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100キロも歩く意味について

 一般的に、長距離の遠足として各学校で行われる行事は、せいぜい50キロ程度歩くことが限界であろう。私も、高校時代の3年間、耐久遠足なるものを経験し、毎年、札幌市内から近隣の支笏湖まで歩いたが、それでも30キロ弱の距離であった。30キロでも、初めて歩いた高校1年生のときは、極度の筋肉痛と、歩き過ぎにより爪が何枚も剥がれるという事態に見舞われ、それなりに大変だったことを覚えている。

 ところが、政経塾に入り、塾生の通過儀礼として待っていたのが、100キロ行軍である。100キロと言えば、通常は自動車や電車で移動する距離であるが、ここではその距離を24時間以内に一睡もせずに歩くという研修が存在するのである。

 今、思えば、約1年前のことである。私は、入塾選考試験の面接で、「体力に自信があるか。」と、面接官から聞かれたことを思い出す。社会人を9年弱経験していた私は、これといった運動をしていた訳でもなく、もともとの虚弱体質もあり、体力には全く自信が無かった。ましてや、27期生は、私以外、全員男性であったので、なおさら、その心配は募るばかりで、とにかく、100キロも歩けるのかどうか、不安で一杯のまま、入塾するに至った訳である。

 その不安の中、とにかく、本番で歩くときに、他のチームメイトに迷惑を掛けてはいけないと、毎朝のウォーキングで一切手を抜かずに、自分の限界スピードで歩き続けることを実践した。距離にしてわずか2キロ程度ではあったが、毎日積み重ねることが重要であると信じ、とにかく歩き続けたのである。

 その甲斐あってか、先日行われた100キロ行軍本番では、無事、時間内に完歩することが出来た。入塾以来、一番不安だった研修を無事に乗り越えることが出来て、大変嬉しく思う次第である。

 今回、私が完歩出来たことについて、もちろん自分で努力した面もあったものの、他にもいくつか要因があり、むしろその要因が成功の秘訣であると感じたので、以下で紹介したい。

 1つは、何と言っても、チームメイトの存在である。100キロ行軍は、個人競技かと思いきや、意外や団体競技なのである。参加者を各チームに分け、チームの中で1人でも脱落者が出た場合、そのチームは全員失格となる、厳しい連帯責任のルールが適用されている。故に、単純に考えれば、自分自身が嫌になろうが、他の人のことを思えば、歩き続けるしかないのである。

 ところが、実際に歩いてみると、他の人のことを考える前提ではなく、自分自身が歩くための「力の源泉」として、チームメイトが重要であることに気が付かされた。

 不思議なもので、別に励まし合うでもなく、ただ隣にいて一緒に歩いているだけなのに、精神は安定し、勇気が出てきて、歩くことに集中出来るのである。「人」という字は、人と人とが支え合って成り立っていると言うが、そのことをまさに実感出来た研修であった。他の研修のときも、仲間の重要性を感じてはいたが、存在するだけでもありがたいと感じたのは、やはり体力的にも精神的にも追い詰められた100キロ行軍であったからこそだろう。

 「感謝協力のこと」とは、政経塾の五誓の1つであるが、「協力」とは、個別具体的に何か行動を起こして協力することだけではなく、仲間として存在すること自体が協力に値することをこの研修を通して、新たに学んだ。

 2つ目の要因は、チームメイト以外の今回の100キロ行軍を支えてくれた人達の存在である。それは、サポート隊として、各サポートポイントや政経塾で、私たちのケアをしてくれた、先輩達や職員の皆さんのことである。確かに、100キロ行軍は歩かなければ始まらないので、歩く人が主役ではある。しかし、実際歩いてみると、自分達の力だけでは、到底成し得ない興行であることはすぐにわかる。疲労が限界に達し、硬くなった足をマッサージしてくれたり、温かいスープを飲ませてくれたり、挫けそうな私たちに向かって、「あと少しだよ。」と励ましてくれたり、何とか帰塾した私たちを満面の笑顔で迎えてくれたりと、様々な人達のサポートに支えられて成し遂げられたのである。そこには、私たちの目に直接触れないサポートもあったはずである。

 100キロ行軍に限らず、人が生きていると、自分では気がつかないところで、たくさんの人から助けてもらっている。その助けは、普段ではあまり実感することは少ないが、今回の研修を通じて、改めてその大切さを再認識した次第である。

 100キロ行軍の前に、私たち27期生は、その思いを俳句に託した。ちなみに、私の俳句は、「100キロを 歩いて刻む 我志」
である。これを作ったときには、歩きながら自分のこれまでの人生を振り返り、今に至った志を再確認しようと考えていた。

 しかし、実際歩いてみると、50キロを過ぎた当たりから、ものごとを考える余裕も無くなり、この哲学的な課題を考えることは全く出来なかった。

 今、改めて100キロ行軍をおえてみての心境を詠んでみたいと思う。
 「遠い道 歩く傍ら同士あり 歩めよ共に 夢に向かって」

 「何故、100キロも歩くのか。」
その意味は、単に体力や精神力を鍛えるためではない。まさに、人間とはどういうものであるか、その真髄を体感するために歩くのである。

 恐らく、この過酷な研修は、今後も政経塾が続く限り継続されるであろう。来年度以降は、今回の気持ちを忘れず、後輩達のサポートに徹し、支えていきたいと思う。

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石井あゆ子の活動報告

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Ayuko Ishii

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第27期

石井 あゆ子

いしい・あゆこ

衆議院議員政策担当秘書

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