間とともに切磋琢磨していかなければならない。

 そして、卒塾したあかつきには、研修で得たものを実践し、社会に貢献できるよう、さらなる精進をしていきたい。

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石井あゆ子の活動報告

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Ayuko Ishii

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第27期

石井 あゆ子

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衆議院議員政策担当秘書

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