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2021年8月

塾生レポート

フードバンク活動から見る支えあい社会
冨安祐輔/松下政経塾第41期生

 私は「コミュニティ全体で子どもを育てる体制を構築しよう」をビジョンに掲げ、そのヒントを掴むべく、現場で活動を行っている。どうすれば地域の人に参画してもらえるのか、今回の報告ではフードバンク、フードドライブの事例を挙げて述べていくこととしたい。

 

1 はじめに

 前回は福岡県大野城市にある特定非営利活動法人チャイルドケアセンター(以下、「チャイケア」)での現場活動について報告を行った。今回もその引き続きでチャイケアが事務局となっている「ふくおか筑紫フードバンク」の取組について話をさせていただくことにしたい。フードバンクの取組は社会福祉活動の観点から取り上げられることも多いが、食品の廃棄コストや環境負荷の軽減といった食品ロス、近年ではSDGs(持続可能な開発目標)につながる取組としても注目を集めている。ふくおか筑紫フードバンクは子ども食堂を運営している団体に対して企業や個人から寄贈された食品の配布に取り組んでいる。子ども食堂だけに対象を限定しているフードバンク団体は全国的にも珍しい。以下では私が現在関わっているフードバンク活動について、また地域住民・企業との連携について述べていくこととする。

2 フードバンク活動について

 チャイケアでは平成27(2015)年末から自主事業として「子ども食堂」の立ち上げ支援を開始した。その取組は地元新聞社、テレビ局で取り上げられるようになるにつれ、取組に賛同する企業、個人の方から食材の寄贈が相次ぐようになった。食材を寄贈されても、保管するためには食品衛生上、24時間空調設備の整った保管場所の確保や冷凍冷蔵庫が必要である。保管場所に苦慮していたところ、株式会社西松建設、エフコープ生活協同組合、地元自治体の協力を得て、保管場所や冷凍冷蔵庫の確保が実現し、全国唯一の子ども食堂を対象としたフードバンク「ふくおか筑紫フードバンク」が設立された。食品の受入、引渡といった調整については事務局であるチャイケアが行っている。私自身も現在、フードバンク活動にも関わらせていただき、寄贈された食品の運搬、仕分けなどにも従事しているところである。
 寄贈される食材は米や調味料からジュース、茶、菓子まで様々である。現在はコロナ禍という状況もあり、人が集まる子ども食堂の取組は調理した弁当を配布するテイクアウト方式や、食材をそのまま配布するフードパントリーの取組が主となっている。企業・個人の方からいただいた食材はまず賞味期限のチェックを行って、仕分けを行う。フードパントリーの場合は、仕分けした食材を袋詰めし、来場者に配布する。同じ品目が大量に寄贈される場合もあれば、少量の場合もあることから、配布時に不公平感がでないように配慮しながら、どの商品と組み合わせて配布するのかという調整も必要となっている。意外とこの食材管理に人員が割かれている現状もあり、システムの構築が求められているところである。

3 地域住民・企業との連携

 フードバンク活動を行う上で必要となるのが、協力してくださる地域住民や企業の方々である。いくら配布したくても、配布する“モノ”がなければ成立しないので、協力者が必要なのは当然である。ふくおか筑紫フードバンクでは積極的に新聞やテレビなどマスコミを通して活動の発信を行っており、これまで協力企業数を増やしてきた。活動を開始した平成28(2016)年度は10社あまりだった協力企業数も現在は20社を超え、食材の寄贈量もこの5年で15倍に増加している。コロナ禍になってからは緊急事態宣言や飲食店に対する時短要請の影響もあり、飲食店で使用される予定だった食材等の寄贈も重なり、増加の傾向が続いている。企業側からしてもCSR(企業の社会的責任)活動の一環や廃棄に要するコスト削減の面からメリットもあり、お互いWin-Winの関係となっている。また地域の農家の方からも野菜や米などを寄付していただき、テイクアウト用の弁当の調理に活用するなどしてきたが、この取組を地域でどう広げていくのかが課題となっていたところである。
 そのような中で7月から福岡県とイオン九州の協力を得てはじまったのが、イオンの大型店舗におけるフードドライブの取組である。フードドライブというのは家庭で余った未使用食品を持ち寄っていただき、フードバンクに寄贈する活動のことをいう。店舗に回収カゴを設置してもらい、店舗を利用する地域住民の方に食品を持ってきていただく仕組みで、県内4店舗において実施され、うち2店舗分がふくおか筑紫フードバンクに寄贈されることとなっている。7月12日~18日に実施されたフードドライブでは2店舗分でおよそ75kg、350個余りの食品が寄せられた。今後も毎月第3週前後に実施する予定である。
 消費者庁が昨年行った調査ではフードバンク活動について知っていると答えた人が44.7% ということで、フードバンク活動に対する世間の認知度については高いとは言えない状況である。しかし、今回のフードドライブでの実績を通して、人が日常的に利用する場、施設における周知や活動によって、アクセスが容易となり、支援ができる人、支援を必要とする人、双方がつながりやすくなるのではないかと感じたところである。

4 おわりに

 これまでフードバンク活動の取組について述べてきたが課題も見られる。まずはマンパワーの問題である。3においても触れたように寄贈していただく量がこの5年で15倍となっているが、今後寄贈量がさらに増加するとマンパワーの不足も懸念されることから、システム化をどう進めていくかが大きな課題となる。協力企業側からしても食材を適切に管理し、活用してもらうことが前提で寄贈してもらっていることから運搬管理機材や食材管理システムの導入が求められる。農林水産省によるフードバンク支援 もあるが、倉庫や運搬用車両の賃借料しか対象とならず、補助対象期間終了後の経費については保障されていない。
 2点目はフードバンクに寄贈される食材の内容である。フードロスの観点から寄贈をいただくものについてこちらからリクエストすることはできない。そもそも寄贈されているのだから、贅沢を言うものではないという意見もあるかもしれないが、食材を必要とする人のニーズにも応えていく必要があるのではないだろうか。
 フードバンク活動が永続的かつニーズに応えられる活動できるよう、チャイケア職員の皆さんとともに考えていきたい。


[1] 消費者庁消費者教育推進課「令和元年度 消費者の意識に関する調査 結果報告書 ―食品ロスの認知度と取組状況等に関する調査」 https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_policy/information/food_loss/efforts/pdf/effort_200424_0001.pdf (最終閲覧日:2021年7月30日)
[2] 農林水産省HP「フードバンク」 https://www.maff.go.jp/j/shokusan/recycle/syoku_loss/foodbank.html (最終閲覧日:2021年7月30日)
 
2021年8月 執筆
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