松下政経塾 The Matsushita Institute of
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2022年9月

塾生レポート

居場所の様々なかたち

 

はじめに

 現在、私は子どもの新たな居場所づくりに取り組んでいる。居場所と言えば、住まいや学校であるが、現在では第三の居場所と呼ばれる学習支援や交流の場が地域でも増えているところである。第三の居場所に加えて、地域の子どもたちが利用できる地域の家を実現するため取り組んでいるが、本稿では様々な居場所について考えることとしたい。


1 みんなの居場所を

 これまで私の活動は子どもや子育て世帯への支援といったところに着目して、こども食堂の運営や訪問支援事業に関わってきたが、家庭への支援というところに偏っており、子ども自身が主体的となって関わりを持つことができる部分へのアプローチがほとんどなかった。現在、子ども自身が使うことのできるショートステイ事業を実現するために活動をしているところであるが、その過程において新しい居場所を運営されている団体の方からお話をうかがう機会があった。8月20日に伺ったその団体は一般社団法人青草の原。子どもだけでなく若者や大人の居場所である「れもんハウス」を東京都新宿区で運営しておられる[1]
 代表理事を務めておられる藤田琴子さんは母子生活支援施設において支援員をされている傍ら、この団体の運営に取り組まれている。母子生活支援施設というのはドメスティックバイオレンスや経済的事情などにより居場所を失った母親と子どもが生活する場である。母子生活支援施設を出た母親、そして子どもが気軽に来ることのできる場所を作るという目的でれもんハウスを立ち上げられたとのことである。
 れもんハウスは新宿駅からほど近い一角の一軒家にある。青草の原の運営方針に共感をされた愛知県の建設会社が売家になっていたその家を買い取り、青草の原に貸してくださっている。2階建ての一軒家の1階にはリビングスペース、キッチン、バス、トイレ、4畳半の部屋、2階には2部屋あり、居住者の住まいとなっている。つまりは、2階には居住者専用のスペース、1階には共同生活の場が設けられていることになる。様々な人が出入りし、時には都外からの旅行者が来ることもあれば、近隣の方がコワーキングスペースとして利用するなど多様な利用が可能な居場所となっている。
 私が訪問したときはちょうど夕飯時であった。その時にれもんハウスを利用している人がそれぞれ食事を支度するとのことで、まだ20代と思しき男性がキッチンに立って、冷蔵庫の中にある食材を見繕って調理をされていた。誰が何をすべきかという取り決めをせず、その場にいる方がそれぞれ自分にできることを行っているとのことである。居場所と言っても、誰かが仕事として義務的にすると、長続きしないことが多い。自分がやりたいことをする、誰かと一緒に過ごすことを通して安心するということが持続の秘訣ではないかと感じたところである。


2 居場所のあり方とは

 居場所には様々なかたちがある。子どもであれば、保育所、幼稚園、学校、成長して仕事をするようになれば職場、退職後は趣味の集まりや地域のお達者クラブ、高齢者になると老人保健施設やデイサービスなど人は生涯で様々な居場所で人生を過ごす。今挙げたのはほんの一部であるが、これらを包括し、どのような人でも気軽に立ち寄れる居場所というのはほとんどない。様々な世代が交流できる場づくりというのはそれぞれの世代で体力の差や興味のあることも異なる上、関係性を構築することも難しい部分がある。
 子どもから高齢者まで誰もが生活する居場所を構築するためにはどうするべきか。最も重要なことは利用者の割合をほぼ均一にすることであると考える。世代に偏りが出ると、他の世代が集まりにくくなり、既存の居場所と変わらないものとなってしまうからである。誰もが気軽に利用できる居場所をつくるための仕掛けづくりは一見簡単なように見えるが、なかなか難しい。人づきあいが得意で人と過ごすことが苦でない人にとっては居心地がいいとしても、あまり人づきあいが得意ではない、大人数でいることが苦手という人にとっては少人数で過ごせる場ということも検討しなければならないであろう。
 一見、簡単と思われる居場所づくりであるが、人が集まればそれでよいというわけではない。誰もが利用できる居場所というのは単に開かれている居場所であるだけであって、来たくなる場所とはまた別にデザインをしていく必要がある。誰でも利用できる居場所をどう創っていくのか、そのヒントを掴むべく今後も活動に励んでいきたい。




[1]一般社団法人青草の原ホームページhttps://aokusa.or.jp/(令和4年8月30日閲覧)
2022年9月 執筆
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