研修活動塾生による、現在までの研修活動を一部ご紹介いたします。

2018年 10月

研修活動3・4年目 平和を維持することとは何かを考える ~現地から見た“スウェーデンの国のかたち”を通じて~

小甲顕史/松下政経塾第37期生

平和を維持することとは何かを考える ~現地から見た“スウェーデンの国のかたち”を通じて~[1] 平和を維持することとは何かを考える ~現地から見た“スウェーデンの国のかたち”を通じて~[1] 平和を維持することとは何かを考える ~現地から見た“スウェーデンの国のかたち”を通じて~[1]
スウェーデンと聞くと『高福祉』や『ノーベル賞』などがイメージされ、平和かつ安全な国家を連想することが多いと思います。一方で、スウェーデンは戦闘機や潜水艦といった強力な武器を自国の産業のみで生産出来る、軍事的にも発達した国です。今回、そのスウェーデン現地から考えた国の平和について報告させて頂きます。
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スウェーデンは、北欧に位置する人口約1000万人の立憲君主国であり、本年2018年に日本との国交樹立150周年を迎えます。
同国の政策は様々な分野で特徴がありますが、外交・安全保障政策について、以下の2点に特に関心が持たれます。
 •軍事面ではNATOに非加盟でありながら北欧諸国による安全保障協力体制 (NORDEFCO : Nordic Defense Cooperation)を構築しています。
 •米国との2国間の防衛関係の促進を模索するほか、徴兵制を復活させています。
 
この様な特徴ある軍事政策を講じるに至った要因は、ソ連やナチス・ドイツからの侵略の危機を経ていることや、戦訓の研究(原子爆弾が持つ戦略的、戦術的な意味など。事実、第2次世界大戦後にスウェーデンは核武装を企図した開発をしていた時期があります)を怠らないことにあると思われます。軍事大国が多く存在するヨーロッパにおいて、自国の平和と独立を保つための努力の形跡が、今回のスウェーデンの訪問にて多く垣間見られました。
例えば、スウェーデンの国土は非常に地盤が堅いため、それらを活用すれば天然の要塞を築けるといえます。実際には、岩盤を掘り抜いた防空壕が高速道路沿いなどに多く見られました。また、テロや戦争が発生したときの対処要領などについての小冊子が全ての家庭に配布されているそうです。これらは、いざという時にスウェーデンの地の利を活用することや、国民全体で国防に当たる意志の現れといえます。
 
また、今回の研修期間の9月9日においてスウェーデン国政選挙が行われ、その候補者へのヒアリングの機会がありました。その中で、安全保障面に関しては、与野党ともに国防費を増加させる点で一致しているとの話を伺いました。このことは、国会内においても、国防に関する基本方針は一貫して自国防衛の重要性を認識していることの証左でもあります。
勿論、強力な武器を保有していることや、諸外国との強固な同盟保持していることは国防にあたり重要な意味を持ちます。スウェーデン政府はその事を認識して、戦闘機などの自国生産主義を採用したと言われています。彼らはそれに加え、国民の国防意識を向上させることの重要性をも深く考え、テロ対処に関する小冊子の配布など、各種の取組に邁進していると考えられます。
 
以上の事を実地に見聞して、スウェーデンの外交安保政策は、我が国も学ぶことが多いと思いました。一方で地理的、国の規模を考えて日本流の政策にアレンジして行く必要もあります。例えば、緊急時(テロなどの発生時)における対応ですが、人口(年齢構成、世帯数なども含む)や地域の事情(地形、交通状況、予算規模など)が自治体によって大きく異なることが多く、国が対処方針を示したとしても、自治体レベルでの具体的な対処要領を策定しておく必要があります。
地域によって大きく異なる人口や面積など、日本の国家規模を考えると、国家の任務である安全保障に関わる各種施策についても、政府と基礎自治体の連携も不可欠と考えられます。さらに言えば基礎自治体に関しても、今後の我が国の安全保障政策の一翼を担うことが、より強固な国防体制を作ることの要訣と考えます。
複雑化・高度化する日本周辺の安全保障環境を考えると、都道府県・市町村自治体の議会・執行部においても、国防の任務に当たる局面が発生することは否定し得ません。
 
