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自己紹介エッセイ
2007年11月

研修レポート

自己紹介エッセイ 「そげん似ちょっどかい?」
宇都隆史/卒塾生

 

 「性格は、ワイがいっばん親父ドンに似ちょらい」(性格は、お前が一番父に似ているぞ)と、兄から父のコピー呼ばわりされる度に、憮然としてしまう。そりゃ自覚はしているけれど、肯定はしたくない。そんな自分の性格を他人に説明するには、私のオリジナルであり、かつ私をこのように教化した父を引き合いに出すほうが解り易いだろう。

 父は、直情型を絵に描いたような生粋の薩摩隼人である。柔道7段の武道家で、高校の体育教諭であり、我々3兄弟にとって畏怖の対象であった。父の家庭での教育方針は「気骨ある日本男子を造ること」に尽きた。我々息子達とよく遊んでくれる子煩悩な父であったが、ふとした拍子で遊びが修練に変わるのが子供心に怖かった。

 私が生まれて間もない頃、4歳になったばかりの兄は、父に連れられて田舎の川へ水遊びに行った。兄は浅瀬で水遊びをするものと思い、喜んでついていったのだが、突然5m程の高さの岩山から滝壷に放り込まれてしまう。父の目的は水遊びではなく水練であった。降って湧いた災難に、無我夢中で手足をバタつかせ岸にたどり着いた幼い兄が、眼を真っ赤にして発した言葉は、今でも我が家の伝説となっている。「お父さんは、本当に僕のお父さんなんですか!」。この言葉が父にはよほど堪えたのか、私の時は滝壷ではなく、足のつかない高校のプールにレベルダウンされた。

 また或る時、「大きくなったら何になりたいか」という父の質問に、私が「白バイのお巡りさん」と答えると、「男の子が、そげな志の低かことでどげんすっか。一番を目指さんといかんど。ヤクザでも親分になれば良か!」と言って、警察官OBの祖父を仰天させるという、そんな豪放磊落な教育人であった。

 折檻と称して、手足を縛られ車のトランクに閉じ込められた。自宅前の電信柱に括り付けられもした。親に叩かれたこともない、最近の優良パパさん達には想像もできないだろう。あまりに強烈な父の躾に、思春期を過ぎる頃には、父の存在そのものを蛇蝎のごとく忌み嫌ったものだ。

 成人してからは、こんなこともあった。ある正月元旦の夜。酒も手伝ってひょんな議論から父と私は共に激高し、しまいには取っ組み合いの大喧嘩になった。寄る年波と酔いには勝てなかったか、父は襖に叩きつけられた。父と子の力関係が逆転した瞬間であった。逆上して家を飛び出した父。いずれ帰ってくるだろうと高をくくっていたのだが、朝になっても姿が見えない。心配して方々探し回ったが見つからず、とうとう本人からの連絡で居場所がわかった。父は雪の舞う深夜に、20キロ以上も離れた生家まで歩いて帰っていたのであった。

 激情家で、お人良し。気位が高く、おせっかい。寂しがり屋で、感動屋の父。「お父さん、私はそんな性格がそっくりだと言われていますが、似てませんよね」と問うと、父は破顔し焼酎をあおって曰く、「オイの自慢の息子じゃっで、似ちょっとよ。コピーじゃが」。

2007年11月 執筆
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