松下政経塾 The Matsushita Institute of
Government and Management

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塾生の紹介 研修活動

研修活動塾生による、現在までの研修活動を一部ご紹介いたします。

2016年 1月

研修活動3・4年目 実践活動報告 –京都、そしてワシントンD.C.での活動について-

斎藤勇士アレックス/松下政経塾第34期生

実践活動報告 –京都、そしてワシントンD.C.での活動について-[1]
今年度前半のベンチャー企業でのインターンののち、昨年9月からアメリカに渡り、ベンチャー大国と言われるアメリカの産業政策の研究、そして日本外交にとって極めて重要な位置を占めるアメリカという国、そのものの理解に取り組んでいます。
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 民間企業の活力を引き出し、より豊かで持続可能な日本経済、社会を築くことが私の志です。日本企業を取り巻く環境や課題を把握し、そして現在の困難な状況を打開することを目的に、ベンチャーの振興や企業統治の高まりを目指しての実践活動に、今年度から取り組んでいます。今年度の前半は、京都にあるベンチャー企業に籍を置かせて頂きながら、イノベーションや雇用の創出において極めて重要な役割を果たすベンチャー企業について、その振興の方策の研究を進めてきました。その中で浮かび上がってきたのは、20年にも渡る政府の起業振興施策の実施にも関わらず、一向に日本において起業が活発化しない現状と、その背後にある社会的文化的な背景から生じる起業家精神の欠如という根深い問題でした。
 
 この活動を踏まえて、昨年の9月からは、社会的文化的背景がどのように起業環境、起業家精神の醸成に変化を与えるのかを理解するために、研究の環境を変えて、ベンチャー大国であるアメリカ合衆国で活動しています。
 アメリカでの活動は、アメリカ連邦議会でのフェローシップ(アメリカ政治学会が主催する Congressional Fellowship Program)に参加する形態をとっています。ワシントンDCの連邦議会議員事務所に勤務しながら、アメリカの様々な分野にわたる最新の情報、分析に触れることで上述の研究テーマを深めるとともに、アメリカ政治を担う方々との親密な交流の中で、それぞれの国家、そして世界の繁栄について考えていきたいと思っています。
 
 ワシントンDCに到着してから昨年終わりまでの期間は、議会での勤務に向けた大学院(ジョンズホプキンス大学 ポール・H・ニッツェ高等国際関係大学院)での講義やオリエンテーションを集中的に受け、アメリカ政治に関する理解が飛躍的に深まりました。その中で特に印象的だったのが、民主党と共和党支持層のどちらにも共通してアメリカ国民全体に広まっている「政治不信」でした。これは、アメリカ連邦議会の在り方が特に90年代以降変容し、従来は超党派での法案成立が一般的だったのと打って変わって、近年は両党間での妥協が難しくなり、また共和党には「茶会派」と呼ばれるような純粋な保守政策に固執する議員が増え、共和党内の穏健派との路線対立が起きるなど、ますます「決められない政治」の様相が強くなっていることが原因としてあります。そのため、民主・共和両党とも、今年の大統領選挙に向けた予備選挙で「アウトサイダー」と呼ばれるワシントンDCの政界の本流に属さない候補(共和党では排外主義的な言動で人気を集めるトランプ氏が、民主党でも社会主義者を自称するサンダース上院議員)が、それぞれ予想外の大健闘を見せるなど、アメリカ政治の変調を感じさせます。
 
 民間企業の活力を引き出す産業政策の研究を中心に据えながらも、アメリカの現在そして将来の在り方を学ぶことが日本のビジョンを描く上で欠かせないことですので、この機会を生かして引き続き精力的に活動を続け、志の成就に繋げていく所存です。

2015年 11月

研修活動3・4年目 実践活動報告

恵飛須圭二/松下政経塾第34期生

実践活動報告[1]
昨年春からの実践活動も、1年が経過しつつあります。茅ヶ崎で過ごした基礎課程期間とは生活や環境も大きく変わりました。活動拠点の広島では経済界のみならず様々な分野で活躍されている志の高い方々とのご縁もいただき、刺激的な日々を過ごさせていただいています。
 