今後の研修においては、国防を考える場合に地域の視点を持ちつつ、しっかりと現場に入り実現性と実効性のある活動・提言を目指して参りたいと思います。

2018年 8月

研修活動3・4年目 ラオス女性の自立支援に向けて

福井里佳/松下政経塾第37期生

ラオス女性の自立支援に向けて[1] ラオス女性の自立支援に向けて[1]
岐阜県可児市出身。一橋大学社会学部卒業後、三井住友信託銀行に入行。世界中の女性が等しく能力を発揮し活かせる社会、異なる文化・価値観を持つ人々が共存、共栄できる平和で豊かな社会の実現を目指すべく入塾を決意。現在は、Support for Women's Happinessで事務局長を務めながら、ラオスの女性達の自立支援に取り組む。
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私が実践課程で現在取り組んでいるテーマは、「女性の自立支援」である。世界人口の半数を占め、全労働時間の3分の2に貢献し、そして世界中のほとんどの子供を育てているのは女性である。女性の多くは、家庭の中で家事労働を担い、人類史の中で多大なる貢献をしてきた。しかし、女性達が社会の中で与えられる権利は、男性と平等でないことが多い。女性だからという理由で、学校に通わせてもらえない、低年齢で結婚をさせられるなど、自分の意志で自分の道を歩んでいくための基盤が足りない。私はその中でも最も困難な状況に置かれた女性達(障がい、少数民族、性被害、貧困など)がその状況から抜け出し、自立して生きていくためには何が必要なのか、現地現場で体得していきたいと思う。
 
私は今年の4月からご縁により「Support for Women's Happiness」という、ラオスの女性達の自立支援を行う団体の事務局長に就任することになった。
ラオスは、ASEAN加盟10カ国中唯一の内陸国であり、面積は日本の約63%に相当する。国土の約70%は高原や山岳地帯であり、北は中国、東はベトナム、南はカンボジア、タイ、西はミャンマーと国境を接する。ラオスは間違いなくアジア最貧国である。というのも、内陸国であるため、港がなく、輸出用の製品を作る外資系企業に中々入ってきてもらうことができなかった。また約70%は高原や山岳地帯であるため、平地が少なく工業地帯に不向きなこともあげられる。さらに、表向きは市場経済に移行しているものの、マルクス・レーニン主義を掲げるラオス人民革命党による社会主義国型の一党独裁制が敷かれていることから、国全体がゆったりしており、競争原理が働かない。主要産業は農業であり、人口の78%が従事しGDPの41%を占めている。IMFによると、2013年のラオスのGDPは100億ドル。一人当たりのGDPは1,475ドルであり、世界平均の15%に満たない水準である。2011年にアジア開発銀行が公表した資料によると、1日2ドル未満で暮らす貧困層は国民の60%を超える412万人と推定されている。
ラオスには、約47の民族が存在しており、一番多いのはラーオ族である。ただし、ラオス政府はラオス国籍を持つ者を一様にラオス人として定義しているため、公式には少数民族は存在しないと言われているが、現地での認識は少し異なる。(自分たちは少数民族であるという自覚を持っているものは一定数以上いると思われる。)
 
Support for Women's Happinessでは「世界の女性たちが、自分らしく自分の人生を生きる事」をビジョンに掲げ、必要な自立支援や職業訓練支援を行っている。
私たちが現在運営している工房では、障がい者の女性が大半を占める。他にはモン族やカム族などの民族の方、貧困状態に置かれた女性達だ。ラオスではまだポリオが撲滅されておらず、小さい頃にポリオに感染したことが原因で手足が不自由になってしまった方がたくさんいる。国が貧しい場合、そういった身体障がいをもった方は国からのサポートはほとんど受けることができない。ラオスにはいくつか障がい者センターがあり、そこに入って訓練はできてもセンターを出た後の就職口がなく、貧困状態に陥ってしまう。
 
私達はそういった方を対象に雇用して、工房で手毬アクセサリーを作る挑戦を始めた。私たちが手毬に出会ったきっかけは、東北を盛り上げるために活動している人達であった。日本各地に残る手毬文化だが、東北にも素晴らしい手毬文化が残っている。手毬の歴史は古く、最初は蹴鞠として中国から日本に伝わり、それが上流階級のお姫様の装飾品として、日本独自の文化となって継承されてきた。一針一針丁寧に、時間をかけて縫われた手毬の美しさは見る人を魅了する。機械では作れない手毬は高度な縫いの技術が必要とされる。刺繍文化が今も色濃く残るラオスで女性達に手毬を作ってもらうことを試してみてはどうか?という案が持ち上がったのが始まりだ。(特にモン族に伝わる刺繍は世界レベルの高い技術である)
私はまず自分が手毬を作れるように技術を磨いた。その後、ラオスに入り、手毬の作成指導を開始した。
 
