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2001年8月

コーチングが日本を変える
本間正人/卒塾生

 企業経営における成果主義・目標管理が広まる一方で、上司・部下の人間的関係を見直す気運が高まっている。人間の可能性を信じるコーチングの発想は、会社経営や学校教育を変える可能性をもっている。

 
 21世紀に入った途端に、コーチングが大ブレークと言える様相を呈している。大きな書店のビジネス書の棚にはコーチングのコーナーが設けられ、テレビ・ラジオ・新聞・雑誌でも取り上げられる機会が飛躍的に増えた。
 Coach という言葉は、元々は「馬車」という意味で、そこから「大切な人を、その人が現在いる所からその人が望む場所まで送り届ける」という意味が生じ、転じて地理的な移動だけでなく、学習やスポーツなどの指導・研修をするという意味が生まれた。この最後のコーチングが、1990年代に入り、アメリカでスポーツ界だけでなく、ビジネス分野でも注目され始めた。いまでは、企業の管理職にとって「ビジネス・コーチング」のスキル習得は、部下に効果的な指導・育成を行なうための必須科目である。
 しかし、「コーチング」の技術は、企業の管理職にある人々にだけ必要とされているわけではない。普通の人、個人の中にもその技術を求める人が現われている。パーソナル・コーチングである。個人的な問題の解決や目標達成を求めるクライアントに、プロのコーチが電話でコーチングするのである。
 こうしたアメリカでの隆盛をみて、コーチングは90年代の後半に日本へも及んだ。そして、その重要性に気づいた企業経営者や管理職、専門職などが導入し、それが冒頭で述べた状況へと発展した。
 このようにコーチングの重要性は、日本でもビジネスの世界で広く認められてきている。しかし、この技術が有効なのはビジネスだけではない。コーチングは教育の現場にも有効である。これまで日本の学校教育は、教員養成の中心を「教科教育法」の習得に置き、「いかにモノを教えるか」でやってきた。その一方で、「いかに人を育てるか」という視点が欠けていた。この視点の欠如こそが、まさに日本の教育が抱える問題の根源である。モノを教える行為は、教室の「全員に同じ内容を同じやり方で伝える画一的な指導」、すなわち「ティーチング」となる。しかし、今、必要なのは、「相手に合わせて指導内容も指導方法も変える個別指導」、「コーチング」である。そのように考えると、少子化の進展は国全体として見ればマイナス面が大きいが、教育の現場では、教師一人当たりの生徒数が少なくなり、個別指導をとり入れる絶好の機会である。
 私は著書『入門ビジネス・コーチング』(PHP研究所 2001年)の中で、「コーチング5原則」というものを提案している。それは、「人間尊重の原則」、「相互信頼の原則」、「個別開花の原則」「目標協力の原則」、「評価感謝の原則」の5つである。これらは全て企業の中だけでなく、学校教育の場にもあてはまる。教育改革の議論も、科目とコマ数と教科書という末節を論じるのではなく、より本質的な問題について深く検討していくべき時にきている。
 

2001年8月 執筆
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