実践活動の研究テーマ「民間主導の公民連携によるまちづくり」の舞台として、PPP/PFIを生業としている地元企業へ、10月よりインターンを開始しました。当社は独立系マンション管理をメイン事業としておりますが、蓄積された管理ノウハウを生かして30件近くのPPP/PFI事業を手掛け、代表企業としても各方面の事業者と提携して実績を上げています。
一例を挙げると、「スポパーク松森」は、清掃工場の余熱を活用した温浴施設付きのスポーツジムを併設し、地域のにぎわいを創出し、環境負荷軽減を実現させました。「島根あさひ社会復帰センター」は、社会復帰センター(旧刑務所)の維持管理・運営を国やSPC(特別目的会社)、近隣の地域と連携して行い、地域に開かれた新しいモデルとしての施設の維持管理、運営に取り組んでいます。事業毎に異なる運営体制や事業の仕組みを学びつつも、現場に足を運び現場管理者と話をする中で、その実態について学び、日々新しい気づきを得られます。
 
本テーマの核心は「連携」というキラーワードの存在です。何故キラーワードと当てはめたかというと、「連携」という言葉は日常的に安易に使われているため、重要な性質を持っている反面、「連携」は必ずしも上手くいくものではないからです。環境や人、体制が都度変化する中で持続的に関係するアクターの利害を調整しながら「連携」することの難しさは、事業に身を投じることによって痛感します。実際は公民の二者間だけではなく、市場の利害を分け合う民民連携(競争)の性質上の困難さが現実として立ちはだかるためです。さらに、PPP/PFIでの公的機関の役割の明確化についても課題意識が芽生えてきました。どうしても個別最適になりがちな民間主導の事業展開において、しっかりとした公益性の確保や全体最適の視点を仕組みとしてどのように取り入れていくか、「住民の充実した生活実現」を第一に考えた行政の役割、まちづくりの仕組みについての理解と研究を深めていきたいと考えています。
 
松下幸之助塾主は「共存共栄」という理念をこの世に残しました。異なる利害関係にあるもの同士がお互いの利をとりつつも、調和を目指していかなければ行く先々は共倒れになってしまうと、頭では理解しつつも現場に立つとその難しさに直面し、塾主の言葉の重さに思わず唸ってしまう場面の連続です。私自身の目指すべきリーダーシップとは、こうした複雑な「連携(対立と調和)」の間に立ち、互いを生かし合うことだ、と思っています。まさしく、現場の中で明確な課題として突きつけられているように感じています。
本年は塾生活最後の4年目です。新しく入塾してくる同志とともに切磋琢磨し、お互いの志を成就させられるよう責任をもって働きかけていきたいと思います。

2015年 10月

研修活動3・4年目 高齢者が最期まで幸せに生きるためには

松本彩/松下政経塾第34期生

高齢者が最期まで幸せに生きるためには[1] 高齢者が最期まで幸せに生きるためには[1]
日本は世界一の長寿大国となっています。それに伴って様々な問題が叫ばれています。人間が幸せに暮らし、老い、死んでいくためには何が必要か模索をしています。
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はじめに
 
 私は高齢者が安心して生活でき、最期を迎えられる方法を研究しています。
なぜならば、私はここが解決しなければ、将来安心して年を取ることができないと考えるからです。
 人口問題研究所の調べでは2025年には高齢化率は約30%になると言われています。そのことにより、社会保障費が増大する問題や、介護離職の問題、また介護難民と言われる人たちが出るであろう問題など、さまざまな問題が叫ばれています。
 これらの問題に対して、解決策があるのか、今年度は自分の地元、神奈川県鎌倉市に拠点を置きながら実践活動を行います。
 
1、実践活動の背景
 
 私の志の原点は介護施設で介護士として働いていたことにあります。
 私の地元、神奈川県鎌倉市における平成27年度のアンケートでは「最期はどこで迎えたいですか」という質問に対して7割以上の人が「家で最期を迎えたい」と答えています。しかし、それに対して現実はほとんどの方が家ではなく、病院で亡くなっているという現状です。
 解決策として、「健康寿命を伸ばしていくこと」と「地域の中で高齢者が安心して生活していける環境を作っていくこと」という2点を考察したいと考えました。
 最期までできる限り元気でいるためには「その人の役割があること」が鍵であると考えます。下記写真*1は認知症対応型のグループホームでの光景です。右の方は重度の認知症ですが、家事をする記憶は残っているため、できることを職員と一緒にやっています。
 現在、私の住んでいる鎌倉市近郊の施設を中心に、高齢になって疾病や障害を負っても働ける方法を模索しています。その人のできないことではなく、できることに光を当て、できる限り長くやりたいことができる環境を作っていくかということを地域の人たちとともに考えています。
 