ラオスでは、何度も試行錯誤し、努力を重ねたおかげで徐々にだが、日本のクオリティーと変わらない品質のものを作成できるようになってきた。仕事がなく、収入がなかった彼女たちが物づくりを通して、自信をつけていく様子を肌で感じ取ることができた。
 
また、ラオスで作られた手毬をアクセサリーに加工して、日本の学園祭で販売した風景の写真を見せた時のみんなの笑顔が忘れられない。本当にキラキラとした笑顔だった。
自分たちが作った「手毬」を買ってくれる人がいるということ。そしてその生産によって収入を得られるということが、彼女たちの喜びと自信に繋がっている。
私は今後物づくりだけではなく、彼女たちの今後の将来設計を一緒に考えたり、別の職業につくなどのステップアップができるような体制を整えていきたいと思っている。

2018年 7月

研修活動3・4年目 地域の志、継承するのは私たちの世代

土屋正順/松下政経塾第36期生

地域の志、継承するのは私たちの世代[1] 地域の志、継承するのは私たちの世代[1]
あらゆる分野において、日々、世代交代や技術の継承が行われている。地域で志ある方の活動はどのようにして引き継がれるべきか。実践活動を通じて感じた切実な課題と、それに対する私の想いを記したい。
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人口50万人弱、東京に隣接する千葉県・市川市は都内への通勤率が高い典型的なベッドタウンだ。市民は大きく分けると二層構造になっている。昔ながらの住民と、通勤のために流出入を繰り返す新住民。新しい住民の多くは、都内へのアクセスが良いこと、娯楽や買い物にほとんど不便することがないこと、治安も良く、都心と比べれば土地や家賃が少し下がるなどといった環境や条件もあり、市内で生活することを決める人が多い。
 
古くから市内で暮らす高木彬夫さんに出会ったのは2年前の冬であった。高木さんがNPO法人まちづくり家づくりcaféを起ち上げたのは、今から約10年前のこと。景観法が施行され、建築家として活躍する高木さんは、市川市から景観条例策定委員の依頼を受けた。それが高木さんにとって、市民として街づくりへの行動を起こす発火点になった。
 
当時について、高木さんが私に想いを伝えてくださった。「景観条例は、規制によって街の景観を守ろうという性質のもの。それはそれで大切なこと。でも、私がその時に必要だと痛感したことは、規制を決めるだけではなくて、日常生活を市内で営む一般的な市民が自由に参加できるまちづくりでした。自分が憧れるまちを創りたいという人もいれば、個人的な思い出が詰まった近所の大切な景色を残していきたいと感じている人もたくさんいる。古くから市民が大切にしてきた歴史や伝統が詰まった風景も、誰かが継承しないといけないのではないか。そのためには、市民それぞれに街への想いを持ってもらい、意識してもらい続けること。大切なのは、住民の私たちがどのような街にしたいのか、という意志を持つことです。住民の方にこういうことを意識してもらい、まちづくりに参加してもらおうと思ったら、制約のある行政では、できることに限界がある。それならば個人で取り組んでいったほうが、自由な発想を活かしながら継続してできることが沢山ある。そう考えてNPOを創りました。」
 
奮闘すること約10年。少しずつ会員の数も増え、定期的に開催する街歩きイベントには多くの市民が集まるようになった。市民が街を歩きながら、クロマツをはじめ、市川市の歴史や文化を象徴する建物や景観を眺めては意見や感想を交換する。街歩きをした有志で、市川市内の魅力を記したガイドマップも作成した。私も活動に参加するようになってから、市内のイベント会場などでガイドマップを配布してみると、市川市に引っ越してきた新住民の方々が興味を持って次々に受け取っていく。そのガイドマップには、高木さんをはじめとする古くからの市民と新しい市民、双方の価値観と個性が融合するかたちで「ここが市川の良いところ」という意志が詰まっている。
 
