活動報告

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「コタ・デルタマス都市開発事業から見る、インドネシアの経済情勢と日系企業の力」

 私の志は「すべての子どもたちが心身ともに安心して夢を持てる世界の実現」である。私はその志を起業家/経営者として、事業を通じて達成していくことをめざし、松下政経塾に入塾した。

 松下政経塾の創設者 松下幸之助氏(以下、塾主)は一代で世界的大企業と成ったパナソニックを創り上げ「経営の神様」として称されている。将来、塾主のような起業家/経営者となり、世界へ貢献したいと考えている私にとって、海外にて事業を展開している会社かつ、企業規模の大きい会社にて経営実践研修を行いたいと考えていた。また塾主は「21世紀はアジアの時代だ」[1]と予見しており、そのような背景から私はアジアから、特に経済成長が著しい東南アジアから日本の未来を見据えたいと考え、インドネシア共和国にて半年間の期間、経営実践研修に取り組むことを決めた。
 私は2025年5月13日からPT. Puradelta Lestari Tbk[2](Sinarmas landと双日の合弁企業)にて勤務している。私が主に携わっている活動としては、①コタ・デルタマス(Kota Deltamas)内に入居しているテナントの課題解決、②JJC(ジャカルタジャパンクラブ)東部エリア部会の立上げ及び運営の支援、③インドネシア国内にて活躍しているリーダーとの人脈構築、の3つである。
 一つ一つの活動について報告する前段として、コタ・デルタマスの概要について説明する。コタ・デルタマスはジャカルタから車で約1時間程度の場所にある都市であり、約3,200ha(山手線内側の約半分の面積)の土地を私の勤める会社が所有・管理している。2,200haをGIIC(Greenland International Industrial Center)工業団地エリア、1,000haを住宅・商業エリアとして現在進行形で都市開発を進めている最中だ。GIIC工業団地には現在181社が入居しており、その内半分を日系企業が占めている。

PT. Puradelta Lestari Tbkマーケティングオフィス内入口,
2025年5月14日, 筆者撮影


活動報告の1つ目である「コタ・デルタマス内に入居しているテナントの課題解決」では、主に日系企業様から挙がってくる困りごとや改善要望を基に、どう解決すべきかについて各部署と連携しながら日々対応している。私は現状2つのプロジェクトにてリーダーを担当しており、特に注力しているプロジェクトが多くのテナントから声が挙がっている、コタ・デルタマス全体の通信環境改善である。通信環境に関してはモバイル通信と光回線通信の両方について改善検討を進めており、また改善に関しても速度の安定化や通信可能エリアの拡大だけでなく費用についても見直しを行っている。GIIC工業団地エリアの開発がある程度落ち着き、住宅・商業エリアの開発にこれからより移行していく段階であるコタ・デルタマスにとって、通信環境は会社として注力すべきインフラであり、またテナント企業が出店を検討するにあたり、大きな判断材料かつ、他商業エリアとの差別化となる重要な要素でもあるのだ。私はNTT西日本社員として以前勤務していたことがあり、その時得た知識や経験が今にも活きており、プロジェクトリーダーとして社内のあらゆる部署と密に連携しつつ、ISP事業者・光回線事業者と交渉を推し進めている。

PT. Puradelta Lestari Tbkマーケティングオフィスにて光回線事業者との打合せの様子,
2025年7月8日,Daniel Lanadjaja氏撮影

PT. Puradelta Lestari Tbkマーケティングオフィスにて複数のプロバイダ事業者と打合せ,左から2人目が筆者,
2025年7月9日, 筆者カメラにて撮影