 また、地域の中で高齢者が安心して生活できる環境については医療や介護の専門職だけではなく、様々な業種の人との連携が重要であると感じます。どのようなことができるのか、地域の方々と模索している段階です。*2の写真が会議の様子です。
 
2、今後の活動
 
 今後の活動として、高齢者の活躍できる場、すなわち要介護認定を受けても働ける場所・活躍できる場所を作っていきます。できないことに光を当てるのではなく、できることを引き出せる社会にしていきたいのです。
 また、介護や医療の専門家だけではなく、広く様々な分野の方に関心を持ってもらえるような会議や働きかけをしていきたいと思っています。
 超高齢化を「問題である」と報じることが多くあります。しかし、超高齢化は一つの現象であり、そのこと自体は問題ではありません。ただ、人生の先輩が多くいるということです。
 この時代をより豊かに生きていけるように、今後も地元を中心に活動をしていきます。

2015年 9月

研修活動3・4年目 “民間外交官”が担う、日本の広報外交

佐野裕太/松下政経塾第34期生

“民間外交官”が担う、日本の広報外交[1]
日本人1人1人が“民間外交官”として世界へメッセージを発信していくことが、より良い日本の未来をつくります。
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 今、世界は、軍事力のみを競う時代からイメージも競う時代へと変化しています。国際社会における日本のイメージを高め、世界中の世論を味方につけることが、日本の大切な平和や繁栄を守っていくうえで、とても重要です。近年、このような考え方は「広報外交」として大きな注目を集めています。
 世界の国々からの信頼をより高めるために、日本という国は、自由や民主主義といった考え方を大切にし、もし他の国との間に問題が起きても決して武力を用いてそれを解決しようとしないということを、海外の人々へもっと伝えていくべきです。
 日本の近くには、日本の何倍ものお金や人を使って、自分たちの主張の正しさを訴えている国々があります。日本も、国際社会への訴えかけを、今以上に戦略的に行っていく必要があります。
 
 私は、このような思いのもと、実践課程に入った2015年4月から、日本の広報外交・国際協力に関する学びを深めてきました。また、ただ学ぶだけでなく、1人の日本国民として、自らのできる範囲の中で広報外交を行いたいとの思いから、海外の学生・経営者・政党関係者等様々な方にお話しをさせていただく機会をつくってきました。
 5月には、台湾・高雄の国立中山大学の大学生・大学院生に対して講演することができました。「台湾がこれからの国際社会で生き残っていく道は、広報外交を通して台湾の国際的なイメージを維持・向上させていくことである。ここ最近、多くの台湾人から台湾の未来を心配する声を聞くけれども、私は決して悲観的な見方をしていない。現在の台湾が基礎としている自由や民主主義を堅持し、積極的に諸外国との関係を持ち続ける努力を続けていけば、台湾の未来は輝かしいものになると思っている」といった内容のお話しをしました。
 6月には、ベトナム・ホーチミンから来日したサイゴンCEO協会の経営者グループに対して、日本とベトナムとの関係強化の必要性についてお話しをすることができました。「日本とベトナムとは、協力して『武力による問題解決は絶対に許さない』というメッセージを国際社会に出し続けていく必要がある。政府間同士の関係を強くしていくことも大切ではあるが、私たちのような民間同士のつながりもしっかりと強化していくことで、日本とベトナムとの関係をより強固なものにしていきたい」という私の考え方をお伝えしました。
 
 1人の人間の持つ発信力には限界があります。経験の少ない若者の話しには説得力が欠けるところもあるかもしれません。でも、こうしたわずかな努力の積み重ねが世界の平和につながるとの思いを持って、地道な活動を行ってきました。 
 情報化が進み、市民社会の影響力が強まる中、一国の広報外交を政府が担うだけでは不十分な時代になっています。民間が果たすべき役割は、今後大きくなっていくことでしょう。日本人1人1人が“民間外交官”として世界へメッセージを発信していくことがより良い日本の未来につながるとの思いを持って、今後も研修を行っていこうと思っています。
研修活動3・4年目 ヨーロッパにおける地域の多文化共生~実践活動報告

