研修活動塾生による、現在までの研修活動を一部ご紹介いたします。

2018年 3月

研修活動3・4年目 実践活動報告3 -中小企業でのインターンを通して-

大久拡/松下政経塾第36期生

実践活動報告3 -中小企業でのインターンを通して-[1] 実践活動報告3 -中小企業でのインターンを通して-[1]
「働き方改革」をビジネスに繋げる現場を知ること、また中小企業における「働き方改革」の取り組みに関わることを目的として京都の中小企業にてインターンを行っている。本稿ではそのインターンで私が感じたことや得た学びについて綴らせて頂く。
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1.「働き方改革」をビジネスに繋げる難しさ
 
 現場でまず感じたことは、「働き方改革」をビジネスに繋げることの難しさだ。私が伺っている企業は文具の卸売りから事業を始め、現在はオフィスの設計・デザインから、それに合わせたオフィス家具の調達などを行っている。働く人の生産性や創造性などの競争力を高めることを目的として、オフィスリニューアル、ひいては働き方改革に関する企業の意識は高まる一方であり、その熱はインターン先の企業でも強く感じた。しかし、生産性向上や働き方改革を目的としたオフィスリニューアルの効果を、ビジネスの現場で求められる具体的な数値で伝えることは難しい。働く人の動線を分析し、オフィスに関するアンケート結果を反映して造られた新しく開放的なオフィスで働くことは、生産性や創造性の向上やコミュニケーションの活性化に効果がありそうと感覚的には思えたとしても、定量的な効果は未知数のまま残る。そのためか、興味がある顧客は多いが、ビジネスとしての取引に結び付く案件はまだ少ないという話を度々耳にすることがあった。
 
 現場で感じたビジネスの難しさは私に根本的な問いを投げかけてくれた。働き方改革とは何のために行うのだろうか。個人の幸せや企業の競争力のため、もしくはより良い社会のためとも言えるかもしれない。何より、働くことには重要な要素が二点あるとも気付かされた。企業活動と密接に結び付いている生産性と、個人の幸せに強く影響する働きがいの二点であり、両方を向上させることが働き方改革だと私は考え至った。しかし、生産性と働きがいという定量的には測りにくく、定性的には個人に依る部分が大きい、働き方改革が生み出す目に見えない価値をビジネスに繋げることの難しさを私は現場で強く感じた。
 
2.「働き方改革」を中小企業で行う難しさ
 
 伺っている中小企業で長く日々一緒に過ごさせて頂く中で感じたことは、働き方を変える取り組みは多様であると同時に、本質的な目的を達成することの難しさだ。朝会や会議の運営方法や業務の割振りの見直し、社内システムの改善など、働くことに関わる点を変えることは全て働き方改革に含まれると言える。しかし、このような多様な取り組みを継続し、一つの働き方改革として一貫した目的を達成することは困難を極めると現場で感じた。なぜなら、そもそも全社的な働き方改革のビジョンや目的が共有されていなかったり、担当者が不在だったりするために部分最適の枠を超えられないからだ。結果として、様々な改善活動に日々取り組んでいるにも関わらず、本質的な目的を達成することのない働き方改革の形骸化が多く起こり得る。このような現場での課題を今回のインターンを通して私は理解することができた。

2018年 2月

研修活動3・4年目 実践活動報告2 -「信頼から変える私たちの働き方」講演報告-

大久拡/松下政経塾第36期生

実践活動報告2 -「信頼から変える私たちの働き方」講演報告-[1] 実践活動報告2 -「信頼から変える私たちの働き方」講演報告-[1]
特定非営利活動法人Mネット様にて、個人が望む働き方を実現するためのチームの役割について講演を行った。本稿では講演の内容に加え、講演から私が得た学びや今後の展望について綴らせて頂く。
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1.「信頼から変える私たちの働き方」講演目的
 
 組織における働き方や日々の運営などの改善に取り組むにあたり、下記二点の目的を設定した。
・良い職場や望ましい働き方はそこで働く自分たちがつくるという自覚を持つ
・理想的なチームや職場の雰囲気、働き方について理解を深める
 
2.日本の働き方改革の現状と問題点
 
 講演ではまず、現在日本で取り組まれている働き方改革の現状とその問題点についてお話させて頂いた。人口減少への対応を課題として経済的観点から働き方改革を政府は推進している一方、企業は世界の市場で勝ち抜いていくための競争力や、AI時代に人間に求められる創造力の向上を働き方改革の目的としている。
 
 では、私たち働く個人が働き方改革に望むものとは何だろうか。政府や企業と異なり、私たちは働き方改革に日々楽しく働くことや、健康に働き続けること、家族を幸せにすること、理想のキャリアを歩むことなどを求めているのではないだろうか。これらの目的達成のために、働く個人は残業時間の減少や賃金の上昇を求めていると考える。つまり、働き方改革において政府や企業が目指すゴールと私たち個人の期待にはギャップがあると言えるが、三者の働き方改革への目的と期待を統合するのが日本の労働生産性の向上だと私は考える。
 
3.「信頼できるチーム」の必要性
 
 労働生産性の向上を実現し、個人や企業が望む働き方を実現するために必要になるのが「信頼できるチーム」だと私は考える。これまでの調査によれば、信頼できるチームの特徴は大きく二点挙げられる。一点目は、チームとして達成すべき目標と、それに基づく個人の責任が明確に設定されていることだ。そして二点目の信頼できるチームの特徴は、高い心理的安全性である。エイミー・エドモンドソンによる研究や、Googleによるプロジェクト・アリストテレスによって明らかになった心理的安全性は、チームメンバーがお互いの前で、リスクを取ることと弱みを見せることを安全だと感じる状態、と定義される。このような特徴を持つ信頼できるチームで働くことによって、個人は自身が望む働き方をお互いに伝え合い、チームとしての成果を犠牲にすることなくいかにそれを実現するかを話し合う土壌が生み出されると考えられる。そしてその結果として生産性の向上がもたらされるのではないだろうか。
 
 日本における働き方改革は信頼できるチームをつくり、機能させることによって、政府も企業も私たち働く個人も満足する結果を得られるのだと確信している。
 
4.講演を終えて
 
 会場の方々とのやり取りの中で、働き方改革の本質について気付かせてもらったのは私だったように思う。私が話した日本の働き方改革の背景や問題点は特別新しくもなく、その会場にいた方々にとって納得できることばかりであった。チームや職場に課題があるとはみんながわかっている。では、なぜ変わらないのか?変えられないのか?こそ誰もが疑問に思っていることであり、解決策を求めていることだと私は感じた。「課題の解決が別の問題を生み出しそう」や、「課題の解決策がそもそも見つからない」といった気持ちが、一つのチームや職場を越え日本全体にこのような閉塞的な状況を作り出しているのかもしれない。働き方の課題は解決できるし、私たちが望む働き方は実現できると前向きに信じながらも、冷静に現実の課題を捉えて解決に向かって誰もが努力することが働き方改革実現への一歩ではないだろうか。
研修活動3・4年目 実践活動報告~日本財団×ベネッセ 子どもの貧困対策プロジェクト 子ども達のわくわくが溢れる場所に(4)

