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第1回 松下幸之助杯スピーチコンテスト決選大会の講評・審査結果について

2020/12/3

 11月28日、「第1回松下幸之助杯スピーチコンテスト決選大会」(主催:公益財団法人松下幸之助記念志財団/後援:文部科学省・読売新聞社・株式会社PHP研究所/協賛:パナソニック株式会社)が開催されました。
 本コンテストは、松下幸之助塾主の志を次世代につなげ、SDGsに定められた17の開発目標に取り組み、2030年の世界に向けたビジョンを描き、それを実践する青少年を応援することを目的として、初めて企画されました。
 国内外から318名のご応募をいただき、厳正な一次審査を経て、13名が決選大会に出場されました。新型コロナウイルス感染症の状況を鑑み、当日はオンライン(ライブ配信)で実施しました。
 審査員の先生方、後援・協賛をいただきました各団体の皆様、告知・応募にご協力いただきました皆様に、心より御礼を申し上げます。

1.審査員による講評(五十音順)

小田尚氏(読売新聞東京本社 調査研究本部 客員研究員)

 本日は、非常に勉強になりましたし、日本の未来はそんなに暗くないのではないかと思わせるコンテストでした。お伝えしたいことは三点あります。
 第一に、皆さんの素晴らしさは、ある動機付けを受けて実際に行動に移す力にあります。ただ話すだけではなく、その裏にある行動をスピーチしているということです。
 第二に、これから先はスピーチしたことを継続する力が問われています。私はそれを「心のスタミナ」と呼んでいます。疑問であることは疑問のまま抱えつつも、どこかでそれを解決しようとする力のことですが、皆さんにもこれから大切になるのではないでしょうか。
 第三に、何かを実現しようとすると、人と人との協力が必ず必要になりますが、協力する相手というのは自分で選んでもいるし、相手から自分が選ばれているということでもあります。今日のスピーチを聞いて、皆さんは相手から選ばれている人だという印象を受けましたし、選ばれるためには人柄や普段からの人づき合いがあってこそだと思います。その意味でも、皆さんは既に実践しているわけで、将来が楽しみです。ありがとうございました。

出口治明氏(立命館アジア太平洋大学(APU)学長)

 まず、僕自身がとても勉強になりましたし、インスパイアされました。学生や社会人のスピーチコンテストの審査員も何度もしてきましたが、本日のコンテストは中でも格段に素晴らしいと思いました。年齢・性別に関係なく、皆さんの想いがストレートに胸をうち、感動しました。
 次に、人間は言葉を使って考えるということを改めて痛感しました。言語は「コミュニケーションのツール」ではなく「思うツール」だと認識しています。短いスピーチでは言い尽くせなくても、質問をした時の受け答えを聞くと、皆さんが本当によく考えていることがわかります。これからも自分の頭で考え自分の言葉で自分の考えを磨いて下さい。
 最後に、一人でも世界は変えられますが、そんなに簡単には変えられないこともまた事実です。歴史を紐解くと、挑戦した人の99%は失敗していますし、何も成果を上げられないまま亡くなっています。しかし、世界が良くなってきたのは、その事実を認識しながらも、行動しなければ何も変わらないと思った人がいたからです。だから、失敗しても多数派になるだけであり何も失うことはない、という気持ちでチャレンジして下さい。スピーチを聞いて、日本の未来は明るいと100%安心しました。ありがとうございました。

橋爪大三郎氏(東京工業大学 名誉教授)

 いやあ、すばらしい!決勝に進んだ皆さんの小論文を、事前に読んで楽しみにしていましたが、予想を上回るスピーチばかりでした。惜しくも決勝進出を逃した皆さん、応募したすべての皆さんのスピーチも、ぜひ聞いてみたかったと思いました。
 皆さんのスピーチは、これまでやこれからの活動について教えてくれました。仲間を増やすにも、世の中に訴えるにも、言葉が大事です。まず言葉で訴え、それから行動する。順序はそうです。でも実は、言葉で訴えることはもう立派な行動です。言葉が行動であることを、皆さんはコンテストを通じて伝えてくれたのです。
 このイベントを企画した人びと、サポートした人びと、そしてコンテストに勇気をもってチャレンジしてくれたすべての皆さんに、感謝しかありません。ありがとう!

