論考

Thesis

まちづくり条例

良好なまちづくりに向けて~京都市まちづくり条例~

 地方自治にとって、開発事業など土地利用は非常に重要であり、市民生活を左右しかねない。現行の法体系では「都市計画法」「建築基準法」などで基準が定められているが、基準がいずれも画一的なため個性あるまちづくりを進めたい自治体にとっては一つの障壁となっている。大分県湯布院や神奈川県真鶴のように住民・行政の努力により積極的にまちづくりを行っている自治体も存在するが、京都市も昨年6月に「京都市土地利用の調整に係るまちづくりに関する条例」を制定しまちづくりの新たな局面を迎えている。

  • 不十分なパートナーシップ
     京都市では、事ある毎に景観論争が巻き起こる「習慣」がある。有名な「京都ホテル」問題は、宿泊者の参拝拒否にまで騒動が広がった。2年前に開業した「京都駅ビル」も大きな波紋を呼んだ。今年に入っても市内中心部で葬儀場問題(木屋町)、高層マンション問題(御池)が起こっている。京都の景観に関するコンセンサスが市民の間にも存在していないことも問題であるが、住民・行政・民間の間でまちづくりに関するパートナーシップが十分ではないことが大きな問題である。 今回の条例は、良好なまちづくりには市民・行政・事業者(民間)各々が積極的に責任を果たすことが不可欠であるという理念から出発している。以下具体的に見ていく。
  • 条例の内容
    (1)開発事業構想の届出 市街化区域において10,000?以上の大規模開発、また1000平方メートル以上の集客施設開発を行う事業者は、具体的設計等に入る前に開発事業の構想を都市計画化に届出る必要があり、それは3週間縦覧される。

    (2)市民への周知 事業者は、事業構想について周辺住民を対象とした説明会を開催しなければならない。事業者は説明会の状況を市長に報告するが、市民は意見書を市長に提出することができ、事業者はそれに回答しなければならない。

    (3)市長の役割 市長は事業者に対して必要な指導・助言ができる。それでもまちづくりの方針に一致しないときは勧告、土地利用調整審査会への諮問(6人以下の学識経験者からなる委員会)、手続きの公表、ができる。

 開発事業に一定の枠をはめたこと、構想段階での届出・住民説明会を義務付けたこと、は評価できよう。しかし意見書や指導・助言の拘束力はどこまで有効なのか担保されていないし、結局事業者が押し切ってしまうという場面も見られるだろう。

 最も評価されるべきはまちづくりへの積極的な参加を市民の責務として規定したことである。市民によってまちは如何様にも変わる。事業者のまちづくりへの理解とともに、地域社会に対する市民の積極的取り組みと行政とのパートナーシップが重要である。次の段階はこのパートナーシップの制度化であろう。

 参考文献「京都市土地利用の調整に係るまちづくり条例」

Back

二之湯武史の論考

Thesis

Takeshi Ninoyu

松下政経塾 本館

第21期

二之湯 武史

にのゆ・たけし

プロフィールを見る
松下政経塾とは
About
松下政経塾とは、松下幸之助が設立した、
未来のリーダーを育成する公益財団法人です。
View More
塾生募集
Application
松下政経塾は、志を持つ未来のリーダーに
広く門戸を開いています。
View More
門