山本将/松下政経塾第35期生

実践活動報告~日本財団×ベネッセ 子どもの貧困対策プロジェクト 子ども達のわくわくが溢れる場所に(4)[1] 実践活動報告~日本財団×ベネッセ 子どもの貧困対策プロジェクト 子ども達のわくわくが溢れる場所に(4)[1] 実践活動報告~日本財団×ベネッセ 子どもの貧困対策プロジェクト 子ども達のわくわくが溢れる場所に(4)[1]
私は、日本財団と(株)ベネッセの共同プロジェクトに参画し、大阪府箕面市において現場マネージャーとして活動中である。今回のレポートでは、私達の拠点で力を入れている‘わくわくたいむ’について説明する。
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わくわくする時間を毎日提供
 
 私たちの拠点では、子ども達に豊富な体験の機会を提供する、わくわくたいむという時間を設けている。みのおスタッフは、元ミュージシャンで音楽に秀でている人や、元M-1出場者で漫才が好きな人、ベトナムでの勤務経験からベトナムをこよなく愛する人など、それぞれ好きなものを持っている。
 そのようなスタッフの持ち味を活かして、子ども達の好奇心を育みたいと考えている。好きなことをしている時、人は心からわくわくしている。そして、その楽しんでいる様子は周りによく伝わる。わくわくする気持ちは人を感化する力がある。このようにわくわくたいむとは、スタッフのわくわくが子どもの伝播する時間である。
 この取り組みの目的は、子ども達が自分の好きなものを見つけることである。子ども達が好きなことに夢中になるパワーは計り知れない。大人には区別できないモンスターや妖怪のキャラクターを、子どもは簡単に覚えてしまう。そして、興味があることに取り組んでいる最中に思い通りにいかないことが出てきても、子ども達はそれを嫌なこと・困難なこととあまり思わない。むしろ、子ども達はそこに一種の楽しみを見出すのである。そして、楽しみながらのチャレンジは、やり抜く可能性が高い。このようなできた!の積み重ねは、さらなる挑戦の意欲を生むのである。
 
 以前のレポートで述べたように(実践活動報告~日本財団×ベネッセ 子どもの貧困対策プロジェクト 理念作成編 前編(2)~ 
https://www.mskj.or.jp/katsudou/?contribute_year=2017#119)この取り組みの背景には、子どもの物事に挑戦する意欲の低下がある。家庭の事情により、物事にチャレンジすることができない子ども達は少なくない。挑戦することができないということが続く場合、子ども達は何かにチャレンジしよう!という意欲をなくしてしまう。しかし、意欲はすべての源である。そのために、意欲の格差は将来のあらゆる格差を生んでしまう。
 わくわくたいむは、意欲格差をなくす取り組みである。豊富で多様な体験を子ども達に提供し、そして、その中から子ども達が好きなもの、関心があるものを見つけ、その結果、子ども達が好奇心をもってどんどん探究していく。拠点が子ども達のやってみたい!楽しい!が溢れる場所にしていきたいと考えている。
 
わくわくたいむの内容
 
「わくわく福笑い」「一眼レフ体験」「ロールキャベツづくり」
「元ミュージシャン・まいけるの打楽器ってなんだ?」
「わくわく漫才~M1王者は君だ~」「みんなで作ろう、フォンダンショコラ」
「スウェーデンのクリスマスパーティ」「心理士タバティのこころのお天気」…
 
 これは、わくわくたいむの企画一覧である。音楽、カメラ、漫才、お菓子作り、ベトナム体験と言ったように、ジャンルは多種多様である。そのため、「今日のわくわくたいむはなに~?」が、子ども達の口癖になっている。子ども達に多様な世界を見てほしい、視野を広げてほしい、そのような思いでスタッフはわくわくたいむの準備をしている。もちろん、どれだけ大人が力を入れても、子ども達に響かない時もある。また、強制ではなく任意参加の形式をとっているので、参加したくないときはそのまま自由遊びを続けてもいい仕組みを取っている。それにも関わらず、子ども達は「今日のわくわくたいむはなに~?」と毎日問いかけてくる。
 ここで一例として「一眼レフ体験」を簡単に紹介する。これは、子ども達に写真の世界の楽しさを感じてもらうために、カメラ好きなスタッフが企画したわくわくたいむである。この企画は毎回扱うテーマが異なり、例えば、明度がテーマの場合、明るさを調節しながら写真を撮影する。そして、子ども達が撮影した写真をプロジェクターで見ながら、明度の違いによる写真の違いを感じてもらう。この企画は彩度編、構図編などと複数回のシリーズものである。最終的には子ども達が写真を撮るときに、様々な点を考慮しながら写真撮影ができることを目標にしている。
 
 私たちはわくわくたいむを通じて、子ども達の生き抜く力を育みたいと考えている。生き抜く力とは、①子ども達のやってみようという気持ち、②選択肢の中から選ぶ力、③チャレンジしていることを振り返る力、④仲間と協力する力、⑤最後までやり抜く力、を総称したものである。この力こそが貧困の連鎖を断ち切る力であると私たちは考えている。引き続き、子ども達の生き抜く力を育んでいきたい。
 
今後の取り組みについて
 
 これまで説明させて頂いたように、現在のわくわくたいむは、スタッフのわくわくを子ども達に伝える時間である。スタッフがわくわくたいむを企画し、必要なものを準備し、子ども達に提供するという流れになっている。しかし、今後はこれに加えて、子ども達自身がやりたいというものを探求できる時間にもしていきたい。これはプロジェクト型学習と呼ばれているものであり、私たちの拠点ではわくわくプロジェクトと呼んでいる。そして、このプロジェクトの成果を保護者に見てもらうイベントを現在企画中である。この発表の日に向けて、子ども達一人ひとりが料理やお菓子作り、楽器の演奏などを日々練習している。もちろん保護者には発表内容は内緒である。どのような会になるのか、また、プロジェクト後の子ども達の表情を、私たちは今から楽しみにしている。これからも、子ども達に豊富な体験を提供しながら、自分の好きなものを探求できるわくわくたいむを提供していきたい。