岡﨑広樹/松下政経塾第33期生

ヨーロッパにおける地域の多文化共生~実践活動報告[1] ヨーロッパにおける地域の多文化共生~実践活動報告[1]
2014年度の芝園団地における実践活動を経て、現在は欧州で研修しています。今回は、インターカルチュラル・シティズ・プログラム(The Intercultural cities programme、以下ICC)の加盟都市を訪問した際の学びを報告します。ICCとは、欧州を中心に実施されている、人々の文化的多様性を都市の発展に活かすためのプログラムです。
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 現在、地域で外国人住民と顔の見える関係を育む方法を、オランダを中心に学んでいます。その理由は、今後、日本における外国人住民が増加していく中、隣近所では、国籍を問わず顔の見える関係を育みながら、大災害時の助け合いを必要とするはずだからです。
 欧州では、地震などの自然災害が起きないため、住民間の助け合いを想定していないと聞きます。しかし、日本では、避難所運営などで隣近所の助け合いを必要としています。従って、隣近所では、平時からの顔の見える関係が、必要ではないでしょうか。つまり、備えあれば憂いなしです。
 
 今回は、その方法を考える上で示唆的な、ICC加盟都市の取り組みを紹介します。ICCでは、異なる文化的背景のもたらすマイナス面ばかりに目を向けず、そのプラス面を都市の活力にするため、各都市の実践の取り組みを共有するなどしています。
 『The Intercultural City』の共著者であるフィルウッド氏は、異なる文化的背景の人々は、自然と顔の見える関係にならない。それには、その理由、動機、交流の場とそれを促す組織を必要とすると指摘しています。
 そこで、ICC加盟都市であるイギリスのロンドンのルイシャム区、イタリアのレッジョエミリア市にある社会統合の一翼を担う組織を訪問しました。
 
 ロンドンのルイシャム区は、区政の基本理念“平等”を実現するため、誰もが快適に感じる町作りを、ハードウェアとソフトウェアの二つの視点から取り組んでいます。
 ハードウェアとは、建物や公園などの場所を、多くの人々が快適に感じるものにすることです。それには、近隣住民の様々な意見を集約しながら、近隣住民の快適に感じる場所とは何かを、明らかにするプロセスを必要とします。
 ソフトウェアとは、快適に感じる町作りのプロセスに、住民を巻き込む仕掛けのことです。ヤングメイヤーやローカルアセンブリーなど、老若男女、国籍などを問わず、多様な人々を巻き込む仕掛けを用意しています。これらの仕掛けが、多様な意見を集約して、誰もが快適に感じる町作りにつながるのです。
 
 また、イタリアのレッジョエミリア市では、インターカルチュラルセンター”MONDINSIEME”を訪問しました。同市の人口の約20%は、移民の人々です。そのため、積極的な統合政策を実施しています。
 インターカルチュラルセンターでは、学校における生徒同士の相互理解を促すワークショップの実施、市内に約40ある国別組織によるイベントなどの支援、メディアを通じたポジティブな情報発信、国際的な連携を通じた若者の育成などに取り組んでいます。
 ここでは、職員の方々へのヒアリングが最も印象的でした。一様に皆さんが、多くの失敗を重ねて、その都度自分の偏ったものの見方を修正し、現在、この組織の一員として働いているとおっしゃっていました。
 最初から多様な背景を理解して、上手に振る舞える人は稀です。誰もが、様々な経験を通して、徐々に多様なものの見方を育むはずです。日本人は、外国人に対して閉鎖的といいますが、外国人と接する機会も少ないので、むしろ当たり前ではないでしょうか。
 しかし、最初は上手に接することができなくても、多様な人々と顔の見える関係を育める、と職員の方々のご経験を伺いながら実感できました。
 
 私たちは、外国人住民と一括りで表現します。しかし、その国に住む理由は、歴史的背景や経済的状況など、実に多様です。従って、住民間の顔の見える関係を育むには、地域の住民の特質を見定めて、その特質に合った正しいアプローチを決めて、責任をもって実行する人々と、その活動組織を必要とするのです。
 また、異なる文化的背景は、様々な問題を引き起こすかもしれません。しかし、それでも、同じ時代に同じ時間を同じ場所で共有する住民です。従って、いざという時の顔の見える関係を促進する専門人材と組織が、地域において必要になると考えています。
 
