論考

Thesis

「言力」養成ソフト

「暗黙の了解」、「以心伝心」。日本人の意思伝達方法を表したこんな言葉が21世紀には消えてなくなるかもしれない。急速に進むグローバル化、IT技術の発達が、「沈黙」を許さなくなっているからだ。このような状況を憂い、日本人の発言技能を向上させようと教育ソフトの開発に取り組んでいる小沢一彦塾員(桜美林短期大学助教授・第3期生)にその活動を語ってもらった。

▲一つの論題を巡って、賛成・反対、熱の入った討論が展開された

 去る9月2、3日の両日、来年4月に刊行予定の国際関係論の教科書収録用「モデル・ディベート大会」を、松下政経塾の講堂を借りて開催した。
 今回が初めての、しかも非公開の試みであったにもかかわらず、ディベーターとして塾内外から20名を超す方々が参加してくれた。
 論題は、国連安保理常任理事国への参加、PKF参加凍結解除、アジア版IMF創設、遺伝子組み替え食品(GMO)の禁止、炭素税導入、それにTMDへの参加中止の是非、の六つ。当日は、プロの社会人ディベーターの名人芸を含め、白熱した対論が繰り広げられた。

 このディベート大会は、21世紀のグローバル化、IT革命に対応した新しいタイプの教育ソフトをつくるための一環として企画した。国際社会で日夜繰り広げられる政治経済現象を、ディベートという手法でよりダイナミックに学生や社会人に解説したいと考えたからである。

 21世紀は「言力」政治(ソフト・パワー)の時代とも言われ、国際教養はもちろん、英語をはじめとした語学力、コンピューター等情報ツール操作力、そして理性的な議論によって相手を説得してゆく技術が不可欠とされる。世界標準づくりや国際レジーム形成過程、貿易通商交渉など、あらゆる国際関係の諸側面で、自己の立場を積極的に主張する能力が問われる。
 「沈黙は金なり」の「口ベタ」な日本人を大改造し、良い意味で自己主張の強い「新日本人」を大量に養成する必要に迫られている。国際競争力の高い魅力的な日本人を少しでも多く輩出することに、この教育ソフトが少しでもお役に立てれば幸いである。

 ただし、ディベート大会や教科書作成は、事の始まりに過ぎない。戦略目標は、塾出身の政治家や経営者志望者による集まり同様、政策や学術研究志望の塾出身者を中心とした、ゆるやかな水平型のネットワークづくりにある。21世紀型の「バーチャル・シンクネット」づくりへ、塾OB、読者のみなさんの積極的な参加とご助言、ご批判を切に希望する。

<今回のディベートの様子を載せた『ディベートで学ぶ国際関係』(玉川大学出版部)は来春出版予定>

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小沢一彦の論考

Thesis

Kazuhiko Ozawa

松下政経塾 本館

第3期

小沢 一彦

おざわ・かずひこ

Mission

比較政治体制論 国際関係論 日本政治 政策研究

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