論考

Thesis

細胞都市序説2「まちは細胞都市をめざす(2)」

いつのまにか秋が過ぎ、初冬を迎えています。だのに、なぜか8月の月例レポートを書いている私。どーゆうことでしょうか(笑)。申し訳ありません。
 このレポートは、前回のひきで、
「ということで、次回は「環境」「共生」「地球と人間の関係」「政策とメタ政策」などについて考えたいと思います。」と書いた続きです。

 ものごとを見るとき、考えるとき、私はいつも二つのことに気をつけるよう心がけています。
 まっすぐに見たり、斜めに見たり、表から見たり、裏から見たり。できるだけひねくれて、多くの角度から見ること。
「物事の本質を見極めようとするときには、そのものを真っ正面から見るのではなくて、視線の“はじ”でちらりとみる。そうすると、本当の姿がみえてくるものだ」
 どこの誰の言葉かは忘れたけれど、こんな名文句を聞いたことがあります。一面にこだわらず、リラックスしてみることで、あらたな切り口が発見できて、新たな発想が生まれてきます。
 もうひとつの見方は、いろいろなレベルで見ること。目に見える関係だけにとらわれないで、見えない因果関係も観ることです。この見えない関係を「観」ようとしないと、ときに大きな過ちを引き起こします。
 いまや、ほとんどの家電機器にはリモコンがついています。ピッ! とやって、テレビをつける。ピッ! とやってチャンネルを変える。これを江戸時代の人が見たら、どうでしょう。観察力のある人なら、一定の条件下でチャンネルが変わっていることにきっと気がつくでしょう。リモコンのある部分をテレビに向け、ボタンを押すとチャンネルが変わる。そこには、一定のルールをもって働く存在(赤外線)があることに気づくでしょう。

 海岸で、小石を拾った少年がいいました。
「おとうさん、この石とっても熱いよ。」
 父親は近くにあった貝殻をひろうと、
「この貝もこんなに熱くなっている。」と、少年に渡しました。
少年は、考えます。この石が熱いから貝殻も熱くなったんだろうか。それとも貝殻が最初に熱くなってその熱が石に伝わったのだろうかと。
 私たちもこの少年と同じ過ちをしばしば起こします。太陽と小石、太陽と貝殻の間に成立する因果関係に気づかずに、因果関係の成立しない小石と貝殻の間で因果関係を求めるがために、誤った結論に達してしまうのです。
 多くの角度から見る。見えない関係も観る。この二つの見方を心がけること。それが真に科学的なものの見方ではないでしょうか。

 突然ですが、私は夫婦別姓には賛成です。多様性というものを認める私のスタンスからは、そんなことは当たり前のように思えます。ある人に、こんな指摘をされました。
「生物的なものの考え方をするならば、夫婦別姓に賛成するのはおかしいのではないか? 夫婦別姓→女性の社会参加の助長(家庭の崩壊)→少子化。生物として種を残さないような方向へ向かわせる政策を支持するのか」

 確かにひとつの見方かもしれません。しかし、私にはこれも一つの思考の罠に思えてなりません。
 女性の社会参加の増加と少子化は果たして、前述のような→で結ばれるのでしょうか。確かに、女性の高学歴化が進み、その結果晩婚化が進み、その結果が生涯出産数の低下に結びついているという現象はあるように思えます。しかしその裏には、もう一つの、もう少し大きな因果関係が隠れているのではないでしょうか。
 「人間は生物である」という観点から考えれば、こうなります。
 20世紀にはいっての人口爆発で、地上には人間が溢れかえるようになった。環境容量に対する個体数の比率が高くなりすぎると(つまり人口密度が高くなりすぎると)、個体ごとの出生数は減少する。また、子どもを生み育てる環境が整ってない場合、雌は自然にこどもを生まなくなる。
 つまり、女性の社会参加や少子化という「現象」は、人口爆発という「原因」に起因しているのではないか、ということです(太陽と小石と貝殻の関係を思い出して下さい。)。
 もちろんここでは、意図的に無視している変数もあります。これだけでは、発展途上国の人口増化の説明にはなっていませんから。ただし、「性」に纏わる社会問題を考えるときには、人間の生物性に関する思考や視点なしには、本質まで切り込んだ議論はできないのでは、と思っています。個体の維持や種族の維持を図る本能が人間にはあるという認識があってはじめて、家庭や地域や国の話ができると考えます。
 個から始まって、それが、国や地球に至る。自分が幸せになる努力をし、自分の周りの人が幸せになる努力をし、それが全宇宙へ波及していく。人間中心、個人中心でありながらも、全体としてのバランスがとれている。

 それが、細胞都市の基本的な考え方です。

 → この項まだまだ続く。次回やっと、「環境」「共生」「地球と人間の関係」「政策とメタ政策」などに、多分言及。

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栗田拓の論考

Thesis

Taku Kurita

栗田拓

第16期

栗田 拓

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