論考

Thesis

ニューヨーク市・コミュニティー委員会

先月は「教育の地方分権と住民自治-コミュニティーボードの可能性-」と題して、教育改革について述べた。今月はその続編の予定だったが、昨日コミュニティーボードの取材を終え、ニューヨーク市から帰国したばかりなので先にコミュニティーボードについてご報告したい。

■コミュニティーボード(Community Board)とは何だろうか。

 西尾勝東大名誉教授はその著書でコミュニティー委員会と訳しており、こちらの方がしっくりくるのでこれからこう呼んで進めていく。

 ニューヨーク市内に59ヶ所コミュニティー委員会があり、それぞれがその地域住民を代表している。委員会は50人以下の無給のボランティア委員から構成されており、土地利用や土地用途指定、地域都市計画などについて幅広く要請書を市に提出することができる。

 コミュニティー委員会は小さな市役所。委員によって地区マネージャーと呼ばれる有給の事務責任者が選ばれる。そして彼が補佐のスタッフを雇い、委員会が円滑に活動できるように支援したり、住民の不満の受け皿となり、住民と市や区との連絡役となる。

 そもそもコミュニティー委員会は二つの実験から発展して設立された。1951年に当時ブルックリン区長で、後にニューヨーク市長となるロバート・ワグナーが12の地区計画委員会を発足させた。15人から20人の定員で区長に都市計画や予算問題の助言をしていた。

 1966年から1973年まで市長だったジョン・リンゼイが小さな市役所を設立した。彼は地区マネージャーに行政サービスの提供を逐次監視するように命じ、1975年にはニューヨーク市憲章の改正によりワグナーとリンゼイの実験を一体化させ公式化されている。

 おおよそ2万人で一つの地区単位。それぞれの地域によって扱う内容は違うが、マンハッタン区第8コミュニティー委員会を例にする。この地域はアッパー・イースト・サイドと呼ばれている。高級住宅街とされている所で中心を南北に走るマジソン街は、有名な5番街に劣らず高級ブランド店が立ち並び、そこを血統書付きの犬を先導に貴婦人達が闊歩する。

 住民から上がった次の要請書を市や区に提出する。

   ・土地用途指定

   ・ビル建て替えや特例許可

   ・酒販店免許

   ・街路上カフェ

   ・道路問題

   ・ランドマークとなるビルや歴史的地域のビルの変更

 加えて、交通や運輸問題、公園、高齢者、青少年、経済発展や公共安全について監視をしている。

 そしてこれらの活動をするために、コミュニティー委員会の中に個別の委員会が設けられる。引き続いて第8委員会を例に挙げれば

   ・予算委員会

   ・コミュニケーション委員会

   ・経済開発委員会

   ・環境委員会

   ・健康・高齢者・社会サービス委員会

   ・ランドマーク委員会

   ・公園委員会

   ・公共安全委員会

   ・ルーズベルト島委員会

   ・道路問題委員会

   ・ホームレス委員会

   ・運輸委員会

   ・青少年と教育委員会

   ・用途指定及び開発委員会

   ・59丁目委員会

 総会は月に二回開催され、個別の委員会からの上程案を審議する。そして多数決によって委員会としての意志が決定され、それが市や区に要請書として提出される。

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豊島成彦の論考

Thesis

Naruhiko Toyoshima

豊島成彦

第16期

豊島 成彦

とよしま・なるひこ

公認会計士・税理士

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