とはいえ、こうした活動も、ひとつの分岐点に差し掛かっている。高木さんには心配していることがある。「こういう想い、活動を継承することも大切な仕事だと感じることが増えた」と言うのである。活動当初は、同志のメンバーも、想いひとつで元気にやってきた。けれども、寄る年波には勝てない。体力や健康上の理由で、思うほど活動できなくなくなってきているのだという。私自身も、高木さんのNPOをはじめ、他の市内の有志団体が出展する地域の環境イベントに参加する機会があった。そこで感じたのは、メンバーの方々の高齢化であった。一つひとつのブースを眺めていると、高木さん同様に、想いひとつで活動をされてきた有志の方々の歴史と奮闘が垣間見えてくる。ただ、各ブースを眺めてみた時、若い世代の参加が極端に少ないことを感じた。古くからの住民の方々の想いによって、新しく市川市で暮らす世代へのアプローチまでは広がりを見せ始めている。しかし、本当の課題は、こうした志を継承して主体的に取り組む人材をどうするのか、という点にある。雇用が流動化し、共働き世代が増えている今、忙しい若い世代に無理矢理にお願いするわけにもいかない。彼らは彼らで、押し寄せる時代の波と奮闘しているのである。
 
私は、そのような今だからこそ、こうした地域の志を引き継いでいきたいと思うのである。今年度のまちづくりcaféの活動では、市内のまち歩きイベントをはじめ、市立図書館でのまちの風景写真の展示会、環境フェアにおける街づくりへの市民参加を呼び掛ける広報活動に取り組んできた。今後は、これらに加えて、まちづくりに関する市民向けのセミナーを市内にて定期開催する予定だ。私は、この活動で汗をかきながら大いに学びながらも、わが街、市川の個性と、住民が本当に望む街の姿を現実にしていきたいと思っている。
 
地域の志を継承するのは誰なのか。それは私だ、という気概を私自身が持つと同時に、同じ想いを持ってくれる人を一人でも多く募っていくため、今後も継続して日々、奮闘してきたい。
 
研修活動3・4年目 ネオパークオキナワ(名護自然動植物公園)再建にかける想い

比嘉啓登/松下政経塾第37期生

ネオパークオキナワ(名護自然動植物公園)再建にかける想い[1] ネオパークオキナワ(名護自然動植物公園)再建にかける想い[1]
沖縄県出身。首都大学東京大学院 都市環境科学研究科修了後、三井物産株式会社に入社。アジア諸国向け鉄道インフラ建設プロジェクト等に従事。2018年6月より沖縄県名護市にある観光施設 ネオパークオキナワ(名護自然動植物公園)の経営企画部長として、衰退が進む施設の再建に取り組む。
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沖縄は1972年の本土復帰以降、沖縄振興開発措置法に基づいて「本土との格差是正と自立発展の基礎条件の整備」を掲げた施策がなされ、46年で10兆円超の振興開発事業費が投入されてきました。
 
振興開発事業費は道路、空港、ダムなど社会インフラ整備に投じられ沖縄は着実に発展してきたものの、補助金への過度な依存により県の経済的自立には未だ結びついていないという意見もあります。
 
沖縄県の一人当たり県民所得は216.6万円で、国民所得305.9万円と比べても非常に低く、有業者のうち5人に1人は100万円未満、2人に1人は200万円に満たない状態にあります。非正規雇用率は40.4%と全国最高値。子供の貧困率は29.9%と全国平均(16.3%)の2倍と次の世代にも貧困が引き継がれる悪循環を生み出しています。
 
経済的自立を果たし、貧困課題を根本的に解決するには、①一人当たり生産性が飛躍的に向上し、②生産性向上により企業収益が増加し、③増加した企業収益が労働者に適切分配される、というサイクルを繰り返していくしかありません。沖縄には、土地・資本そして労働といった生産要素を生かしきるための“経営”が今以上に必要になると痛感しています。
 
実践課程においては、現在の筆頭株主であるタピック沖縄より御縁を頂いてネオパークオキナワの経営企画部長として再建に取り組んでいます。
 
ネオパークは1987年に開園して以来、県内外に愛される動植物園として運営されてきました。しかしながら31年の間には閉園や経営難の憂き目にあい、その度に政府・市の資本投入を受けて再建が繰り返され、現在においても入園者数は最盛期の二分の一に留まっています。
 
6月から約2か月間は現場に足を運びながら、長年園を支えてきたスタッフ、行政の方々、民間パートナーなどにコンタクトして参りました。順風満帆とは言えない財務状況、従業員の士気低下、園内の清掃不全・老朽化など、多くの課題を目の当たりにしました。
 
急激・短期的な変化よりも中長期を見据えた地道な活動が実を結ぶと確信し、日々スタッフと共に園内掃除や士気を高めるための朝礼を実施しています。幸いスタッフや倫理法人会様、著名な写真家、県内随一のWebマーケティング会社など、多くの方からお力をお貸し頂いています。
 