2018年 1月

研修活動3・4年目 実践活動報告~日本財団×ベネッセ子どもの貧困対策プロジェクト 理念作成編 後編(3)~

山本将/松下政経塾第35期生

実践活動報告~日本財団×ベネッセ子どもの貧困対策プロジェクト 理念作成編 後編(3)~[1]
私は大阪府箕面市において日本財団×ベネッセのプロジェクトに参画し、現場マネージャーとして活動している。本レポートでは、みのお拠点の理念、特に運営趣意書について説明する。そしてレポートの最後に、理念と共にプロジェクトを進めていく決意を述べる。
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 私たちの理念は次の5つである。外部向けに発信するメッセージ性の強い➀スローガン、私たちが目指すものを表す②綱領、スタッフが目指す人材を示す③信条、スタッフの日々の心構えである④心得、みのお拠点の存在意義と基本方針を文章で示した⑤運営趣意書、の5つである。本レポートでは⑤運営趣意書について説明する。
 
<運営趣意書>
 
 現在、日本には大量の物が溢れている。大多数の国民は物の豊かさを享受し、食べ物に困らず生活している。
 
 しかし、現代の日本においても、貧困は社会問題となっている。特に深刻な問題となっているのが、貧困の連鎖である。貧困の連鎖とは、低所得世帯の子ども達が、将来低所得者になる可能性が高く、貧困から抜け出すことができないことを指す。子どもを取り巻く環境は、子どもの学歴に影響し、また、物事に取り組む意欲にも大いに影響する。学歴は収入との結びつきが強く、意欲はすべての根幹である。これが、貧困の連鎖する構造である。私たちは、子ども達がこの連鎖を断ち切る力を潜在的に備えていると考えている。では、この力を適切に引き出し、育んでいくためにはどうすればいいのであろうか。
 
 私たちは国内外の研究成果を踏まえ、貧困の連鎖を断ち切る力を生き抜く力と定義し、子ども達の生き抜く力を育みたいと考えている。生き抜く力とは、果敢に挑戦する力、自ら考え選ぶ力、状況を冷静に振り返る力、仲間と関係を構築し協力する力、最後までやり抜く力の総称である。そして、この生き抜く力を育む場所として特に、次の2つを兼ね備えていることが重要である。
 
 1つは、そこが子ども達にとってほっと一息つける居場所であることである。そのような居場所が、子どもの心に安らぎを与え、さらなる意欲を育むのである。これは、生き抜く力を育むうえでの土台である。2つ目は、そこに子ども達に寄り添いながら、そっと背中を後押しする大人が存在することである。もっとも、子どもには人生を生き抜いていく力が潜在的に備わっている。だからこそ、私たち大人の使命は、子ども達の生き抜く力を最大限に引き出す環境を整え、成長を見守り、適切な助言を施すことなのである。
 
 私たちはこのような想いから、心から安心できる居場所をつくり、子ども達に寄り添いながら豊富で多様な体験を提供し、子どもと親に適切なサポートを実施することを決意した。これらの取り組みを通して、私たちは子ども達の生き抜く力を育みたいと考えている。
 
 将来生き抜く力を体得した子ども達が貧困の連鎖を断ち切り、それぞれの人生を歩んでいくとき、生まれた環境に左右されず、自らの力で人生を切り拓ける社会が実現すると、私たちは確信している。よって、私たちはこのような思いから、施設を運営していく次第である。
 
                             平成29年11月15日
 
<理念と共に>
 
 約3か月かけてスタッフと共に理念を作成してきた。一人ひとり考え方が異なるために、全員が納得する理念の作成は簡単ではなかった。しかし、意見が対立しつつも、そこからより良いものをつくろうと工夫を施してきた。理念が完成した今、私は2つの気づきを得ている。
 1つは、理念づくりを通して、みのお拠点の存在意義と基本方針を全スタッフと共有できていることである。この理念は、スタッフ一人ひとりの頭と心を使い、振り絞ってできたものである。言葉1つ1つにスタッフの思いが込められている。そのような理念作成の過程を経て、現在スタッフは同じ方向を目指し、仕事に取り組んでいる。
 私たちが目指す社会の実現には、スタッフの一致団結は必須である。一致団結とは、心を1つにして共通の目標に向かって力を合わせることである。スタッフと共に進めてきた理念づくりは、スタッフが共通の目標に向かって力を合わせる取り組みであった。つまり、理念づくりは一致団結の手段でもあったのである。理念づくりの過程は、スタッフに理念が浸透していく過程でもあった。みのお拠点には個性豊かなスタッフが揃っており、スタッフの考え方は十人十色である。しかし、理念については共通の考え方を全スタッフが持っている。
 もう1つの気づきは、理念が日々の判断基準になっているということである。これは、備品の購入という些細な仕事にも当てはまる。例えば、冬にこたつを購入するべきかを考える際にも、綱領に振り返って考える。どのようなものを揃えれば、ほっと一息つける居場所になり得るのであろうか、と。
 今後、活動が進んでくるにつれて、多種多様な仕事に追われることが予想される。子ども・保護者と向き合い、学校や市と連携し、視察・研修を受け入るなどが考えられる。まさにそのようなとき、理念は私たちの存在意義を再認識させ、日々の行動指針、判断基準となるのではないだろうか。これからも至る所で、理念の効用を実感しそうである。それを日々実感できることは今後の私の楽しみである。
 まだまだ私たちの航海は始まったばかりだ。これから荒れ狂う海に翻弄され、嵐の中を進まなければならない日もあるだろう。しかし、私たちには目指すべき方向を示した理念というコンパスを持っている。そして、その針が指し示す方向を全スタッフが信じている。日々少しずつでも前進し続ければ、目指す場所に到達できる。スタッフと力を合わせ、理念と共に歩み続けていく。

2017年 12月

研修活動3・4年目 実践活動報告~日本財団×ベネッセ 子どもの貧困対策プロジェクト 理念作成編 前編(2)~

山本将/松下政経塾第35期生

 私は日本財団と(株)ベネッセの子どもの貧困対策プロジェクトに参画し、大阪府箕面市において現場マネージャーとして活動している。今回のレポートでは、マネージャー就任時から約3か月かけて、スタッフとともに作成した理念について説明する。
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<松下幸之助から学んだ理念の重要性>
 
 経営をおこなううえで、最も重要なことは何であろうか。松下幸之助は、それは経営理念であると答えている。松下幸之助は経営理念について、著書「実践経営哲学」の中で次のように述べている。
 