参考資料:
財団法人 地方自治研究機構 『自治体法務研究NO.28』 2012年

2015年 8月

研修活動3・4年目 日本企業の繁栄に向けて

斎藤勇士アレックス/松下政経塾第34期生

日本企業の繁栄に向けて[1]
日本経済を発展させ、国民を豊かにしてきたのは、多様な日本の企業である。
日本経済をさらに発展させ、より豊かな社会を築く為に、起業の増加や企業統治の向上に繋がる取り組みを行いっていきたい。
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 日本は、これまでの発展によって、世界に誇れる平等で豊かな社会を築いてきた。しかし、経済力に裏打ちされたこの日本の豊かさは、長引く不況や、政治が必要な改革を避け続けたこと等を原因として、それを支える社会保障制度や国家財政が危機的状況にある。日本経済を世界有数の地位に引き上げた力の源泉である民間企業の活力を引き出し、より豊かで持続可能な日本経済、社会を築くことが私の志である。
 
 日本の企業環境を見た際、着目すべき問題点がいくつかある。まず、既存企業によるイノベーションや消費者から必要とされるモノ・コトをつくる力の欠如である。語りつくされたテーマだが、かつてはファスナー、ウォークマン、電卓を発明し、高性能のブラウン管テレビ、スーパーマリオなどの大ヒットゲームといった、新しい価値を生み出し世界を席巻した日本企業は、イノベーションを起こす力を失ってしまったのだろうか。そうであるならば、何故なのか。
 また、日本において起業が低調であることも指摘されて久しい。アメリカやイギリスでは、全事業所にしめる新規事業所の割合は毎年10%以上あるのに対して、日本では4%程度であるとされている。起業数とイノベーションの増加には相関関係があり、日本企業が新しい価値を生み出していくためには、起業を活性化させることが非常に重要になってくる。日本政府も過去20年近くに渡り起業活性化に取り組んできたが、なかなか目立った成果をあげられてない現状がある。なぜ日本で起業が増えないのか。そして起業を増加させる為に真に取り組むべきことは何なのか。
 最後に、上記二点に加えて、見逃せない点として企業統治(コーポレートガバナンス)の問題がある。これは今まさに経済界に衝撃を与えている東芝の不正会計問題に象徴されるが、数年前のオリンパスの粉飾決算や、今年に入って株式市場を動揺させた新規上場会社の大幅な業績予想の下方修正(当該新規上場会社の名前をとって、gumiショックと呼ばれる)など、日本の企業統治体制が問われる事態が続いている。この問題を乗り越えない限り、日本企業の発展はありえない。なぜ日本では企業統治が軽視され、同じような粉飾の問題が繰り返されるのか。企業統治と日本企業の低利益体質、国際競争力の低下には因果関係があるのか。どのようにすれば、日本企業の企業統治体制を改善できるのだろうか。
 
 私は今、上記の様な問題意識に基づき、企業の経営を学ぶ研修を行っている。実践活動が始まった4月から、京都のベンチャー企業でインターンを行い、社内制度の構築、事業計画の策定業務を行い、企業の経営そのものと、ベンチャーの置かれている環境を理解しようとしている。この後、9月からは、アメリカ議会でのフェローシップ(アメリカ政治学会が主催するCongressional Fellowship Program)に一年間参加し、主に米国の起業促進策や企業統治に関する規制などを中心に、しかし一方で幅広く米国の産業政策を学ぶ予定だ。米国の政策や社会のありかたを真似ることが日本の繁栄に繋がるわけでは無いが、私が日本企業の問題点として挙げた三点いずれでも、日本よりアメリカが先行している事は明白であり、アメリカでの研究は学びが多いものになるはずである。
 実践者として日本の企業の、ひいては日本経済と日本に住む人の繁栄に貢献できるよう、実践活動の期間を活用して、上記問題の解を見出すべく、成果を上げていきたい。