活動報告の2つ目である、「JJC東部エリア部会の立上げ及び運営の支援」では、東部エリアにある5つの日系工業団地(MM2100【丸紅】、EJIP【住友商事】、GIIC【双日】、KIIC【伊藤忠商事】、Indotaisei【大成建設】)を中心として、それら工業団地に集まっている日系企業や、周辺に住む日本人に向けた支援・サービス拡充を行っている。JJC(ジャカルタジャパンクラブ)は現在700社程度の会員企業に支えられている一方、その名の通り、ジャカルタにて事業を行う日系企業や日本人を対象としてサービスを提供してきた。しかし、ジャカルタ以外の地域にもインドネシア経済へ貢献するため事業を頑張っている多くの日系企業があり、また勤めているたくさんの日本人が居ることから、2025年度JJCとして東部エリア部会を立上げ、サービス拡充を行う方針となった。東部エリア部会長にはPT. Puradelta Lestari Tbkの副社長が就任し、各工業団地の管理会社の社長達と積極的に議論を交わしながら、東部エリアの活性化に向けた様々な取り組みを検討・実施している。その中でも、各工業団地に入居している日系企業が抱えている課題を吸い上げ、最終的にインドネシア政府に対して上申していく取り組みについて、現在私が中心となって進めているところだ。アンケート項目一つ一つの文面から、どういったツールを使ってヒアリングを行うか、いつ頃展開しどう分析していくかなど試行錯誤しつつも、社長達から意見を貰いながら支えられながら、実施に向けて改良を重ねている。インドネシアだからこその独特な課題や価値観があることに驚きつつも、”郷に入っては郷に従え”という言葉にあるように、インドネシアのルールや常識に沿った形で、日系企業のためにしっかりインドネシア政府へ上申していきたいと考えている。

日本国大使館・JJC・MM2100工業団地協賛の政治・経済セミナーを開催,
2025年7月17日, 筆者撮影

MM2100にて開催された第1回インドネシア政治・経済セミナーの様子,
2025年7月17日, 筆者撮影

 活動報告の3つ目である、「インドネシア国内にて活躍しているリーダーとの人脈構築」では、PT. Puradelta Lestari Tbkの業務だけではなく、他企業・団体の経営者層と会い、経営哲学や日本とインドネシアの経済をどう捉えているかなどについてヒアリングを行いつつ、人脈と知識の幅を広げている。業種・業態に関しては、メーカー・商社・銀行などの企業の他、国際協力・支援団体や貿易振興機構などをも訪問しており、もちろん日系だけではなく現地企業・団体の経営者にも積極的にアプローチしている。その理由として、私がインドネシアにて経営実践研修を行う中で達成したいミッションの一つでもある、”未来に向けた、日本とインドネシアのより一層の繋がり強化”をめざしているためだ。やはり、より良い未来、より良い世界を創っていくためには、トップ層と繋がり、連携していく必要があると感じている。また、お互いの価値観や志を共有し合うことできれば、半年過ぎたのち、私がインドネシアの地を離れたとしても心は繋がっていると考えており、何かあった時に頼れる相手が居ることほど大きなことはない。将来起業家/経営者をめざしている私にとって、今この瞬間にいかにたくさんの方々と繋がることができるか、いかに相手の持つ知識や考え方から学びを得て深めることができるかが、大変重要である。もちろん、ただ得るだけではなく、日々いただいている機会と繋がりに感謝を抱きながら、今後どのような事業で、方法で、還元していくべきかについてしっかり考えていくつもりだ。

ジャカルタの在インドネシア日本国大使館を訪問。左から榎本豊PT.Gobel Dharma Nusantara取締役、上原敦PT. Puradelta Lestari Tbk副社長、小林一則Sinar Mas上級顧問、筆者、上田肇経済公使、花輪洋行参事官、浅井俊博一等書記官、林田雄一朗三等書記官、西沢樹二等書記官,
2025年6月13日, 林田雄一朗三等書記官カメラにて撮影

ジャカルタの双日インドネシア会社を訪問。左から板垣誠治取締役社長、筆者、上原敦PT. Puradelta Lestari Tbk副社長,
2025年6月13日, 筆者カメラにて撮影

 以上3つが、現在、主に行っている活動となる。
 赴任前に想定していたほどインドネシア経済は成長しておらず、むしろ停滞化していると表現すべきという、想定と現実とのギャップに衝撃を受けつつも、今がチャンスだと考え、インドネシア経済を日本が下支えし、ともに発展していく未来を描いていくべきである、と考えている。これからも日本がインドネシアから選ばれる国で在り続けるため、そして塾主が求めた経営の要諦を掴むため、私は今できることを一つ一つ全力で取り組み、未来に向けた架け橋の基礎を創っていく所存だ。またその中で、今ある環境に日々感謝しながら、そして日常の中で抱いた感情や感動を忘れず、愛を持って真摯に人々と向き合っていこうと考えている。

[1] 松下幸之助. リーダーを志す君へ-松下政経塾塾長講話. PHP研究所, 1995年, 244p.

[2] Kota Deltamas, https://deltamas.id/en/company-overview/ , (参照 2025-07-24)

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