論考

Thesis

社会経済生産性本部の研修について

財団法人社会経済生産性本部・経営アカデミーに席を借りてから約二ヶ月になる。 よ うやく職場の雰囲気にも慣れてきて、自分の机にも落ちついて座れるようになってきた。

 こちらのスタッフは男性8名、女性が2名。経営アカデミーは「部」扱いのため部長が 一名、そして担当長一名で管理している。その他の男性スタッフは一人で約2コース運営 している。本部はフレックスタイムを実施しているため、各自担当しているコースがある 日は早めの出社となるが、大体9:30~10:30の間だ。

 急いで帰る人は17:30には支度を始めているが、残業している人でも20:00、 自分が担当している夜間コースがある時は22:00にさしかかる。

 私は毎日9:30までに出社する。経営アカデミー全12コースどの講座を聴講しても OKであるので、その時間は教室内で事務局として受講している。他の時間はスタッフか らの雑用がなければ、電話番をしながら自分の椅子で本を読んでいる。なかなかゆっくり 読ましてもらえないが。

 講座は平日終日のコースと夜間コースに大別される。各コースとも週一回のペースで年 間2回合宿が行われる。講師は大学教授やビジネスマンが中心。参加者が非常に熱意を持って講義に臨んでいるためだろうか、教える側も講座の終了時間を忘れてしまい時間超過 もしばしばある。
 コース参加者は10名~50名前後。いわゆる一流企業の中堅社員が会社の研修として 受講している。ほとんどで年齢にしてみると30代後半から40代前半が中心である。勿 論費用は企業負担だが長引く不況のためにどこの企業でも社員研修費は容赦なく削減され ており、影響が本部にも及んでいる。

 私の勤務時間は原則17:30までで何もない日は18:30までには帰宅するが、夜 間コースがある日には時計の針は22時をすぎている。

 夜間コースの後には決まってスタッフと渋谷のネオンで第2次夜間コースが始まる。1 1:30までみっちり中身の濃い講座だ。

 生産性本部の研修の中では「想い」について考えさせられることが多い。生産性本部の スタッフは非常に誇りを持って業務に励んでいる。自分達は「産業教育」のために貢献し ているという「想い」がただ座っている私にも感じられる。特に第2次夜間講義では吹き 出すように想いを私に浴びせかける。その様な時は私は痛烈に胸の中に大きな穴があいて いるような想いがする。「なぜ私はベンチャー支援をやりたいのか」「生産性本部で何を 学ぶのか」説明できないからだ。「想い」が弱いため、それと「想い」が整理できていな いからだと、よくスタッフから指摘される。。そのため自分自身で「想い」を「腹に落と す」こともできない。当然人に説明することもできない。もどかしいかぎりであり、今の 私は武器を持たずに戦場に迷い込んだ兵士の心境とでも言ったらいいだろうか。

正直いって悩ましい限りだが、留まっている訳には行かない。「志」を立てて、松下幸 之助塾主の門下に入った以上、一歩でも前進して「志」が実現できるような自己に成長し て行かなければならない。

 先日日通工株式会社の江頭年男社長の話を聞く機会があった。NECの副社長を勤めあ げ、長年労働省の審議委員をしていた方だ。企業の人事担当者を対象にした「人事労務コ ース」で「これからの企業経営と人事労務」をテーマに講義をしていた。「これからの企 業には倫理が必要」「納得性のある人事評価が必要になってくるが、そのためには報告能 力が人事考査で重要になる」などの話をされていたが、最後に社員教育の話の中で「AB C」なる3文字を突然黒板に書かれた。その意味は「あたりまえのことを、ばかみたいに 、ちゃんとやる」。ところが実際にはとても難しいそうだ。

 私の「想い」は未だ暗闇の森に潜んでいる。気はあせるばかりだが、まずは自分の足元 から日々できることを積み上げ、「ABC」を毎日実践できるように励みたい。

Back

豊島成彦の論考

Thesis

Naruhiko Toyoshima

豊島成彦

第16期

豊島 成彦

とよしま・なるひこ

公認会計士・税理士

Mission

リーダーのための公会計

プロフィールを見る
松下政経塾とは
About
松下政経塾とは、松下幸之助が設立した、
未来のリーダーを育成する公益財団法人です。
View More
塾生募集
Application
松下政経塾は、志を持つ未来のリーダーに
広く門戸を開いています。
View More
門