   ”この会社は何のために存在しているのか。この経営をどういう目的で、
   またどのようなやり方で行っていくのか”という点について、しっかりと
   した基本の考えをもつということである。
 
 そして、その重要性と効用について同書の中で次のように述べている。

   事業経営においては、たとえば技術力も大事、販売力も大事、資金力も
   大事、また人も大事といったように大切なものは個々にはいろいろあるが、
   一番根本になるのは、正しい経営理念である。

   刻々に変化する社会情勢の中で次々と起こってくるいろいろな問題に
   誤りなく適正に対処していく上で基本のよりどころとなるのは、
   その企業の経営理念である。また、大勢の従業員を擁して、
   その心と力を合わせた力強い活動を生み出していく基盤となるものも、
   やはり経営理念である。
 
 これらの発言から、松下幸之助は経営理念を企業の存在意義、基本方針として用いていることが分かる。企業の存在意義、基本方針が明確であれば、その活動が力強いものになっていくのは当然ではないだろうか。松下幸之助の経営理念への考え方は、弊塾での私の学びの1つである。
 私が本プロジェクトに参画し、真っ先に取り掛かった仕事は理念の作成であった。もちろん、その仕事だけに専念できるわけではない。プロジェクトの立ち上げ段階はやるべき仕事が山のようにある。鉛筆1本購入するところからオフィスの整備を進め、拠点でのプログラム内容を考案する。そのような中、理念について話し合う時間を確保し、スタッフと議論しながら理念の作成を進めてきた。理念の作成には、約三か月もの時間を要した。次の5つが私たちの理念である。
 外部向けに発信するメッセージ性の強い①スローガン、私たちが目指すものを表す②綱領、スタッフが目指す人材を示す③信条、スタッフの日々の心構えである④心得、みのお拠点の存在意義と運営の基本方針を文章で示した⑤運営趣意書の5つである。本レポートでは、、①スローガン、②綱領、③信条、④心得について説明する。
 
<スローガン:Be kind, and strong(優しく、そして強くなれ)>
 
 まず、①スローガンについてである。私たちは、Be kind, and strong(優しく、そして強くなれ)をスローガンに掲げている。このスローガンには、2つの意味が込められている。1つは、子ども達にこのような大人になってほしいという思いを込めている。人として何よりも重要なものは優しさであると、私たちは考えている。普段、成績優秀な子どもが大人から褒められる機会が多い。しかし、いくら頭が良くても人の気持ちが分からなければ、世間から煙たがられる。そのような人と一緒にいたい、一緒に働きたいと思う人は稀ではないだろうか。
 人は誰しも常に強者でいることはできない。一人で生きていけると高を括っている人も、年を取り、人の手を借りる時は必ず来る。また、心身の健康を害した際も、他人の気遣いに救われることがある。そのような時、人の優しさは心に響くのである。
 ただ、優しいだけではいけない。優しくても弱ければ、自分のことで精一杯である。その場合、他人に優しさを振りまく余裕などない。いつも人に優しく接するには、強さが必要である。その強さとは、自分のための強さではなく、人のための強さである。Be kind, and strong(優しく、そして強くなれ)には、そのような思いが込められている。
 さらに、より重要な意味合いとして、このスローガンにはスタッフがこのような大人になろうという思いが込められている。子どもは大人の背中を見て成長していく。子どもに求める姿を大人が示す必要がある。そのために、何よりもスタッフの日々の振る舞いが重要ではないだろうか。この心構えを持って、日々子ども達と向き合っていきたい。
  
   綱領:みのお拠点が目指すもの
 
   ほっと一息つける居場所をつくり、
 
   そっと寄り添いながら子どもの背中を後押しし、
 
   すべての子ども達の生き抜く力を引き出し育む。
 
 私たちは、子ども達の生き抜く力を育むことを目的に活動している。生き抜く力とは、果敢に挑戦する力、自ら考え選ぶ力、状況を冷静に振り返る力、仲間と関係を構築し協力する力、最後までやり抜く力の総称である。私たちは国内外の研究結果を踏まえて、この生き抜く力こそが貧困の連鎖を断ち切る力であると考えている。では、子ども達の生き抜く力を育むためには、どのような環境を整える必要があるのであろうか。
 私たちは生き抜く力を育む場所として、特に次の2つを兼ね備えていることが重要であると考えている。まずは、その場所が子ども達にとってほっと一息つける居場所であることである。複雑な家庭環境下の子ども達は、様々な悩みを抱えている。安心できる居場所の存在が子どもの心に安らぎを与え、次なる意欲を生むのである。そのような場所であって初めて、生き抜く力を育む基盤が整う。
 2つ目は、子ども達に寄り添い伴走しながら、そっと子どもの背中を後押しする大人の存在である。これは、大人の価値観や意見を上から押し付けることを意味していない。私たちは、潜在的に生き抜く力が子ども達に備わっていると考えている。大人は子どもの生き抜く力を最大限に引き出す環境を整え、成長を見守り、適切な助言を施すことが求められているのである。
 生き抜く力を引き出すためには、その力を育む場がほっと一息つける居場所であり、そこに存在する大人が子どもの背中をそっと後押しすることが重要であることから、上記の内容を綱領とした。
 
   信条:みのおスタッフが目指す人材
 
   互いの感謝が協力を生み、一致団結が未来を拓く
 
 私たちが掲げた綱領を実現するためには、スタッフ一人一人の力を結集しなければならない。一致団結こそが生き抜く力を育める社会への鍵となる。一致団結とは、心を1つにして共通の目標に向かって力を合わせることである。一致団結するために必要な要素はいくつかある。共通の目的意識を持つこと、リーダーの存在とスタッフの適材適所の実施、同じ試練を乗り越える体験、などが考えられる。
 その中でも私たちは、互いへの感謝が重要であると考えている。「ありがとう」が普段から飛び交う職場では、自分の力を貸したり、仲間の力を借りたりすることが自然に行われる。また、「ありがとう」の背景には、相手への敬意や承認の気持ちがある。互いの感謝が信頼関係を形成し、スタッフの心を1つにしてゆく。この信条には、スタッフ一人一人の力を結集することで綱領を実現していこうという思いが込められている。
 