直近では、事業計画についても方向性がまとまり組織として大きな目標に向かって取組みが加速しています。
 
今後も現場での活動を基軸に沖縄の経済的発展の一助となれるよう、取り組んで参ります。

※ネオパークオキナワ https://www.neopark.co.jp/

2018年 5月

研修活動3・4年目 同盟国視点で眺める日米同盟と、日本の立ち位置(2)

深作光輝ヘスス/松下政経塾第36期生

同盟国視点で眺める日米同盟と、日本の立ち位置(2)[1] 同盟国視点で眺める日米同盟と、日本の立ち位置(2)[1] 同盟国視点で眺める日米同盟と、日本の立ち位置(2)[1]
本年8月までアメリカ、ワシントンDC連邦議会で下院議員の政策担当フェローとして研修しておりました。以前当地日本国大使館勤務時とは違う視点で日本を眺め、今後何に取り組んでいくべきか学ぶ貴重な機会となりました。
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私は本年8月までハワイ選出のトゥルシー・ギャバード下院議員(D-HI02)の事務所で主にアジア・太平洋地域の外交政策担当フェローとして研修しておりました。任期中は北朝鮮を筆頭に北東アジアの緊張が高まり、多くの案件がデスクに運ばれてきした。またアジアのみならずアフリカの人権問題に対する非難決議に議員が署名すべきか、その背景を調査し提言することも多くありました。
 
下院ではおよそ一人の議員に対し10名のスタッフが軍事・外交から環境、教育、農業、金融など幅広い国内課題全てをカバーしています。各人専門は分野はあるもののそれ以外の分野での業務も多く、日々勉強しながら案件を進めています。そのため、事務所内だけでなく外部に多くのコネクションを作り、何かわからないことがあれば直接専門家に聞くことも多く、スタッフはシンクタンクや各国大使館などとの関係構築を重要視しています。
他方で、議会でよく名前を聞く国(地域)は、米国にとって脅威となり得る国がほとんどで、幸か不幸か日本が取り上げられることはとても少ないのが現状です。 米国の外交戦略上日本が大事であることは多くのスタッフが共有しているところでありながらも、優先順位の高い位置に上がってこないという事実を世界の政治首都とも呼ばれるワシントンDCで強く感じました。私自身日本人として議会に勤務している以上、少しでも多くの議会関係者の目を日本に向けて欲しいと考え、大使館・JAXAと連携し大西宇宙飛行士に議会でご講演いただく機会を作りました。
 
昨今アメリカでは、トランプ政権が正式に「宇宙軍」創立を指示するなど、宇宙における外交・安全保障戦略に対する議論が盛り上がっています。今後国際社会が直面する新たな宇宙の秩序に対し日本がどのような貢献をしようとしているのか、日米の連携がいかに米国の宇宙政策に影響をもたらしているのかということを実際に国際宇宙ステーションに滞在された大西飛行士から米国議会スタッフにご講演いただきました。
 
また当日には、宇宙関連の法案を多く提出し、選挙区内にロケット打ち上げ施設を持つポージー議員にも面会もしていただきました。米国が今改めて月を、さらには火星を目指そうと宇宙に対する注目が高まる中、日本の役割について多くのスタッフ、そして議員に対して直接訴えかけることができたと感じています。 どのような形であれ議会のスタッフや議員に対し日本についての理解を深め、少しでも関心を持ってもらえる仕掛けづくりが重要かつ喫緊の課題となっていると感じています。
研修活動3・4年目 国の安全、国民の安心を守ることについて ~北海道松前町・松前小島における北朝鮮船乗組員による不法入国、窃盗事件を通じて~

小甲顕史/松下政経塾第37期生

国の安全、国民の安心を守ることについて ~北海道松前町・松前小島における北朝鮮船乗組員による不法入国、窃盗事件を通じて~[1] 国の安全、国民の安心を守ることについて ~北海道松前町・松前小島における北朝鮮船乗組員による不法入国、窃盗事件を通じて~[1] 国の安全、国民の安心を守ることについて ~北海道松前町・松前小島における北朝鮮船乗組員による不法入国、窃盗事件を通じて~[1]
私は『安全保障』及び『国民保護』をテーマに活動しています。国土、国民の安全に関わる直近の事件として、2017年11月の「北海道松前町・松前小島での北朝鮮船乗組員による、不法入国、窃盗事件」が挙げられます。今回、松前町を訪問し石山英雄町長、国民保護担当部課の方々から伺ったことなどについて述べたいと思います。
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最近では、南北首脳会談や米朝首脳会談など、金正恩氏を中心とした新聞記事やニュースなどをほぼ毎日目にします。北朝鮮に関しては、トランプ大統領との歴史的な会談はもとより、核兵器・ミサイル・特殊部隊などの脅威が注目されていますが、それ以外にも我が国は「不法入国、窃盗」により現実に国土や財産を侵害されていることも事実です。こうした脅威から国土、国民を保護するのは、自衛隊のみならず自治体の責務でもあります。
 
