論考

Thesis

首相公選制実現に向けて

最近、首相公選制を実現しようという動きが再び、活発化している。
 先月、休眠状態にあった「首相公選制を考える国会議員の会」が活動を5年ぶりに再開したのを始め、民主党と自民党の若手議員が雑誌に相次いで投稿し、独自の首相公選論を提唱するなど、今の首相選出のあり方を考え直そうという気運が高まっている。ある世論調査では国民の7割か8割が首相公選制の導入を望んでいるとされ、「新しい日本をつくる国民会議」が行った国会議員への首相公選制に対するアンケートによれば54.1%が「首相公選制を前向きに検討すべきだ」と答えるなど実現へ向けて勢いは加速しつつある現状である。

 そのような中、私は政経塾の塾員でもある小田全宏氏が立ち上げた「首相公選の会」に参加することとなった。その問題意識は、今年度の研修の中でアメリカの大統領選挙を見ることができたことに遡る。
 アメリカにおいては党の代表を決める課程を含めて、ほぼ1年間、誰が新しいリーダーにふさわしいかを議論する。政策、人間性など長い期間に渡って候補は国民のテストを受けるのである。またその間、候補者は国民との長い対話の中で政策の策定も同時に行われる。それは大衆に迎合するわけでもなく、国民がどういう政策を望んでいるかを世論調査等で把握しながら、国の行く末を国民の合意の下、決めていく過程であると言えるであろう。翻って日本においては民意とかけ離れたところで実現しようとする政策も不明瞭なまま首相が決まり、リーダーシップを発揮しえずころころ首相が変わると言う事態が続いている。

 中曽根首相以降、短い間に11人もの首相が失政を犯しては変わり、国は益々低迷の度合いを深めてきた。今、必要なのは日本の経済が低迷する中で必要な改革を断行できる強いリーダーシップを持った首相であるだろう。
 先ほども述べたが、今の首相の決定過程に疑問を持つ国会議員は過半数である。そうでありながら、その仕組みを政治家が変えられないのであれば政治の意味もないであろう。それではますます政治不信も深まりかねない。「首相公選の会」は国民の側から政治を変えるというのを目的に活動を始めた。ある世論調査では国民の7,8割が首相公選制を望んでいると言う結果を伝えていたがその声を国政に届け、国を変えていこうという運動である。その運動と言うものはまず、これに賛同する方々の署名を集める。

 これは国民の1割1260万人を目標にしているがインターネット(http://www.shushokosen.org/)でも署名を集めるのが新しい点だと思われる。その後にこれは後述するが憲法改正を必要とするものであるから署名を使って、国会議員全員にアプローチし、賛同者を増やし、憲法改正をして首相公選制実現と言う計画である。

 憲法改正については、我々は6条を「天皇は国会の指名に基づいて内閣総理大臣を指名する」を「国民の指名に基づいて」にする。また、67条を「内閣総理大臣は国会議員の中から国会の議決でこれを指名する」を「国民の議決に基づいてこれを指名する」に変える方針である。

 会は首相公選制を実現する際、最低限に必要と考えられる改正条項を上記のように提示したが、今後、制度を具体的に構想していく中で上記以上にも改正の条項は必要とされるであろう。首相公選を論じる際、提示される疑問として「議院内閣制か?大統領制か?」、「不信任はどうするのか?」、「候補の要件」等がある。これらも憲法改正などを必要としようが会としては答えを出してない。それはこの会が国民運動であり、首相公選への気運を盛り上げる中から賛同者を募り、衆知を集めながらあるべき形を考えていこうと言うことからである。
 しかし、私は「議院内閣制か?大統領制か?」についてはどちらにも捕らわれすぎることなく、日本独自の姿を考えていきたいと思う。その他、一番大きな反対の論拠として「衆愚政治の危険性」がある。しかし、私は首相公選制の導入は政治における幕末の黒船のようなものであると思う。

 確かに導入当初は国民も不慣れであるから、間違った選択をするかもしれないがそこで危機感を抱き、妥当な方向へ収斂していくものと信じる。実際にアメリカ国民は間違った大統領の選択をしているとは思えないし、選挙の際に党首を次期首相候補と明確に提示して実質的に国民がリーダーを選んでいるといえるイギリスにおいても然りである。日本だけが失敗するとは思えないし、失敗するならばそれはこの日本は沈んでいくしかないであろう。その時、日本はは自分の国のリーダーもまともに決められないのであるからだ。これについては制度の運用の仕方でリスクを回避することができるであろうと考える。首相の資質を国民が問うことのできるアメリカのような討論会を併用すべきであろう。

 私は現状が国民がリーダーの上げ足取りをして首相をころころ変えるのを危惧する。先ほども述べたように中曽根氏以降の首相の決まり方が既に取り替え、引き換えの連続であった。塾主は「政治に生産性を」と言われたがそのような政治のあり方には生産性は産まれないであろう。それよりも今のこの国には建設的な議論をする場が必要である。
 やめさせるのは簡単である。それよりも次のリーダーを選び国を建て直すことは難しいことなのであり、機能不全を起こしている今の首相制度を問い直し、新しいものをつくっていく挑戦をこれからの新しい世代を担う我々はすべきだと思う。

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平山喜基の論考

Thesis

Yoshiki Hirayama

平山喜基

第20期

平山 喜基

ひらやま・よしき

衆議院議員鬼木誠 秘書

Mission

選挙と地方分権から民主政治を考える 食料問題 首相公選制

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