   心得:日々の心構え
 
   挑戦:すべての子ども達が生き抜く力を育める、社会づくりに挑戦する。
 
   共感:子どもと親の気持ちに寄り添い、豊かな関係を構築する。
 
   GIFT:子どもに豊富で多様な体験を提供する。
 
   持ち味:一人ひとりの持ち味を活かす環境を整える。
 
   感謝:互いに感謝を言葉で伝え、協力し支え合う。
 
 みのお拠点では上記5つを日々の心構えとして重要視している。今回はこの中から、GIFTに着目して説明する。みのお拠点ではスタッフの長所を活かして、子ども達に豊富な体験の機会を提供する。例えば、スタッフの中には元ミュージシャンで音楽に秀でているスタッフや、お菓子作りが趣味であるスタッフ、元M-1出場者で漫才が得意なスタッフがいる。そのようなスタッフが自身の長所を活用して、子ども達に豊富な体験を提供する。この機会提供を私たちはGIFTと呼んでいる。GIFTは贈り物、プレゼントの意味である。まるで気持ちを込めて相手にプレゼントを渡すかのように、素敵な体験の時間を子ども達に贈りたい。
 この取り組みの背景には、子どもの物事に挑戦する意欲の低下がある。低所得層の子ども達は、家庭の事情により物事にチャレンジできないことが続き、そもそもチャレンジしようという意欲をなくしてしまう。所得格差が意欲格差を生んでいるのである。意欲はすべての活動の根幹である。そのために、意欲の格差は将来のあらゆる格差につながってしまう。
 私たちは子ども達のやってみたい!の気持ちに寄り添いたいと考えている。まずは、豊富で多様な体験をGIFTする。そして、その中から自分が興味があるもの、好きなことを見つける。そして子ども達が好奇心をもってどんどん探究する。みのお拠点が子ども達のやってみたい!楽しい!が溢れる場所にしていきたい。
 
<理念作成編後編へ>
 
 ここまで、スローガン、綱領、信条、心得について説明してきた。理念作成編後編では、設立趣意書について説明する。そして、これら理念と共に、みのお拠点の今後の活動をどのように進めていくのかを述べていきたい。

2017年 10月

研修活動3・4年目 実践活動報告(2) 自治体財政シミュレーションゲーム「SIM信州2030」開催

小林達矢/松下政経塾第36期生

実践活動報告(2) 自治体財政シミュレーションゲーム「SIM信州2030」開催[1] 実践活動報告(2) 自治体財政シミュレーションゲーム「SIM信州2030」開催[1] 実践活動報告(2) 自治体財政シミュレーションゲーム「SIM信州2030」開催[1]
実践活動3年目の活動として、県民にとって楽しく自治体財政を学べる自治体財政シミュレーションゲーム「SIM2030」を開催している。
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「SIM2030」とは
 
 実践活動3年目として、県民に自治体財政運営をリアルに体験してもらいたいと思い、自治体財政シミュレーションゲーム「SIM2030」の長野県バージョンを今年の8月から開催している。「SIM2030」とは、社会保障費の増大と税収減に直面する仮想の自治体を舞台に、5人1組で新規・既存事業の取捨選択を制限時間内に判断する「財政シミュレーションゲーム(対話型ワークショップ)」であり、熊本県庁の有志の職員のグループが開発した。現在は福岡や千葉、石川をはじめ全国各地でご当地版が作成され、今、静かなブームになっている。「SIM2030」は、2030年という13年後の長期的なまちの展望を考えることはもちろんのこと、人口減少・少子高齢化による財政のひっ迫をリアルに体験できることが特徴的である。また自治体職員だけでなく、若者や県民が参加することによって、自治体財政運営を「自分事化」して考えられる点も「SIM2030」の魅力である。このような特徴を生かすことができれば、人口減少しても県民が幸せに暮らせるまちを自ら作っていけると思い、県内の市町村で小学生・大学生・自治体職員向けに「SIM信州2030」を開催している。
 
「SIM2030」を行うきっかけ
 
 この取り組みをはじめようと思ったのは、私の生まれ育った長野市の市政運営に問題意識を持ったことがきっかけであった。長野市は県都として発展し、1998年には長野オリンピックが開催された。また7年に1度善光寺の御開帳が行われ、全国から訪れる観光客のおもてなしに力を入れている。長野市では公共投資に力を入れており、近年では1,800億円かけて庁舎建て替えや芸術会館建設など10大プロジェクトを行ってきた。
 しかし、これらの取り組みは一過性のものであると私は考える。長野市でも、人口減少が進んでおり、2005年から2015年の10年間で15,000人減少しており、歯止めがかかっていない。公共施設の延べ床面積は、全国平均を大きく上回っており、人口同規模クラスの中核市の中では、最も公共施設が多い都市でもある。10大プロジェクトを行ったことにより、市債残高も増加している。人口減少が進む中で、従来通りの地方財政運営でいいのであろうか。また第五次長野市総合計画のアンケート集計結果によると、市民の意見が市政に反映していると感じている割合が19.2%と非常に低くなっており、市民の意見をより市政に反映できるしくみをつくりたいと考えていた。その中、地方財政を知るきっかけとして、関心をもったものが「SIM2030」であった。
 
県内で開催してみて思ったこと
 
 現在私は「SIM2030」を長野県版・長野市版・塩尻市版・信濃町版・小布施町版といったように、県内の市町村版にアレンジをかけて実施している。対象者も多岐にわたっており参加者の層によっての考え方の違いから学びを得ることがあった。特にその違いが出たのは、長野県版を公務員向けに行った回と、信州大学1年生を対象に行った回の比較である。公務員向けに行った際に、最も削減しにくい事業が「橋梁補修事業」であった。それに対して信州大学学生は、最も削減しにくい事業として「橋梁補修事業」を選んだ学生は1人もおらず、「中小企業支援」を選ぶ学生は多かった。大学生の政策ニーズが分かったことに加え、橋梁補修事業の重要性が学生には伝わっていなかった。公共施設やインフラメンテナンスの重要性が増す中、県民へのさらなる周知・広報の必要性を感じた。
 また学生向けに行ったことにより、「高齢者のための社会保障費がこんなにもかさばることが苦痛なんだと実感した。そりゃあ、投票しない若者向けの事業が削られるわけだと妙に納得した」「今まで国や県の政策や方針を批判的な目で見ることも多かったが、それも何かを犠牲にしなければならない苦渋の決断だったことを身にしみて感じました」といった感想が寄せられた。詰込みの教育ではなく、実社会を知り、自ら考えて行動する若者を育てるという意味においても、「SIM2030」の効果があると感じている。今後は、大学生だけではなく、高校生向けにも行い、主権者意識の醸成も図ってきたい。さらにSIMをより実用化し、県民が政策判断能力を身に着けられるような市民講座を開催していきたい。

