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100キロ歩行”サポート”録

魔の100キロ歩行…。時と共に生成発展し変転を重ねてきた政経塾のカリキュラムにおいて、唯一とも言える途絶えたことのない歴史ある「修行」である。これまで25年間、連綿と続けられてきたこの行事は、入塾前からの最大懸念事項であった。殊に極度の運動オンチの私には、死活問題であった。なにせ途中脱落した場合、連帯責任でメンバー全員が翌年も歩かなければならないのだから…。内定者研修の「体」の部分については、「100キロ歩行の為に体力をつける」とし、入塾後にも早朝研修の任意のジョギングをできる限り行って、自分なりに準備をすすめて当日に備えていた。特に当日が9月最終日であるので、次の日の誕生日を、動けなくなって病院で過ごすハメにならないようにと!

と・こ・ろ・が、である。7月のとある日の体育の時間、フットサル中になんと左足の骨にヒビを入れてしまったのである。今までの努力は一体何?!ホント、泣きたい気分であった。(あまりの痛さに実際泣いたけど。。。)しかし、当日ずっと寮室でイジけていたわけではない。サポート部隊に入れていただいて、同期のサポートをすることとなった。出場者のレポートは多々あるが、裏方のサポート部隊については未だレポートされたことがない。これはサポート部隊を中心とした、当日の記録である。

24時間(29日の朝10時に出発して翌朝10時きっかりまでに塾に戻ってこなければ失格)、一昼夜かけて寝ずに歩行するため意識が朦朧とするとか、歩行中の擦り傷等に関しては塾は一切責任を負わない、などと予め説明されていたので、サポート体制はさぞかし仰々しいものであろうと想像していたが、実際は淡々としたものであった。まず塾に本部が設けられ、レンタカーを借りて出場しない上級生(好き好んで自主参加する奇人も毎年後を絶たない)を中心に班組みをして、10キロおきのチェックポイントでサポートグッズを用意して出場者の介護にあたるというのが、そのアウトラインである。サポートグッズは、毛布、ビニールシート、熱いお茶、水、バナナ、チョコレート、オロナミンC、救急箱で一式である。サポート体制は3班に分かれ、まず昼間の50キロ地点までは1班があたり、以降の夜間から朝にかけては2班が10キロごとにあたる。私は後者の夜部隊に配属となったため、昼間は仮眠していた。

夜7時半、いよいよ出発である。変な時間に無理やり寝たためか、やたら眠かった。とんでもない地理オンチの私は、どこに向かっているのかさっぱり分からなかったし、サポート中も自分がどこにいたのかやはりさっぱり分からなかったが、最初の50キロ地点に同期が暗闇から現れた時に、妙にホッとしたのを覚えている。

同期はイとロの2班に分かれていた。ロ組が事前に3回ほど歩行練習を行ったのに対し、イ組みは事前練習は1回だけ、しかも「ぶっつけ本番で限界に挑戦したい」などとほざいていたのだが、その違いがモロに結果となっていたようである。やはり練習の成果が如実にロ組に出ていた。まず元気だったし、余力があるようにすら見えた。それと筋肉。チェックポイントでマッサージをした時、ロ組がそれほどでもないのにイ組はパンパンに張ってコチコチ状態であった。それに疲れ方も相当に見え、チェックポイントでマッサージを受けながら道端に累々としているその様は、…ほとんどトドであった。だ~から言ったのにー!大丈夫なのかしら?まぁ、私にしてみれば来年一緒に歩いてくれる同期が出来て嬉しいけど。。。

途中苦労したのは、チェックポイントの発見である。職員の嵩井さんお手製の写真入地図を手にしていたとは言え、暗くてよく分からないのである。1つのポイントを見つけるのに、何度も行ったり来たりした。見つけたあとはひたすら歩行者を待つのであるが、これが長くて寒い。9月とは言え、夜の海辺の寒さは身に凍みる。しかし夜の帳の中、紺青色の空と一体になったミッドナイト・ブルーの水平線は、悲しくなるほど優しかった。

一番印象に残ったのは、生まれて初めて受けた職務質問というものであった。80キロのチェックポイントが葉山の御用邸前であったことから生じたハプニングではあったが、あまり気持ちのいいものではない。事情を説明して無事に許可を得られたが、もう二度と受けたくないと思った次第であった。

夜明けと共に、清々しい朝を迎えた。出場者は、全員無事にに塾に帰ってきた。ロ組はいつ準備したのか、ゴール直前にアーチ門の前でダンスまで披露した。(見ていて正直恥ずかしかったが。。。)サポート部隊も、事故もなく恙無く任務を終えた。

今回見ていて痛切に感じたのは、仲間の大切さである。お一方だけ単独歩行で出場なさった先輩がいらしたのだが、「1年の時には何ともなかったのに、やっぱり一人で歩くのは辛い」としきりに言っていらした。また、その他の出場者も励ましあいながらの道連れがいたこと、そして先輩方のサポートにとても感謝していたことも、それに拍車をかけた。私にしても、先輩方に大変お世話になった。実は自動車免許を持っていないため、殊に同じ部隊だった神山先輩にはずっと運転してもらうこととなり、痛み入る次第であった。そして本部を中心としたほかのサポート部隊、塾で待ち受けていて下さった職員の皆様、特性のカレーと豚汁を用意して下さった調理師の安藤さん。皆がそれぞれの持分を発揮し協働して、一丸となった日であった。五誓の一つ、「感謝協力のこと」を体感した一日だった。

26年間絶える事無く続いてきた名物行事であることが、少し理解できた気がした。それでもしかし、と思ってしまうのも確かなのだが…。

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