今回、2017年11月に北海道松前町で発生した北朝鮮船乗組員による不法入国、窃盗事件に関して、石山英雄松前町長及び松前町役場の方々からお話しを伺う機会を頂きました。
この事件は、北海道本島から約20kmの距離にある松前小島に北朝鮮船が漂着、上陸した後に島の施設の破壊、発電機の窃盗をはたらいたものです。乗組員らは逮捕され、船長に関しては起訴及び有罪が確定しました。事件当時は、北朝鮮が日本海に頻繁に弾道ミサイルを発射していることもあり、全国に大きく報道されました。北海道・松前町は渡島半島の先端に位置し、道内最南端の自治体です。その位置関係から、江戸時代では北海道に唯一の藩である「松前藩」が配置されていました。また、冷戦期から今日に至るまで津軽海峡の警備の要衝であり、海上自衛隊の警備所が配置されています。
 
松前町では、ミサイル情報・津波警報などの緊急警報(Jアラート)を伝達する訓練を実施するほか、大津波からの避難を目的とした、防災総合訓練を実施しています。
 
しかしながら、今回の事件は、本土から離れた離島の松前小島にて発生した不法入国・窃盗事案であり、実際には被害を認知することも簡単ではない印象を受けました。沖縄県・尖閣諸島などに比べ、海保や海自の巡視艇や哨戒機などによる警戒監視の程度が低いことを、北朝鮮としての国家の意志がどこまで介在するか必ずしも明らかではありませんが、彼らは突いたものと思われます。
また、松前小島には、漁船の操業に必要な施設・灯台が設置されており、日本の漁船や船の乗組員も寄港・上陸します。本件では、日本人の人的被害はありませんでしたが、万が一不法入国者と遭遇してしまった場合には、重大な事件に発展していた可能性も捨てきれません。
さらに言えば、津軽海峡の日本海側の玄関口である松前は、北朝鮮のみならず、中国・ロシアとも相対する場所です。その地理的重要性は、冷戦期にも増して向上していると考えられます。この様な状況を考えると、警戒監視の強化や、警備の増強といった物理的な強化が必要な段階に来ていると思われます。
 
あらゆる事態を想定し、国民・国土を守ることは、国家・自治体の責務といえますが、実際には予算的、人員的に困難が伴うことも事実です。日本を取り巻く外交軍事情勢の変化は、今日では加速度的であり、国家・自治体の果たすべき任務について、さらなる増大が予想されることは、疑う余地はありません。松前町をはじめ、これまでの実践活動において、多くの自治体・行政組織(防衛省など)が、そうした急変する情勢の対応に直面していることをよく伺います。
 
ドラスティックに変化する情勢には、ドラスティックに対応することが必要と思われます。一方で、いかなる情勢においても、国・自治体の『国民・国土を守る』といった責務は不変であり、その具体的な手段は情勢に即して、時々刻々に対応することが求められてきます。引き続き今後の研修にて、その方策を見出すことに努め、実践に移して参りたいと思います。
 
今回の研修におきまして、石山英雄町長、松前町役場の方々に大変お世話になりました。厚く御礼申し上げます。
研修活動3・4年目 地域におけるボランティア活動の心得

土屋正順/松下政経塾第36期生

地域におけるボランティア活動の心得[1] 地域におけるボランティア活動の心得[1]
会社や学校とは異なる地域という活動の場。そこには毎月の給料や勉強の成績といった評価基準はない。それは、地域における有志の活動の醍醐味の一つである。しかし、一方で、そのことが地域活動における難しい課題にもなることがある。
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 これまで私は、地域で活動するさまざまな団体に参加してきた。環境分野、教育分野、スポーツや趣味の分野から伝統行事まで、地域で活動する有志の団体は実に多様である。私自身も自分の暮らす地域の仲間たちと一緒にサークルを結成し、月に一度のイベントを主催してから5年が経過する。それもこれも学生時代に経験をした地域のボランティア活動によって、そこで得る人と人同士の縁に大きな魅力を感じてきたからだ。何より、地域での活動は、そこで暮らす人々にとって有益な機会を提供する大きな可能性を秘めている。人によっては、その活動の場が自分の特技を発見する場となり、チームの中で大きな役割を果たす場となり、人の縁を得る場となる。そこが自分と他者、自分と社会を結ぶ大切な居場所となることもある。
 