2017年 9月

研修活動3・4年目 実践活動報告~日本財団×ベネッセ 子どもの貧困対策プロジェクト 現場責任者としての挑戦(1)~

山本将/松下政経塾第35期生

実践活動報告~日本財団×ベネッセ 子どもの貧困対策プロジェクト 現場責任者としての挑戦(1)~[1] 実践活動報告~日本財団×ベネッセ 子どもの貧困対策プロジェクト 現場責任者としての挑戦(1)~[1]
 日本財団と㈱ベネッセホールディングスは、子どもの貧困対策として共同プロジェクトに取り組んでいる。このプロジェクトは、家庭でもなく学校でもない第三の居場所を全国各地につくる計画であり、私は関西で初となる大阪府での現場責任者に就任した。今回の実践活動レポートでは、本プロジェクトの概要について説明する。
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 2016年5月、日本財団とベネッセによる「子どもの貧困対策プロジェクト」が始動した。(図1)このプロジェクトにおいて、日本財団が全体のコーディネートとサービスの全体設計、さらに拠点設置に必要な50億円の資金提供を行う。ベネッセは、これまで培ってきた教育ノウハウをもとにコンテンツの提供等を行う。このプロジェクトは、子どもの貧困問題解決に向けて、有効な解決策を探るものであり、主に就学前から小学校低学年の子どもを対象に、「家でも学校でもない第三の居場所」となる拠点を全国各地に100か所設置し、子ども達の将来の自立を促す取り組みである。その中の1つである大阪府箕面市の現場の運営は、特定非営利活動法人トイボックスが担う。私は独立事業者としてトイボックスと契約を結び、箕面拠点の現場責任者に就任し、2017年10月から箕面拠点が活動を開始した。
 
1.プロジェクトの概要~子どもたちに安心できる居場所を~
 
 なぜ子ども達に第三の居場所が必要なのであろうか。日本財団はこの理由として関係性の貧困を述べている。親が貧困である場合、子どもが被る不利益は金銭面だけではない。親の人間関係や繋がりの希薄さの影響をも子ども達は被る。例えば、ひとり親で子どもが幼ければ、仕事と家事を一人で担う。その親がプライベートで人との繋がりをもつことは難しく、その結果、その親は孤立してしまう可能性が高い。そして、親の孤立が、子どもの孤立につながってしまうかもしれないのである。この場合、子ども達にとって居場所となり得るのは、多くの時間を過ごす家庭と学校しかない。子ども達への支援活動の中で、安心できる居場所となりえていない家庭を、私はいくつか見てきた。親が離婚と結婚を繰り返し、新しい親や兄弟と一緒に暮らす家庭や、親の虐待におびえる子どもがいる家庭などである。そのような家庭の子ども達にとって、家はほっとできる場所になっていない場合がある。
 また、学校もほっとできる居場所になることが難しくなっている。教師は様々な雑務に追われ、さらに子どもや家庭の課題も多様化しており、そのニーズを組み取ることも容易ではない。一人一人の子どもとその親に教師がじっくり向き合うにも限界があるのである。
 家庭でもなく学校でもないところに、子ども達がほっとできる居場所が必要である。そして、そのような居場所が家庭や学校と適切に連携を取ることによって、より親子へのケアが行き届くのではないだろうか。このような背景から、第三の居場所プロジェクトは始まった。
 
2.現場から学んだ居場所づくりの重要性
  
 私は、子どもへの支援活動の経験から居場所の重要性を痛感している。そのため、本プロジェクトの考えに大いに共感している。私の活動については以前のレポートで述べているため、ここでの詳述は割愛するが(2016年12月 実践活動報告~子どもの貧困の現場から学んだ、居場所づくりの重要性~)、日本には、家庭が居心地の良い居場所でない子ども達が数多く存在する。親が離婚と結婚を繰り返し、新しい親や兄弟と一緒に暮らす子どもや、親の虐待におびえる子どもにとって家は必ずしもほっとできる場所となっていない場合が多い。
 学校に遅刻する子ども達でも、第三の居場所には時間通りに姿を見せることがあった。帰り間際には「帰りたくない」と、ぐずる子ども達もいる。孤独な子ども達は、絶対的な安心できる居場所を求めている。居場所があるということは、精神の安定だけでなく、物事に取り組む意欲など様々な面に影響を与える。人にとって居場所とは、それほど重要なものである。
   
3.スタッフに求められる姿勢
 
 では、子ども達に安心できる居場所をつくる上で、私達スタッフに何が求められるのであろうか。答えがない問いではあるものの、私達は”寄り添う”姿勢を大事にしていきたいと考えている。子ども達は様々な事情を抱えている。家でも学校でも、ほっと一息つける居場所がない子ども達がいる。まずは、子ども達に寄り添って、話に耳を傾け、「うん、そうなんだね」と頷いてあげる。そして、子ども達の得意なことや、自慢できることを「すごいね」と反応して、認める。子ども達が苦手なことにチャレンジするときには、見守り、そっと背中を押してあげる。このように子ども達の気持ちに寄り添い、共に豊かな関係性を紡いでゆくことが、安心できる居場所に求められているのではないだろうか。一人ひとりの子供たちが心からほっととできる居場所づくりに力を尽くしていきたい。
 
4.今後の展望
 
 もちろん、安心できる居場所づくりの他にも、今後取り組んでいきたい様々な構想がある。より良い生活習慣や学習習慣の定着、子どもがわくわくする体験の機会の提供、これからの時代を生きていくための生き抜く力の育成などである。これらの取り組みについては、時期を適切に見極めながら、随時取り組んでいく計画である。引き続き、追ってレポートで報告していく。

2017年 6月

研修活動3・4年目 実践活動報告~フォーラム開催「これからの子育てのかたち~‘孤育て’から‘安心できる子育て’へ~」

山本将/松下政経塾第35期生

実践活動報告~フォーラム開催「これからの子育てのかたち~‘孤育て’から‘安心できる子育て’へ~」[1] 実践活動報告~フォーラム開催「これからの子育てのかたち~‘孤育て’から‘安心できる子育て’へ~」[1] 実践活動報告~フォーラム開催「これからの子育てのかたち~‘孤育て’から‘安心できる子育て’へ~」[1]
今回の実践活動報告では、2017年7月1日(土)の14時~16時において、大阪府茨木市で主催しました子育てフォーラムについてご報告します。
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1.フォーラム開催の経緯
 
