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第4回松下幸之助杯スピーチコンテスト決選大会の「講評と審査結果」について


当日の模様


トークセッション

はじめに

 2023年11月18日、「第4回松下幸之助杯スピーチコンテスト決選大会」が松下政経塾講堂にて開催されました。本コンテストは、松下幸之助の志を次世代につなげるとともに、将来、日本や世界のリーダーとして、未来を切り拓いていく長期的なビジョンを描き、それを実践しようとする青少年を応援することを目的として企画されています。
 国内外から256名の方のご応募をいただき、厳正な一次審査(スピーチ原稿審査)を経て選出された9名(社会人の部3名、学生の部6名)の方が決選大会に出場し、素晴らしいスピーチを披露していただきました。決選大会における審査員による講評と、審査結果及び選評を掲載します。

 2023年11月18日、「第4回松下幸之助杯スピーチコンテスト決選大会」が松下政経塾講堂にて開催されました。本コンテストは、松下幸之助の志を次世代につなげるとともに、将来、日本や世界のリーダーとして、未来を切り拓いていく長期的なビジョンを描き、それを実践しようとする青少年を応援することを目的として企画されています。
 国内外から256名の方のご応募をいただき、厳正な一次審査(スピーチ原稿審査)を経て選出された9名(社会人の部3名、学生の部6名)の方が決選大会に出場し、素晴らしいスピーチを披露していただきました。決選大会における審査員による講評と、審査結果及び選評を掲載します。

主催・後援・協賛

主催:公益財団法人 松下幸之助記念志財団
後援:文部科学省、読売新聞社、株式会社PHP研究所、神奈川県、茅ヶ崎市、神奈川県教育委員会 
協賛:パナソニック ホールディングス株式会社

スピーチテーマ

「2050年の社会のビジョンと実践」~SDGsのその先を描こう~
将来のリーダーとして目指す「2050年の社会に向けたビジョン」を描くとともに、「SDGsの17の開発目標」もしくは「日本や世界が直面する社会課題」について少なくとも1つを提起して、課題解決に向けた具体的な実践活動(これまで取り組んできたことやこれから取り組むこと)を5分以内でスピーチする。

審査員による講評(五十音順)

佐伯聡士様(読売新聞東京本社 取締役・調査研究本部長)※審査員長
 スピーチコンテストに参加された皆さん、本当にお疲れ様でした。一昨年から3年連続で松下幸之助杯の審査に携わることができ大変光栄なことと存じております。これからの未来を引っ張っていく若い皆さんの熱意溢れるお話に触れ、大変感動しました。いつもそうなのですが、私が元気をもらっています。今回は、例えば魚や医療、ゴミの問題など、身近なところにある課題に関心を持って広げていく姿勢、そして既に実践し行動に移しているという内容が多かったと思います。さすが256名の応募の中から選び抜かれたスピーチでしたし、毎年のことながらこの審査は胃が痛くなるほど難しさを感じています。
 ところで、世界に目を向けますと、ウクライナの人道危機だけでなく、世界規模でのエネルギー危機、食料危機が深刻化しています。これに加えて、今度は、イスラエルとイスラム主義組織ハマスの戦闘が激化し、中東情勢を緊迫化させていますし、自然災害の被害も大きくなっているなど、複合的な危機の状況です。こうした危機を乗り切り、進むべき道筋を描くために、毎年この場でお伝えしていますが、国の指導者はもちろん、企業・自治体のトップの「言葉」がますます重要性を増しています。
 今年5月に広島で開かれた先進7か国(G7)サミットでは、岸田首相が議長を務めました。そこでは「法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序」を守っていくという、つまりロシアの侵略は決して許してはならないという、日本外交のメッセージが明確に世界に向けて発信できたと思っています。これは、国のリーダーとしての言葉の重みが伝わった評価すべき事例でしょう。その一方で、マイナンバーカードを巡る混乱など国内の問題では、国民の不安払拭に向けて、リーダーが言葉を尽くしていない事例が目立ちます。紛争が起きている中で、防衛費増額の財源などについて説得力のある議論が交わされていないことも心配です。 
 話は変わりますが、読売新聞社では、ノーベル賞受賞者を囲むフォーラムを毎年開催しています。50年前にノーベル物理学賞を受賞した江崎玲於奈さんは今98歳ですが、今年のフォーラムに寄せたビデオメッセージで、会場に集まった中学生・高校生に向けて、四つの問いかけを行いました。その一つ目が「我が人生、何をなすべきか」、二つ目は「自分はどんな才能を持ち、何を得意とするか」、そして三つ目が「何が自分の天職か」、最後に四つ目が「何を自分の使命とするか」です。まず、このことを考えてほしいと、おっしゃいました。今日ここでスピーチを披露された方々は皆さん、すでにご自分の答えをお持ちだと思いますが、四つの問いかけは、中高生はもちろん、大学生、社会人を含めた若い人たちにとって非常に大切なものだと思います。江崎さんは、一生とはあなた自身が主役を演じるドラマであり、そのシナリオを創作することが大変重要になる、とも話されました。自分の一生のシナリオは、まさか生成AIに頼って作り出すべきものではないでしょう。皆さんは、これからも、AIに頼らずに、ご自身で、一生のシナリオを考えに考え抜いて、ますます、ご自分の言葉、スピーチを磨いていっていただければと思います。本日は誠にお疲れ様でした。ありがとうございました。

