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1997年1月

初心に返って
黒田達也/卒塾生

 
97年の元旦を迎え、いよいよ21世紀まであと4年となった(ちなみに21世紀は20 01年からです。気を付けましょう)。毎年、正月には壮大な計画を立て、3月の実践審 査会の手前くらいでその計画は頓挫し、審査会ではこと無きを得ているのであるが(?) 、今年は昨年末に引っ越した事務所の中でパーテイション作りに追われながら、何の計画 も立てる間も無く正月を過ごした。ただ、引越の段ボールを整理している時、ふと『松下 幸之助「一日一話」』(PHP)が目に留まり、改めてこの小さな本を読み直してみよう と思った。この本は、4年前の入塾試験の1次面接の際、「今までに松下幸之助の本を読 んだことがあるか」との問いに、馬鹿正直に「ない」と答え、「では次回までに3冊読ん で来なさい」と言われて買った、最初の塾主の本であった。

この本は、この時と、1年目秋の幸之助大会の発表準備時の2度、読み通している。1度 目に読んだときは印象に残った日の言葉に丸を付け、2度目の時にはページの端を折って いた。改めてチェックすると、1年目の半年間で印象に残る箇所が随分変わったことに気 付いた。それだけに、今回どんな風にこの本を読めるのか、楽しみであった。

1月の31日分を見てみよう。最初の時は、6日の「素直な心」、15日の「青春とは心 の若さ」、18日の「水道の水のように」に丸が付いている。半年後の秋には、9日の「 雨が降れば傘をさす」、23日の「物をつくる前に人をつくる」などがチェックされてい る。そして、今回、特に目に留まった言葉は、7日の「熱意は磁石」と25日の「融通無 碍の信念」、26日の「短所四分、長所六分」、30日の「自分を飾らず」である。

入塾前に読んだ時は、皆さんもそうだったと思うが、「素直な心」というのがピンと来 ない、「水道哲学」は弊害が大きいと感ずる、他にも「人間は万物の王者」というのは人 間の傲慢じゃないか、「ダム式経営」は大企業の理想論だ、「21世紀は繁栄はアジアに 回ってくる」というのはいかにも単純過ぎではないか等々、読んでいてカチンとくるとこ ろが多かった。

2度目の時は、私自身がリクルート流の経営哲学から、塾主流の経営哲学に関心の移る過 渡期であったせいか、「経営のあり方」というものに随所に関心を持ったようである。今 でも良く覚えているが、朝会のスピーチで、リクルート流の「競争が国家、企業、人間を 強くする」という類の話をしたとき、当時の上甲晃塾頭が「僕はそうは思わん。志が国家 、企業、人間を強くするんじゃないかな」とおっしゃられた。塾主の言われる「天地自然 の理に則った経営」を志に置き換えて表現されたのだと思うが、当時はなかなか腹にスト ンと落ちなかった。関西研修のとき、同期の塾生が松下の社会的貢献(当時はこの言葉が 良く使われた)について訪ねたところ、山下相談役が毅然として「松下は人間をつくる会 社だ。いい社員、いい人間を育てることが最大の社会的貢献だ」と言い切られたあたりか ら、松下流経営というものに興味を持ったと記憶している。

そして今回は、故郷に戻って約2年間活動し、様々な人々と交流していく中で、自らの人 生の生き方、人との接し方というものに目が留まる。理科系の頭を持つ私にはなかなか「 融通無碍」に物事を考えられず(大体「融通無碍」な「信念」って何でしょうか?)、熱 意を表に出すのが下手で苦労することが多い。人のあらが目に付くし、それをつい口にし て人間関係を悪化させたことも数限りない。「盗っ人に三分の理」があるとはどうしても 思えない。「塩の辛さは舐めてみてわかる」というが、辛い塩を舐めずについ甘い砂糖に 手が伸びる。今だに試行錯誤の日々を送っているのが現状である。

このように良書は何度読み返しても、必ずその時々の手応えを返してくれる、自分の成 長を移す鏡となってくれると思う。情報氾濫の世の中、つい鶏舎の中のにわとりのように 次から次へと新しい本を求めがちであるが、いい本、特に塾主の本は何度も味わって読ん でみるとよい。そのたびに新たな自分の発見があると思う。

1997年1月 執筆
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