 子どもの健全な発育のためには、特に乳幼児期の家庭環境やその支援が重要であると考え、実践活動を行っています。子育て支援は多様であり、国が進めている家庭教育支援や、大阪府の社会福祉協議会が進めている保育園・保育士の育児指導相談員、地域包括支援員(通称スマイルサポーター制度)などがあります。
 このような取り組みの背景の1つに ‘孤育て’という問題があります。孤育てとは、パートナーや親族、地域から子育ての協力を得ることができず、片方の親に子育ての負担がかかっている状態です。孤育ては育児不安や育児ストレスを抱えやすく、最悪の場合には虐待につながるとも言われています。
 社会の変化の中で子育てが孤育てに変わり、その支援が急務であることを踏まえ、「すべての世代で子育てを支える社会」について市民の皆様と考えるフォーラムを開催しました。
 
2.フォーラム内容
 
 フォーラムは二部構成で、1部では「子どものために大人ができること~父親・母親・保育園の役割」の講演をおこない、2部では「保育園・学校が支える子育てのかたち」として、茨木市の保育園の三角園長先生と小学校の為乗校長先生を交えてパネルディスカッションをおこないました。
 講演で孤育ての現状を説明した後、孤育てを防ぐ家庭内での工夫についてお話しました。主に、男女の脳の働きの違いと夫婦のコミュニケーションについて、保育園のスマイルサポーター制度の現状とこれからの役割についてお話しました。 
 2部では、保育園の三角園長先生から、保育園が保育士不足や待機児童問題を抱えながら、スマイルサポーター制度を運用するご苦労についてお話頂きました。アンケート結果からも、現場での奮闘と課題について理解することができたと、多くのコメントを頂きました。また、小学校の為乗校長先生には、小学校が子育てを支える取り組みと保幼小連携についてお話頂き、特に、保幼小連携が子育て支援や子どもの学力・生活面にとって重要であることを、会場の皆さんと共有することができました。当日は多くの方にご来場いただき、活発な質疑応答がおこなわれ、これからの子育てのかたちを会場の皆様と一緒に考えることができました。
 
3.フォーラムを終えて
 
 今回のフォーラムを開催するにあたって、よく頂いたご意見があります。それは「子どもがいないのに、子育てのことを語るの?」というものでした。では、子どもがいない人は子育てについて考えない方が社会にとって良いのでしょうか。
 例えば、高校生や大学生が、街中で困っている妊婦にさっと手を差し伸べる行動や、道をベビーカーにさっと譲る行動には、どこか温かさを感じます。また、未婚の20代・30代の男性が、新幹線の中で泣き叫ぶ赤ちゃんに対して、優しく微笑み返すのは、素敵な振る舞いであると私は思います。子育ての有無に関わらず、みんなが子どもを温かく見守る社会は素晴らしいのではないでしょうか。
 また最近の保育園の建設反対問題を見ても、子育て・子どもに対する社会の寛大さが失われつつある気がします。横浜市の保育園建設反対の事例では、ある母親は実際に次のように発言しました。「私は三人の子どもを育てていて、三人とも保育園に預けています。そのために保育園の重要性は分かっています。ですが、とにかく私の家の近くに保育園を作らないで下さい。」
 この例は、子育て経験がある方でも、すべての子育て世代・すべての子どもに対して温かく支える社会にあまり関心がないことを示しています。もちろん、自分の子どもというのは特別な存在だと思います。ただ、広い視点に立てば、すべての子ども達はこれからの日本を担う、社会の宝物です。温かくすべての子ども達を見守り、すべての家庭が安心して子育てできる環境をつくる。
 そのためには、子育てをしていない人も、している人も、ひと段落ついた人も、すべての世代で、子育てについて考えることは重要だと思います。今回のフォーラムを通して、この思いがより強くなりました。引き続き、活動に取り組んでまいります。

2017年 5月

研修活動3・4年目 実践活動報告(1) 真の地方創生とは何か~常識を疑うことから始めよう~

小林達矢/松下政経塾第36期生

実践活動報告(1) 真の地方創生とは何か~常識を疑うことから始めよう~[1] 実践活動報告(1) 真の地方創生とは何か~常識を疑うことから始めよう~[1] 実践活動報告(1) 真の地方創生とは何か~常識を疑うことから始めよう~[1]
地方消滅が叫ばれ始めて数年が経ったが、本当に地方は消滅してしまうのだろうか。福岡県津屋崎訪問を通じて、常識を疑うことを学んできた。真の地方創生とはいかなるものか報告したい。
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訪問するきっかけ
 
 私は長野県長野市出身で、まちの衰退や若年層の流出に問題意識を持っている。人口減少すれば、経済が縮小し、財政運営も困難になる。だから歯止めをかけたい。よく“地方創生”で言われるようなことを思っていた。
 しかし本当に地方は疲弊しているのだろうか。また疲弊しているとしても、日本全体で人口減少すれば、人の引っ張り合いになってしまうのではないか。松下政経塾に入塾してから、このように自らの志を省みる機会が多々あった。
 その1つが、津屋崎ブランチ代表の山口さんとの出会いであった。山口さんは、もともと東京でゼネコンに勤めながらまちづくりに携わっていた。しかし東京にいて地方のまちづくりを行なっていても、地域の人の顔が見えなく、何のためのまちづくりを行っているのか悩んでいた。そこで山口さんは実際に地方に住んでまちづくりをしたいと思い立ち、10年前から福岡県津屋崎に移住して、まちづくりを行っている。
 私は、実際に地域に住んでまちづくりを行うようになった山口さんの思いに惹かれ、津屋崎を訪問することとなった。
 
津屋崎ブランチとは
 
 津屋崎は隣の福間町と2005年と合併し、現在は福津市の一部になっている。福津市の中心は福間町の福間駅周辺で、現在は高層マンションが並び、福岡市のベットタウンとして人口が増加している。その一方昔ながらの営みが残る津屋崎は西鉄の廃線により、地域衰退が進んでいる。この状況を打開するために福津市は、移住交流政策を山口さんに依頼し、津屋崎ブランチを創設した。

