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茶道が持つ魅力や奥深さは、塾主が塾に建てられた「松心庵」で諸先生方から教わったことからも感じていたことであるが、この度、宗家にて3日間の研修を受け、その精神性に触れることがでた。
それは、あらゆる要素によって実感したことにほかならないが、その理由をあえて二つ挙げると、長い歴史を感じる茶室や庭、京都全体が醸し出すなんともいえぬ空間と、変わらずそこで稽古し、修行してきたという規律あるいは習慣である。
今回、この身に余る経験をしたことに感謝し、お茶から教わった精神と、これからの日本の文化について、述べていきたいと思う。
利休百首のなかに、「稽古とは 一より習ひ 十を知り 十よりかへる もとのその一」とありますが、塾で初めに教わった「和敬清寂」の意味について、今回の三日間の研修を通じていろいろと学んでいくうちに、改めて、この「和敬静寂」について理解が深まったように思えます。「和」とは、和やかである柔和、仲良くするという親和、あるいは上手く混ざる調和といった意味があり、「敬」には、うやまい、慎むこと。「清」は、澄んでいる、清らか、「寂」は静かなさま、ひっそりしていること。と文字通りは訳せるが、これらは、当てはめるものによってさらに奥深い意味をもたらしてくれる。まず、お茶の作法で言うと、「和敬清寂」は、「和やかな雰囲気のなかに、心地よい慎みがあり、澄んだ空気や清らかな趣で、ひっそりとした寂びを感じられる作法」といえよう。次に、大きく「人生」について当てはめてみると、「人生の課題に対しても柔軟に対応し、人とは和やかに交際し、何事にも敬う気持ちを忘れず、自分にもそして、相手にも敬意をもって接する。さらに、自己を律して清らかな道をすすみ、ものごとをあるがままに受け入れて、より良く生きる実感を楽しむ」といえるでしょう。
千利休は、「お茶とは?」の問いに、「茶は服のよきように点て 炭は湯の沸くように置き 冬は暖かに夏は涼しく 花は野の花のように生け 刻限は早めに 降らずとも雨の用意 相客に心せよ」(利休七則)と答えられた。これらは、当然、お茶を少しならえば、分かることだが、この分かっていることを実行するのは、非常に難しい。それは「お茶」でも、「人生」でも、あるいは、「政治」や「経営」でも同じことが言えるであろう。「より良く」実行するには、あるいは生きるには、どれだけの「心構え」と「日々の習慣」が重要であるかが問われるのである。
最終日、15代家元 鵬雲斎大宗匠と、16代家元坐忘斎宗室による貴重なお話を伺う機会に恵まれましたが、鵬雲斎大宗匠によるお話では、秀吉による朝鮮出兵に、千利休が抵抗して処せられたというお話と、鵬雲斎大宗匠の戦争体験をもとに、いかに、「お茶」が、日本の「平和精神」に基づいたものかを教えていただいた。ここでも、「和敬清寂」が、さらに国際平和に関しても、俗な論理に囚われず、清らかな心持で、相手の宗教や文化を深く思い、知り、今、生きていることを十分に実感する平和を訴えていると感じ取れるのである。
茶道が、こうした現代にいたるまで、五百年近くの数々の歴史上の災難を踏み越えて伝統や文化を保存できているのも、それらが極めて優れたものだったからだけでなく、厳しい「家元制度」があったからではないかと思う。家元になるためには、大徳寺という禅寺に必ず修行に出家しなければならないし、そこで、得度をして始めて家を継ぐ資格が与えられる。「父業を良く継ぐ」ということへの「覚悟」と「忍耐」が必要であり、特に裏千家では、その規律の厳格さ、権威が身にしみて感じられた。また、こうした制度によって与えられる権威というものは、その文化や伝統を人々により強く印象つけるであろう。
こうした権威によって、その時々の人々の心のよりどころになり、多くの人々に「主人公」として「よく生きる」ことを広めていった茶道であるが、20世紀は、科学の進歩や資本主義による産業と戦争の世紀と呼ばれるように、文化や自然を軽視した時代だといえる。文化はまさに、人々に生きる喜びを感じさせ、より良く生きさせてくれるものである。今の日本の閉塞感を考えると、人々の精神にとって、「文化」を大切にする社会を築き上げなければならないと考える。21世紀の日本は、こうした権威ある文化を大切に保存し、その良さを認識していく社会や都市、国土にしていくとともに、日本文化に息づく「和」の思想、世界観を広めていくべきであろう。
今回の宗家研修では、裏千家の今日庵で、「茶道」を直接ご指導賜るという、身に余る機会を戴きました。こういった機会を与えてくださった松下幸之助塾主と鵬雲斎大宗匠、坐忘斎宗室をはじめとして、未熟な作法にも、大きな心で指導していただいた業躰先生方、ご尽力していただいた裏千家の皆様に心より感謝いたします。
「茶道」や日本文化について、まだまだ入口であるというのが実際ですが、日々の「心構え」を厳しくし、「和敬清寂」の精神を追求していくことによって、日本を自然と文化の根付く国にしていきたいと思う。
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Keizo Maekawa
第24期
まえかわ・けいぞう
前川建設株式会社
Mission
『地域主権型国家日本の実現』