佐野尚見(松下幸之助記念志財団 副理事長・松下政経塾 塾長)

 もし松下幸之助塾主がご存命であれば、皆さんのスピーチを聞いて非常に喜ばれたと思います。塾主が松下政経塾を設立した時は23歳以上の若者を考えていましたが、今日は小学生から社会人までとても素晴らしいスピーチをしていただきました。
 皆さんは主体性をもって風土を変えていこうとしています。しかし、風土というものは普段なかなか気づかないうちに、徐々に変化します。良く変化する場合はいいのですが、悪く変化する時は気がついた時には手遅れになることも多いのです。皆さんからはそれぞれの風土を変えていこうという気迫が伝わってきました。
 13人の出場者だけではなく、318名の応募者がまとまって、ぜひ世界や日本を変えていく力になっていただければ嬉しいですし、松下政経塾もそのお手伝いをしたいと思います。ありがとうございました。

2.審査結果

松下幸之助杯(最優秀賞)(賞状及び副賞30万円)1名

稲垣葉子さん(サセックス大学)
<スピーチタイトル>
「すべての女性が可能性を発揮できる社会を目指して ―マダガスカルでのソーシャルビジネスによる女性のエンパワーメントとマラリア削減―」
<SDGsの17の開発目標>
「3.すべての人に健康と福祉を」「5.ジェンダー平等を実現しよう」

(選評)
2030年に向けて明確なビジョンをもち、地域を定め、具体的な計画を立て取り組んでいる点を評価しました。マダガスカルにおいて、ランドリー(洗濯)サービスを提供し、家事労働の効率化を通して、女性の活躍を図るという趣旨のスピーチです。その姿は、まさに「既成にとらわれず、たえず創造し開拓していく」リーダーであり、多くの人びとを勇気づけ、未来を開く最優秀賞に相応しいと考えます。実現に向けて着実な前進を期待しています。

パナソニック杯 (賞状及び副賞10万円)1名

黒川琴子さん(名古屋市立日比津小学校)
<スピーチタイトル>
「みんなからもらったパートナーシップで絵本を世界へ」
<SDGsの17の開発目標>
「17.パートナーシップで目標を達成しよう」

(選評)
コロナ禍で図書館が閉鎖されるという困難の中で、子どもたちを勇気づけようと自ら絵本を創作し、インターネット配信して協力を求めました。その行動が反響を呼び、絵本が八か国語に翻訳されることになりました。豊富なアイデアをもち、多くの人々の協力を得て、次々と実行に移していく点を評価しました。これは、松下幸之助が述べていた「素直な心で衆知を集める」ということを体現しています。将来の夢に向かい、可能性の翼を広げ、ますますの活躍を願っています。

優秀賞(賞状及び副賞5万円)2名

安部奈穂さん(The American School Foundation)
<スピーチタイトル>
「2030年、貧困をなくすために誰もが学べる世界を作る」
<SDGsの17の開発目標>
「4.質の高い教育をみんなに」「17.パートナーシップで目標を達成しよう」

(選評)
国際的なパートナーシップを自ら構築し、誰もが質の高い教育を受けられることに挑戦しています。コロナ禍に負けず、オンラインを駆使し高校生による国際的なディベート大会を企画し実施しました。国境を越えてスタッフを編成し、五十以上の国々から参加者を集めたという実績だけでなく、活動の限界も冷静に捉えた上でそれを突破する方法を言葉にできる力も評価しました。これからも国際社会を舞台に「人類の繁栄幸福と世界の平和」に貢献して下さい。

井上紗彩さん(静岡県立静岡高等学校)
<スピーチタイトル>
「答えのない時代を生きる」
<SDGsの17の開発目標>
「4.質の高い教育をみんなに」

(選評)
「一人でも世界を変えられる」との思いで高校生の団体を組織し、持続可能な社会の実現に向けて、地域における若者の対話と協働の機会を増やす活動をしています。当事者意識をもって、他を頼り人を当てにせず「自主自立」で行動している点を評価しました。同時に、スピーチのスキルだけでなく、困難や弱点を乗り越えた経験が言葉に深みと力を与えています。その熱意でどのような理想社会を目指し実践していくのか、今後の活動に期待します。

※その他の出場者の方は「奨励賞」(賞状及び副賞『道をひらく』)となります。
阪口大樹さん (北海道教育大学附属函館中学校)
河上明夢さん (ぐんま国際アカデミー高等部)
原田有理子さん(東京女子医科大学 国際環境・熱帯医学講座)
村上あかりさん(作新学院高等学校)
加藤愛子さん (豊島岡女子学園高等学校)
菊池あみさん (ヘルプ大学)
相澤叶梨さん (ケンブリッジ大学)
滝本智丹さん (青山学院高等部)
木村遼太朗さん(開智望中等教育学校)

※恐れ入りますが審査に関するお問い合わせはご遠慮下さい。

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