 地域活動に参加する人は十人十色だ。これまでの人生の歩み方も違えば、考え方、価値観、習慣も違う。有志の団体では、こうした違う個人同士がやりがいや楽しみといった、自分なりの参加意義を持ちながら活動することになる。自分とは違う経験を持つ人々との出会いを通じて、多様な考え方や習慣に触れることは、地域活動の醍醐味の一つだ。しかし、それゆえに、活動者同士の小さな衝突や他者の習慣にストレスを感じる人も少なくない。また、地域活動は企業の経済活動とは異なり、私的な利潤の追求や賃金を得るといったことが、参加者の活動の動機づけにならない。その点で、より参加者同士のチームワークをどのように維持していくのかが、自由意思による参加が前提の地域活動では大きな課題となることがある。せっかく活動に対して想いや楽しみを持って集った人々である。その中で不和が起こり、その集団の活動が頓挫してしまうということは無いほうが良いに決まっている。
 例えば、メンバー同士の連絡手段ひとつをとっても、新しいものに好奇心が強い人からは最新のアプリを使用したらどうか、という提案が出る。ところが、新しいものは苦手という人も出てくる。セキュリティの面で心配をする人もいる。この場合、会社であれば、給料をもらっている手前もあるし、会社が指示する新しいシステムには従うべきかもしれない。企業にとっては、社内の業務連絡ひとつを取っても、生産性を意識して高めることは大切なことだ。しかし、これが地域での活動になった場合はどうであろうか。生産性や効率もある程度は重要であるが、一番大切なことは、参加する意志のある者を誰も排除しない、という考えの方が優先順位として上にくる。お年寄りから若者まで、実にさまざまな人が集うことは尊いことではあるのだが、賃金のためではなく、自由意思による人同士の営みでは、こうした小さなことでさえ慎重に対応していく必要が生じるのである。
 
 私は今、多くの方々と活動を共にする喜びと、それに感謝する毎日を送っている。その中で、自由意思による地域活動特有の難しさに直面することも多い。まずは、こうした実情に沿って一つひとつ、活動に参加する者同士で共有すること。こうした小さな摩擦を円滑に解決していく方法を参加者同士で話し合い、知恵を絞り、思いやり合うこと。こうした細かい配慮こそが、活動の中ではとても大切になってくる。時に、省きたくもなるようなことでもあるが、これが地域の自由意思に基づく活動にとって欠かせない心得の一つであり、地域の人々が生き生きと活動するためには、効率が悪くてもコツコツと人と向き合っていくことが必要だ。また、そういったことこそが地域活動を通じた人間同士の深い交流に繋がるのではないだろうか。
 社会の中で、営利を目的とした働き方には生産性を重視することが重要である。しかし、住民同士の地域活動という場では、必ずしも生産性や効率性だけが大切になるわけではない。むしろ、共同作業の過程における人間同士の交流が優先順位として上になる。そうした心得を意識しながら、今後も地域活動に率先して汗をかいていきたい。

2018年 4月

研修活動3・4年目 実践活動報告1 -ポスト復興のまちづくりとは-

小野寺栄/松下政経塾第37期生

実践活動報告1 -ポスト復興のまちづくりとは-[1] 実践活動報告1 -ポスト復興のまちづくりとは-[1]
いよいよ実践課程がスタートしました。震災から7年が経過した東北被災地においては「ポスト復興」のためのまちづくりの視点が求められています。
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 私は3.11での被災体験を契機に、将来の故郷の繁栄に貢献したいという志を抱き、松下政経塾に入塾いたしました。現在は、地元である宮城県気仙沼市における課題と展望を自ら掴むために有識者へのヒアリング等に加え、被災地の産業現場における実地調査などといった研修を行っています。
 
 国内外からの多大なるご支援により、震災から7度目の春を迎える被災地では確実に復興の足音が聞こえはじめています。各市町村によって進捗に差があることは確かですが、とりわけハード面に関しては復旧整備が進んでいます。2018年2月末時点で災害公営住宅については全体の96%が、高台移転については91%が完了しました。
 