2015年 7月

研修活動3・4年目 自治体の経営と哲学の探求

恵飛須圭二/松下政経塾第34期生

自治体の経営と哲学の探求[1] 自治体の経営と哲学の探求[1]
私は、それぞれの自治体が特性に応じた地域経営を推進していくことが地方創生の要諦であると考えている。実践活動においては、現地現場に基づき経営における哲学(基本理念)を確立させることに取り組む。
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 地方自治体を取り巻く環境は自治体ごとに差はあれども、決して楽観視できるものでないことは周知の事実である。人口減少に伴う財政状況は税収の減少のみならず高齢化による扶助費の爆発的増、バブル期に建設された公共インフラの維持管理費用負担など明るい見通しにはない。私は、今こそ自治体の自治たる所以である“自治力”の真価が問われており待ったなしの警笛が鳴らされているものと確信を得ている。右肩上がりの成長戦略を基礎とした時代はとうに幕を閉じており、時代にあった経営感覚と新たな哲学が必要とされていると考えている。
 
 私は“決して高度ではないが豊かな生活”に納得感を持って生活をすることが各人の幸福感を充足していくことにつながると考えている。力任せの頑張れ政策から脱却し、体力に見合った調和戦略を住民が皆で知恵を出し合い創造していくということである。つまり私の研究における命題は「地域に住む人々それぞれが自身の可能性を信じ努力し、創意に富んだアイデアが溢れるまちづくり」を推進していくことであり、新しい豊さの尺度を提示することにある。
 
 実践活動においては、中山間地域の暮らし、公共サービスのあり方について活動をスタートさせている。具体的には過疎高齢化が進む地域の特性を生かした地域づくりである。例えば、小学校での食育事業や自治会が事業主体者となる学童保育など集落がコンパクトである特徴を生かしたキメ細かな教育体系モデルの確立、廃校が懸念される高等学校での住民や教員を中心として始まった地域再生活動などがある。過疎地域においては、放っておくと現状変更を余儀なくされるという危機感から地域住民が一丸となり自治力を発揮し、自発的な地域づくりが活発化する好事例を見ることができる。
 経営の効率化の観点からは市街地にコンパクトシティを推進していくことが先決事項であり、かつ医療、福祉、教育などの基礎機能を集約させることが重要であることは理解しつつも、過疎地である中山間地域の公共サービスの劣化は顕著である。バスの運行は朝晩に1、2本のみであり、スーパーへの買い物や病院への通院は高齢者のみの世帯が多く自家用車がないために、タクシーを利用するしかない状況も珍しくない。特に、私が活動拠点におく広島県の県中央部から以北地域はほとんどが山間部にあり、公共サービスの質の維持においても新たなビジネスモデルの提案が必要であると考える。具体的には、モビリティーサービスを適用した上水道、食料品提供、農作物引き受け、図書館、美容、見守り支援を含めた医療・サービス等の地域事情に合わせた複合的ビジネスモデルのあり方を住民の方々と考えていきたいと考えている。そのため、今後は産学官民パートナーシップの在り方、住民自治の活性化についてさらに踏み込んでいくつもりである。
 
 研修において越前市の山間部の集落にある白山小学校に行かせていただいた。全校生徒が75名程の小さな学校である。教室の窓から外を眺めると広大な田園風景があり、気持ちのよい風が吹き抜ける。白山地区は、年々人口が減少しているいわゆる過疎地域ではあるが、「日本の里100選」に選ばれた自然豊かな地域にあり、里山を利用した食育や環境保全教育の実施や自治会が経営する学童保育など、地域の方々が一蓮托生となって子どもを育てる姿があり感銘を受けた。このような事例を現地現場に赴き見るにつけ、自治体が直面する人口減少や過疎高齢化等に内在する課題は地域によって三者三様であることがわかった。その解決策は画一的な政策によるものでは間に合わず、地域に暮らす住民の方々が発意をもって奮起することでしか解決できないものである。こうした真に自治力が問われる時代にあって、一市民として地域の仲間とともに知恵を出し合い、地域の資産を生かした暮らす人たちのアイデアが溢れる地域づくりを着実に進めていきたい。地域のビジョンを創り実現に向けて各々が汗をかく姿こそが次の世代へ引き継がれる何よりも強いメッセージであり地域哲学に通ずるものと信じている。