 津屋崎ブランチが目指すまちの姿は、「新しい働き方、暮らし方、人とのつながり方」を作ることである。ここでいう「新しい」は、都会の若者からみて新しいという意味であり、日本に元々あった「本物」を取り戻すということを意味している。山口さんは、津屋崎には都会に住んでいる人々が失いかけているものが、開発から取り残されているがゆえに残っているので、それを受け取り、受け継ぎたいという。
 津屋崎の良さを受け継ぐために津屋崎ブランチでは様々な取り組みを行っている。1つ目が、子育て世代にターゲットを置いた移住者支援事業である。なぜ子育て世代かというと、20代の単身者は、自分にとって住みたいと思う場所を選ぼうとして、津屋崎よりもいいと思った場所があればそちらへいってしまう。それに対して子育て世代は、子どものために本当に住みたいところを探す。そこで、本当にこの地域を選んでもらえるように、数組限定の移住体験ツアーを行った。移住体験ツアーの特徴としては、ワールドカフェという話し合いの手法をアレンジして、町民と対話する機会を設けているところだ。例えば、「春夏秋冬どういう暮らしをしているのか」町民に教えてもらい、ここに住むとこういう人たちと暮らしていけるんだとイメージしてもらっている。対話の重要性に関しては、追って詳しく述べる。その結果ツアー参加者は、100%移住してもらい、定着率も100%になった。ターゲティングに加え、津屋崎での暮らし方・人との繋がり方を感じてもらうことが、移住定住を促進していることがわかった。
 2つ目が古民家活用である。移住交流を促進するには、居住するスペースが必要である。しかし町の人々から古民家を貸してもらうこともなかなか難しい。まずは、家主の気持ちを移住者にも理解してもらうことが必要だ。移住者が自治会に入らなければ家主の面子をつぶすこともあり得る。この家の、そして地域の歴史をいかに引き継ぐことができるのかが重要になってくる。また家主の金銭的な負担軽減も1つのテーマである。例えば、家賃前払い方式や、改修費の半分を近所の人々が出資しあう「ものがかり銀行」など信頼の中でしか成り立たない仕組みも利用して、古民家活用を進めているところが特徴的である。
 3点目がプチ起業塾だ。1つの仕事ならば、5万、10万しか稼げないが、3、4つ組み合わる複業という新しい働き方を取り入れることができれば、生活は成り立つ。津屋崎のプチ起業塾では、自分の趣味や好きなことでプチ稼ぎしつつ地域に貢献したいという30~40代をターゲットにして起業支援が行われている。近年では起業支援も甲斐あって「Café and Gallary 古小路」という日替わりカフェをはじめ、次々と津屋崎に店がオープンしている。このような新しい働き方が出来れば、生活を犠牲にすることなく、地域や家族を大切にする暮らしが実現できるようになってくる。また仕事上の利害関係以外でも付き合う関係を持つことができるのではないか。
 津屋崎ブランチのこのような取組によって200名を超える人々が津屋崎に越してきている。そしてその移住者は、地域にある資源を生かし、また地域に住む人々の交流を重視し、いままで津屋崎で失われつつあったものを取り戻すことに寄与している。そういった風情ある町並みにどこか心が落ち着く。何のために、人を呼び込むのか、またまちにとって大切なものとは何かを考える良いきっかけになった。
 
若者と移住者、そして住民との対話の場づくり
 
 ただ山口さんは、移住者と地元住民との対話がなければ、移住・交流は進まなかったと考えている。山口さん自身も最初移住して来てから、地元住民との信頼関係を構築するには、5・6年かかったという。特に、最初の2・3年は地元のお祭りに参加したり、地元の若者衆にお酒を持っていき、ひたすら対話を求めに行ったそうだ。こうした努力が町民の心を開いたとお話を伺っていて感じた。
 こうした町民と対話を取り入れたものが、上記でも説明した移住支援事業である。私はそこにこそ移住交流促進のコツがあるのではないかと思う。
 現在、対話の場づくりとして意味の学校というものを津屋崎で開催しており、地元の方はもちろんのこと、移住者や小学生や高校生・大学生が集まってくる。
 それではそもそも対話とはなにか。山口さんが対話と対比していたのは、討論だ。塾でも討論を行なったりするし、私もどちらかというと討論をしてしまう。しかし討論では、自分の考える範疇からでることがなく、自分では思いつかないことは見えてこないという。
 では山口さんが目指す対話をするには何が必要か。 意味の学校では、断定しないことを重んじている。確かに討論していると、その根拠は何ですかと理屈で話をしてしまい、自ら気づかなかった視点を見逃してしまっているのではないかと感じることができた。
 断定しないことに関連して特徴的だったルールは、年上の人が年下の人の話を尊重するということだ。私が参加した意味の学校では、質疑応答も若者が優先的にできるような環境づくりが施されていた。ここに津屋崎に人々が集う理由がわかった。
 もう1つユニークなルールがある。それは、沈黙を歓迎するということだ。よく話し合いをする時は、黙り込んではいけないと考えがちである。山口さんは、沈黙が起きている時は、新しい概念に触れ言語化しようとしている、とても大切なひと時であるという。慣れないと沈黙していいのかなと思いがちだったが、少し経つとそれが心地よくなり、自分が考えている本心を話せるようになった。
 対話は、人々との対立を生じさせない。若者だろうが、移住者だろうが地域に溶け込むことができる仕組みではないかと感じた。
 
地方創生の常識を疑え
 
 山口さんにまちを再生するにあたって求められる見方・考え方を説明していただいた。従来の「地方創生」は、東京視点で競争を促してきたという。例えば、どれだけ便利か、どれだけマーケットが大きいか。こうした1つの軸で計られるとどうしても、人口規模の大きさに依存してしまう。また1つだけの指標に頼っていると、ランキング付けされやすくなり、これも商売の道具にされてしまう恐れがあるらしい。
それにも関わらず便利さに依存した住民は、強者に資金も物も情報も奪われていることを認識していない。気づいたときには、これまであった地域の営みは崩壊し、人とのつながりがなくなる。やがては誰も住まないまちになってしまうかもしれない。
 山口さんはこれからの「地方創生」に求められるものは、「協力」「共有」「自立」であるという。「協力」は、競争とは逆の意味である。これまでは、競争に勝ったもの勝ちの社会であったが、そうではなくお互いのいいところを認め合うことの重要性を述べていた。例えば、福間駅周辺は利便性が高いが、津屋崎には人情と昔ながらの暮らしの営みがある。お互い良いところを認め合い、交流を活発化させれば双方向にプラスであろう。またその際は、そこにある資源をお互い「共有」し合うことが重要になってくる。決して独り占めしたりしてはならない。またその際は、過度に他に依存せず「自立」を保つことも重要になってくるだろう。このような発想は経済指標1つに頼っては、決して出てこない視点である。総合的な指標でまちの価値を図り、共存共栄の社会を築いていく重要性を知ることが出来た。
 
 今となっては、津屋崎には子育て世代を中心に200人もの人々が移住し、意味の学校などイベントがあると、若者も含め多くの人々が津屋崎に集うようになってきている。しかしここまでで来るのには、山口さんと地元の方々との対話がなければ成り立たなかったのではないか。移住交流政策が全国どの市町村でも行われるようになったが、この事例から1つ学ぶものがあるのかもしれない。次回は、私の出身である長野県ではどのような移住交流が行われているのか紹介したい。
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