 一方で、現地現場では「被災地」というより「地方」ならではの問題が噴出していることも確かです。震災以前から少子高齢化や産業衰退といった社会課題が先行していた被災地では仮設住宅における高齢者の認知症の進行や孤独死の増加、産業の後継者不足や雇用のミスマッチによる若者の人口流出など、まさに日本の縮図のような問題が山積しています。
 加えて、復興の長期化がそれらの現象に拍車をかけ、地域の活力を奪っていることも否定できません。防潮堤や災害公営住宅、架橋、高速道路などといった震災前にはなかった立派な公共財が多数作られているものの、将来はそれらを使う住民が大幅に減少し、維持管理コストの負担が莫大になるという議論もあります。少子高齢化→地域経済の停滞→人口流出・・・といったいわゆる「ジャパン・シンドローム」が被災地においては顕著であり、ポスト復興を見据えたまちづくりにおいてはこの負のスパイラルを打開する視点が必要と言えます。
 
 引き続き、塾生として「着眼大局、着手小局」の視点を見失うことなく地域内のみならず幅広く先進的学びや実践の場を求めていきたいと思いますので、皆様のご指導ご鞭撻のほど引き続きよろしくお願い致します。
研修活動3・4年目 同盟国視点で眺める日米同盟と、日本の立ち位置(1)

深作光輝ヘスス/松下政経塾第36期生

同盟国視点で眺める日米同盟と、日本の立ち位置(1)[1] 同盟国視点で眺める日米同盟と、日本の立ち位置(1)[1]
私は現在米国、ワシントンDCの議会で政策担当フェローとして議員事務所で研修しています。2009年から3年間在外公館派遣員として在米日本国大使館で勤務し、その時の体験がきっかけで志を抱き入塾いたしました。実践活動では志の原点、ワシントンで研修をしようと決意し、政経塾生という立場で6年ぶりに米国首都に戻って参りました。
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<トゥルシー・ギャバード(Tulsi Gabbard)下院議員事務所でのフェローシップ>
 
2018年2月より米日議員連盟(コーカス)、外交・軍事委員会に所属するギャバード議員(ハワイ2区選出・民主党)の事務所で外交政策担当フェローとして政策業務に従事しています。もともと国務省職員が担当していた分野をそのまま引き継ぐ形で、アジア・太平洋地域、中東情勢などをカバーし、議員の外交委員会での発言の準備・事前レク、来訪する各国大使や閣僚などの事前勉強会に加え、関連法案の事前調査と議員が法案に賛成・反対を示す上で必要な調査・情報提供等を担当しています。
当事務所では外交・軍事分野を私と他2名の軍人(海兵隊現役・海軍予備役)で担当をしており、専門性がオーバーラップする分野においては意見交換をしながら業務にあたっています。
 
こちらに来て、驚いたことは下院議員スタッフの担当する分野の広さです。一般的に下院では1人の議員に対し10名程度のスタッフが配置されていますが、他方、上院では1人の議員に対し40名程度のスタッフを抱えている事務所もあり、上院では1スタッフが専門分野を狭く深く担当するところ、下院では広くかつ深く追求することが求められます。
私自身、アジア太平洋地域の外交を担当していますが、時に国際的枠組みで取り組む環境問題や、女性活躍に関する案件がデスクに置かれ、議員に対しレクをするために丸一日かけて勉強することもしばしばです。これらの作業を通し、各分野に対する理解が深まるとともに、米国が外交の間口を広く持つことで各分野において自国のプレゼンスを国際的に高めようとしているということを強く感じます。
 
研修でワシントンに来た大きな理由は、日米関係を米国の視点で眺め、日本が米国議会の場でどのように扱われ、どのような役割を求められているのか、米国の国際戦略の中でどのように位置付けられているのかを理解するためです。
日米同盟は我が国の外交戦略の前提として当然の如く語られており、一般的に日本にとって米国が重要なパートナーであることを理解してはいるものの、なぜ米国にとって日本というパートナーが大事なのか、彼らが日本に期待をしていることは何なのか、また米国の大きな国際戦略の中でどのように日本が位置付けられているかという米国視点で理解することが同盟の価値を高めると考えます。
日米同盟が今後も我が国の繁栄の基礎として大きな役割を担うとき、米国が引き続き国際的に大きなプレゼンスを示すことは、日本の利益につながると信じています。ここワシントンで米国議会、下院議員の事務所で、米国の国益に微力ながら貢献すること、また米国視点に立ち我が国の外交戦略を考えられるようになることで日本の利益に資する人材となれるよう研修を重ねてまいります。
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