2015年 6月

研修活動3・4年目 かけがえのないもの~価値を知り、生かし、繋ぐ好循環を生む

塩根嗣理/松下政経塾第33期生

かけがえのないもの~価値を知り、生かし、繋ぐ好循環を生む[1] かけがえのないもの~価値を知り、生かし、繋ぐ好循環を生む[1] かけがえのないもの~価値を知り、生かし、繋ぐ好循環を生む[1]
持続可能な社会づくりとして、各地域の自然に根差した生き方が必要であると考えます。各地域の自然やその中での営みが本当に「かけがえのないもの」として、価値が置かれる取組みを、様々な地域・人を訪ねながら模索しています。
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 持続可能な社会づくりにおいて、地球規模では環境問題が、国内では地方創生が大きな課題の一つとなっています。私は、地方の各々の自然に根差した営みを取り戻す、あるいは現代なりに創ることで、地方創生と環境問題が解決していけると考えています。そのためには、まず、自然や自然に根差した人間の営みを、本当に「かけがえのないもの」として、肌で感じることが欠かせません。
 
 「こんなものしかないけど」
 「いやいや、すごく贅沢です」
 田舎で食事を御馳走になっている時の、よくある光景です。
 食事に限らず、そこに住む人の当たり前、何でもないものが、外部の人にとっては、感動するくらいに価値のあるもの・ことである場合が多いと感じます。
 
 最近、地域おこしや体験学習会などを行ったり、参加させていただいたりして、改めて感じたことは、価値づくりとは、一方的に価値を知らしめることではないということです。
 
 地域おこしや体験学習会では、当然、人が交流します。異なる地域、様々な年齢、組織の人々が交流します。趣味や嗜好も様々です。その間で、実に本当にさまざまなもの・ことについての話がなされます。そして、様々な気付きをお互いに得て、それを生かすアイデアも付け加えられていきます。さらに価値を知り得た人が、他の人に伝えたり、その場に誘ったりします。結果、また新たな気付きやアイデアが浮かび、さらに次の人に伝わり……まさに価値の共有、創造の連鎖です。
 
 只見町での地域の魅力を再発見するツアーに参加させていただいた時の、田の手植えでは、東京などから参加の方はもちろん、地元の方も「はじめて」「三十年ぶり」との声が上がりました。道行く人も珍しそうに眺め、飛び入りで参加します。休憩時間には、同じ泥の中で共有した体験に、話が弾みます。世代、地域、職種、農業経験などを超えて、次のアイデアやこういう人も連れて来よう、只見でこう、東京でこう展開などのアイデアが広がります。
 笹巻きづくりでは、各家庭の小技の交換が始まります。笹一つを洗ってから保存し、また使うまでの最適な業がその場で築かれ、伝承されていきます。その知恵に他地域からの参加者、若い世代の参加者は感心し放しながらも、自らも作ってみようという気になります。そして、笹巻きが食べられていた背景や笹採りの話から、地域の伝統的な営みや自然に関心も及んでいきます。そして、よそ者、若者なりに、笹巻きを売る方法から、笹がこれにも使えないか、笹のある自然を守るにはなどのアイデアや意見がでてきます。
 群馬県神流町での田舎暮らし体験塾では、ワラビの茹で方一つにも、自然の中で生きる知恵、自然の恵みを引き出す業を感じます。その田舎の暮らしに魅せられて、毎年、人が集います。集った人がそこでの感動した体験とおいしい土産とともに、その魅力を伝え、少しずつですが、遠く離れた地でも神流町の自然や田舎暮らしが広められていきます。そこに価値を感じた人たちがまた集まってきます。人が集まれば、自然と自らの楽しみとして、この場の生かし方や次の会でのアイデア出しなどが始まります。
 
 このような流れで、価値を知り、生かす好循環が生まれています。
 外との交流によって、地域の輝きをみるのは、まさに本来の「観光(=観国之光;国(地域)のすぐれたものを心こめて観る/誇りをもって観せること」の実践です。
 そして、この価値を知り生かす好循環が「かけがえのないもの」を、多くの人に届けているように感じます。
 
 その源流は、各地域の自然にあるはずです。各地域には、まだまだ地元の人しか知り得ないもの・ことが、そっとそのままということも多々です。もちろん、地域や小さな組織でのみ大事に繋いでいかなければならないもの・こともあると思いますが、そのもの・ことを共有してこそ、生まれる新たな価値もあります。価値が共有されるからこそ、そのもの・ことを大事に繋いでいく動きも生まれます。
 
