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100km行軍 感想

 100km行軍は松下政経塾が設立以来、今もなお続いている研修として、多くの塾生から恐れられている。そして100km完歩してこそ政経塾生として認められるとも聞いていた。なぜ様々な研修がある中でこの100km行軍が残り、伝統となっているのかが非常に興味があった。

 100km行軍の発案者でもある日本体育大学の平野 仁教授から100km行軍に込められた意図を聞いた際に強く印象に残っている言葉があった。それは「困難な時に、人がどのようにその状況に対処するのか。その時に人の真価が問われる。そして辛い時こそ笑顔のできる人であれ。」という言葉である。私自身振り返ってみても自分の壁となることにぶつかった時に、とかく視野が狭くなることがよくある。そんな時は心に余裕がほしいものだと常々思う。この研修を通じて本来の自分はどんなやつなのか、困難に遭った時の自分との出会いを楽しみに研修の日を迎えた。

 当日はあいにくの雨。少し肌寒く先行きに若干の不安がよぎる。私の班は吉田さん、上里さんと私の3人であった。吉田さんは今年で2度目の挑戦で、昨年のリベンジということもあって気迫を心に押しこめているようだった。上里さんは隊長として班の心の柱として我々に安心を与えてくれていた。私は2人の後ろを歩きながら、無事明日の朝までに塾に帰ってくることを祈っていた。今日を迎えるまでに私達は何度か練習を重ねてきた。コースの確認のために車で視察にも行った。その時には三崎ですし屋に立ち寄ったり、江ノ島で海鮮料理屋で一杯契機づけをしたものだった。そんな準備の中に新しい人間関係をつくる楽しみを感じていた。塾に移り住み7ヶ月になるが、歩くことで初めて気づく街の姿があった。いつもなら何気なく通りすぎていく道と改めて会話をしているようだった。素敵なお店の数々、湘南の自然の美しさ、道沿いの町並み、道の形状など。感覚を尖らせながら歩いてみるのもいいものだった。

 歩き始めて50km超えると時間は夜の10時だっただろうか。体も冷え、足も鈍くなってきた。小さな道の段差や、海から突き上げる夜風が身にしみてきた。調度、三浦海岸から三崎へと通じる山道は無言の歩みが続いた。この時が一番辛かった。休憩地点で応援に駆けつけてくださる先輩方の励ましに元気を与えていただいた。幸い我が班は常に前向きな言葉しか発していなかったように思う。疲れているときにマイナスの言葉を口にすると本当にだめになってしまうのを感じていた。口からゴールへ向かう前向きな言葉を自分たちに与えることが体を前に動かすのを身をもって感じた。我が班のキーワードは「笑顔!」「イーブンペース!」「カレーライス!」であった。そういって歌にしながら笑って歩いた。なぜカレーライスかというと安藤さんのカレーライスと豚汁が塾で待っているからだ。もちろん笑っていると元気がでた。これが余裕を与えてくれた。その時点で私達は続いてくる班に20分の差をつけてゴールに向かっていた。朝焼けがまぶしい江ノ島の海岸線を歩いているとなんだか胸がジーンとしてきた。帰ってきた!日本シリーズ優勝直前の巨人の阿部捕手のように涙が目に浮かぶ。湘南の自然に、応援してくれる先輩の皆さんに、塾の職員の方々に感謝の気持ちがこみ上げてきて、塾でゴールした時には清清しい気持ちで心が満たされていた。

 一晩歩き続けて大地の偉大さを五感で感じた。人の営みは時代と共に発展してきた。自動車社会の今、いたるとこに自動車、電車、バスが走っている。とても便利だ。しかし一晩中歩くうちに便利さにない自然や人のもつ豊さを感じることができたように思う。時には非合理的に生活するそんなスローな時間を自ら楽しみたいものだと思った。

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畠中克賢の活動報告

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Katsuyoshi Hatanaka

松下政経塾 本館

第23期

畠中 克賢

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