辰野まどか様(一般社団法人グローバル教育推進プロジェクト(GiFT)代表理事/ファウンダー)
 あらためまして、本日スピーチをしていただきました皆さん、本当にお疲れ様でした。そして、パワフルで未来がワクワクするようなスピーチをありがとうございました。審査員席で聞きながら、胸が震えて少し泣きそうになりましたし、皆さんの思いが伝わってきました。
 実は1週間ほど前に教員研修をしたのですが、多文化共生をテーマに活動する2名のゲストの方に「人生のアップダウン」を話していただきました。たまたまお二人とも「10~20代で出場したスピーチコンテストで人生が変わった」とおっしゃっていました。どういうことなのかと聞いてみると、スピーチの時の5分や10分に本気で向き合い、自分が伝えたいことや生きていきたい未来を言葉にしたそうです。それが今の仕事に全て繋がったし、その場で得た仲間や自信、未来が変わっていったということですね。それを聞いたので、「ちょうど来週(今回の)スピーチコンテストの審査員だ」ととてもドキドキしました。実際に皆さんのスピーチを聞きながら、未来が大きく変わっていくことを感じました。
 さて、今回のテーマでもあるSDGsですが、今年は中間年としてSDGsの達成できたかご存知でしょうか。答えは15%です。Sustainable Development Report によると、2030年の達成に向けて、全体の20%しか順調に進んでないと言われています。私の団体(GiFT)がSDGsを広め始めた2016年~2017年にイベントを開催した時に、大人の方々に2030年までに、SDGsが達成できるかについて聞いてみたところ、大半の人が「達成はできないのではないか」と答えました。それを見て、そのイベントに参加していた高校生が挙手し、「SDGsは大人が作ったはずなのに、達成できると思わないゴールを作ったのですか?僕たちは2030年以降も生きるんです!」と言ったんですね。その時に私はドキッとしたのですが、この松下幸之助杯では2050年のテーマを扱っています。2030年のSDGsの達成度を考えると胸が痛くなりますが、スピーチを通じて2050年というさらに先を見せていただいたことで、私自身も皆さんと一緒にSDGsを超えた未来を創っていきたいと感じました。是非とも、お互いに交流し、スピーチをした皆さん同士の繋がりも大切にしていただきたいと思います。ありがとうございました。

苫野一徳様(熊本大学大学院教育学研究科准教授・哲学者・教育学者)
 本日スピーチをして下さった皆さん、本当にありがとうございました。とにかく私自身がワクワクしましたし、聞いている会場の皆さんもワクワクしましたよね。良い時間を過ごさせていただきました。言うまでもないことですが、皆さんのスピーチの内容や取り組まれている実践は甲乙付けていいものではないし、付けられるものでもありません。審査員の私たちもそれを前提で、しかしながら賞を選ばなければならないことに、なんて心苦しいのだろうと思いながら、今回はこのような結果となりました。あらためて受賞された皆さん、奨励賞の皆さん、誠におめでとうございます。
 やはり、内側から発せられる言葉というのが多くの人の心に残ったと感じています。今、高校を含めた学校現場では「探究」が大事だと言われているものの、実際どうすればいいのかという声をよく聞きますが、「この大会に来て見て下さい」と言いたいと思います。どうすればいいのかではなく、自分の内側から課題に向き合っている皆さんの姿を見て、ただただ希望をいただきました。今日はとてもいい夢が見られそうです。ありがとうございました。