 私は、自らが親しんできた「水」「魚」をその源流としながら、「かけがえのないもの」を肌で感じられる場を、まずは集える人で共有し、共に育てています。
 ウナギの資源が減少して、今は食べられないからと、ウナギのすみ家づくりを行っていると、参加者の目は他の生き物や、川以外にも向けられます。ウナギの生態の話になると、遠く海外の海まで話に入るので、自然や地域の繋がりについても話が及びます。また、自然学習会では、今までは、私の価値観で、“雑魚”として扱っていた魚が、子供たちから、すごく価値のあるものとして教えられることもあります。日常の生活でも、私が釣った川魚は食べなかった甥や姪が、自分で釣ったカワムツやニゴイは食べておいしいと言います。漠然と「釣りにいきたい」から、「どこどこに何を釣りにいきたい」とまで言うようになってきます。自らが触れたものに、小さい子なりの価値を見出しているように感じます。
 今日もどこかで自然と人と交流しながら、様々なもの・ことの価値を知り、生かし、繋いでいく活動を展開中です。「かけがえのないもの」を多くの人と共有して、持続可能な社会づくりに繋げていきたいです。

2015年 4月

研修活動3・4年目 農産物のブランド化を通した農業価値創造

林俊輔/松下政経塾第33期生

農産物のブランド化を通した農業価値創造[1] 農産物のブランド化を通した農業価値創造[1] 農産物のブランド化を通した農業価値創造[1]
私は日本農業の価値創造を目指して、実践活動中である。価値創造の一環として、食の地域産品のブランディングを通じて、農業を核とした地域活性化に取り組む。
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 日本全国には、地域全体として長年培ってきた特別な栽培や生産の方法や、気候・風土・土壌などの生産地の特性によって育まれ、高い品質と市場の評価を獲得するに至った産品が数多く存在している。
 
 農業生産現場では、例えば「名古屋にんじん(仮称)」として売られている人参の品質を高め、揃える努力は各生産者に任せられており、極端なことをいえば、同じ名称を冠した産品の中に品質のよいものと、品質の悪いものが混在しているというようなことも往々にして起こりえるのである。
 
 六次産業化や地方創生といった言葉が飛び交い、食ブランド、地域ブランドに対して世間の意識が高まっている反面、農業生産者や加工業者などと議論する中で、商標を登録することと、ブランドをつくることが同義で議論されるなど、それを支える現場においてはあまりに認識が不足しているように感じる場面が少なくない。
 
 生鮮野菜の中で最大の売上を誇るトマト市場において、独自のポジションを築きあげている「アメーラ」を生産するサンファーマーズの稲吉社長は、ブランドづくりの大前提は「品質」「安定供給」「安心・安全」だという。ネーミングやパッケージといった小手先のプロモーションのみに囚われるのではなく、ブランドを支えているのは、化粧ではなく、商品力そのものであるという認識を関係者間で共有し、商品力を高める活動に取り組む体制をしっかりと整えていくことがまず第一歩であろう。
 
 平成26年6月に「特定農林水産物等の名称の保護に関する法律(通称:地理的表示法)」が成立し、これらの地域の財産ともいうべき産品の名称を知的財産として保護していく制度は整ってきた。本制度では産品の名称だけでなく生産地や品質などの基準とともに登録し、地域産品の品質およびその管理・運用体制そのものを制度として保護していくことになる。
まずは、地域の関係者が集まり、これまで曖昧であった品質などの基準づくりや、管理・運用体制を真剣に議論していくことが、本当の意味でのブランドづくりとなり、それを支える国内外の消費者との絆、信頼関係が築かれていくのだと考える。
 
 私自身も現在は、某ギンナン産地の現場において、産品の基準づくり、体制づくりを、生産組合とともに地理的表示の先行事例の形成を目指して活動中である。そして、地域産品のブランドづくりに貢献するために、農業の品質管理のトップランナーである日本GAP協会と協力し農業分野における知的財産活用に向けた場づくり、浸透活動に取り組んでいる。
地域産品のブランディングは農業の価値、地域の価値を高め、地域活性化だけでなく、ひては日本国全体に便益をもたらすことに繋がっていくことと信じ、引き続き活動していきたい。
 
※一般財団法人日本GAP協会 (http://jgap.jp/
JGAP(Japan Good Agricultural Practice)とは、農林水産省が推奨する農業生産工程管理手法の一つで、日本の標準的なGAPとして世界的にも高い評価を得ており、先進的な農協や農場で導入が進んでいる。日本GAP協会は、JGAPの普及と審査認証制度の統括を担う。
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