松下政経塾 The Matsushita Institute of
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2021年11月

塾生レポート

行政とNPOの連携のあり方をどう考えるか
冨安祐輔/松下政経塾第41期生

 現在、私は民間での子育て支援、そして事業運営のノウハウを学ぶため、地元福岡にあるNPO法人で現場研修をしている。現場での研修を始めて、半年が過ぎたが、課題を抱える方へのアプローチをどうしていくべきか。その方策を学ぶため、様々な方からお話を伺っている。本稿ではヒアリングを通して得られた学び、解決策についての所見を述べていきたい。

 

1 アプローチの方策

 2年次になってから早半年。私はこの半年間、地元福岡県大野城市にある認定NPO法人チャイルドケアセンター(以下、「チャイケア」)で活動をしてきた。7月からはアドバイザーとして事業運営方針の検討にも携わらせていただいている。先だっての研究実践活動報告においても述べたように、現在、チャイケアで力を入れているのが、子ども食堂やフードパントリーである。子ども食堂は草創期に子どもの貧困対策と絡められて述べられることが多かったが、現在は子どもだけではなく、高齢者も含めた地域住民の居場所としても捉えられ、孤独・孤立対策としても役割を果たしている。子育て家庭へのアプローチは口コミやLINE、Facebook、InstagramといったSNS、場合によっては報道機関にも取り上げてもらうなどして行ってきた。しかし、コロナ禍の状況では新規での利用申込が伸び悩み、利用者の顔ぶれが固定化しており、利用者を増やす方策が大きな課題であった。


2 SNSの活用と捕捉性について

 SNSの利用率は現在、LINEが約90%、Instagramが約42%、Facebookが約32%[1]となっており、情報提供の媒体としても大きな役割を果たしているが、SNSでの捕捉性にも限度がある。そしてSNSを利用していない人にもどうアプローチをしていくのか。捕捉性を最大限高めるためにはSNSの活用とともに、やはりアナログにはなるがチラシの配布といった組み合わせが必要である。一方で、チラシの配布には印刷費や配布にかかる人件費など費用がかさみ、ノンプロフィットの組織では手が出しにくい。そのためには幅広くポスティングを行うのではなく、対象となる家庭にお知らせをすることが効率的である。
 では対象となる家庭を把握するにはどうしたらよいか。それは行政の情報を活用することである。行政は様々な情報を握っている。家庭の所得状況やひとり親家庭など課題を抱えている可能性があると思われる家庭に直接アプローチすることができる情報を持ち合わせている。これを活用しない手はない。しかし、大きな壁がある。それは個人情報保護法である。個人情報保護の観点から行政が家庭の状況を漏らすということはない。ノンプロフィットといっても民間団体であることには変わりがなく、行政が持つ情報を得ることはできない。
 それではどうしていくべきか。先だって行政との連携に取り組む民間団体の方に話をお伺いする機会を得たことから下記ではそこで伺ったことについて述べていくこととしたい。


3 NPOと行政の関係性

 今回、お話を伺ったのが、認定NPO法人かものはしプロジェクト日本事業部の五井渕利明さんである。五井渕さんは以前、地方公務員をされており、現在はノンプロフィットの世界で活動をされている。千葉県松戸市の「まつどでつながるプロジェクト」においてアドバイザーとして、地域のNPO、松戸市と連携した円卓会議の実施や行政との連携体制の構築をされている。プロジェクトでは深刻な案件や、明らかに課題を抱えていることが明白な家庭ではなく、いわゆるグレーゾーンの中でも低リスクの家庭を対象にアウトリーチ(訪問支援)や寄り添い支援、NPOを含めた関係機関との連携に取り組んでおられる。
 松戸市との連携としては、円卓会議に参加してもらい、ケース検討を行っているとのことであったが、様々な事例を組み合わせた内容の検討にとどまっており、これをどのようにして活動に生かしていくのかが課題であるとのことだった。ただ、ケース検討を行うことも重要である。同じような事例でなくても、それぞれの家庭が抱えるバックグラウンドや事象の発生に共通の問題というのはどこかしらある。その要素を抽出し、行政ないし民間団体がどう役割を担い、直接支援につなげることができるのかが大きな鍵となってくる。円卓会議を通して、地域のNPOがどういう役割を担うことができるのか、どの団体が対応したら上手くいくのかがそれぞれの役割を認識することができ、おのずから課題解決に向けた本質が見えてくるであろう。そのためには直接的に情報を提供してもらうのではなく、各地域のNPOに何ができるか、それを行政側に理解してもらうことが重要であると感じる。


4 おわりに

 行政の情報をどのようにして得るのか、どう行政を説得すべきかということに対して私自身苦心してきた。いくらノンプロフィットの団体であっても家庭状況を外部に伝えることは難しい。
 しかし、地域資源があることによって、課題解決に向けた道筋がつくかもしれない。そういった場合、行政が地域のNPOと結びつくことによって、「こういった事業があるから使ってみたらどうか」といった紹介につながることであろう。行政側が情報を漏らすことができないのであれば、行政の方に紹介してもらえるよう、取組を知ってもらうことの重要性を改めて感じている。NPOは事業を継続していくにあたって、行政の委託や外部団体からの補助に頼らざるを得ない。一方で自らの団体のあり方そのものを考え、行政にアプローチするのかが重要である。NPO自身も行政に対して待ちの姿勢ではなく、攻めの姿勢で自分たちに何ができるかを訴えかけていくことが重要なのではないだろうか。



総務省情報通信政策研究所「令和2年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書 <概要>」、令和3年8月https://www.soumu.go.jp/main_content/000765135.pdf(最終閲覧日令和3年11月18日)
2021年11月 執筆
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