決選大会の審査結果

■ 松下幸之助杯(最優秀賞)

(社会人の部:賞状及び副賞20万円)
小林万梨乃さん (会社員)

「重度精神障害者の私が今の精神障害者の当たり前を変える」
<選評>
「2050年に精神障害者が生きやすい社会を創る」という明確なビジョンを掲げ、当事者として懸命な努力を続けています。内側から言葉がしぼり出されるようなスピーチは、多くの人の心に響き、同じ状況に置かれた方々への優しさと励ましに溢れています。具体的な目標を持って「素志貫徹」しようとする姿勢は最優秀賞に相応しいと高く評価しました。

(学生の部:賞状及び副賞10万円)
山本一慧さん (作新学院高等学校)

「選ぶ漁業から、活用する漁業へ~未利用魚から考える」
<選評>
「『使う魚を選ぶ漁業』から『捕れた魚を全て活用する漁業』へ」というビジョンを明示して、学校内に留まらず地域活性化においてもアクティブに活動しています。未利用魚に着目したイノベーションの原点が「魚への愛」にあることも共感を得ました。周りを巻き込むリーダーシップと持ち前の愛嬌を武器に、「先駆開拓」の精神で突き進むことを願います。

■ パナソニック杯

(社会人の部:賞状及び副賞10万円)
鈴木駿介さん (会社員)

「歴史を学ぶ意義」
<選評>
会社員として働く傍ら、「偉人を学ぶ講座の企画運営を通じて持続可能な社会づくり」に取り組んでいます。スピーチとしての完成度は高く、人前で話をする場数を踏んできた雰囲気を感じさせます。今後は、講座を受講した参加者一人ひとりが「変革者」となるための場づくりやフォローアップを通じて、2050年に向けてさらに一歩進んだ活動を期待します。

(学生の部:賞状及び副賞5万円)
吉田莉恩さん (人間総合科学大学)

「普通の概念がない誰もが生きやすい社会を目指して」
<選評>
「多様性や社会課題が自然と理解され、誰もが生きやすい社会」を目指して、高校生の頃から「小児がん」に焦点を当てて地道な活動をしています。コロナ禍における医療崩壊の危機に際しても、困難に挫けず自らに出来る取り組みを見つけ、真摯に向き合う姿勢を評価しました。周りへの「感謝協力」の心を忘れず、ひたむきかつ持続的に挑戦することを願います。

■ 優秀賞

(全体を通して選出:賞状及び副賞3万円)
加藤咲穂さん (静岡英和女学院高等学校)

スピーチテーマ:「Shining Stage For All」
<選評>
「演劇教育を通じて他者を思いやる寛容の精神をもつ社会」を目指して、地元で世代を超えた市民参加型の演劇の場づくりに取り組んでいます。興味あるテーマを自ら発見し海外に単身留学する等のバイタリティに溢れた活動や、説得力のあるスピーチの完成度を評価しました。「自主自立」の思いを胸に、新たな分野を切り拓かんとする姿勢を期待します。

■ 奨励賞

(賞状及び副賞:松下幸之助著書)
・和氣千郷さん (会社員)
・村上智絢さん (洛南高等学校)
・清水乃里樺さん (東京学芸大学)
・章子昱さん (慶應義塾大学)

※出場順に掲載しています。
※それぞれの選評に一部含まれている「素志貫徹」「自主自立」「万事研修」「先駆開拓」「感謝協力」は松下政経塾の「五誓」です。

おわりに

 本コンテスト開催にあたり、審査員を務めていただきました先生方、ご後援ならびにご協賛をいただきました各団体の皆様、そして告知・応募・観覧にご協力いただきました皆様に、心より御礼を申し上げます。決選大会のアーカイブ動画は松下政経塾公式YouTubeチャンネルをご覧下さい
 本コンテストは第5回を実施予定で、詳細は2024年4月頃に松下政経塾ウェブサイトにて掲載します。

お問い合わせ先

松下幸之助杯スピーチコンテスト事務局(松下政経塾 政経研究所内)
E-mail seikei@mskj.or.jp
※恐れ入りますがメールでお問い合わせ下さい。
※審査結果に関してのご質問にはお答え致しかねますのでご了承下さい。


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