論考

Thesis

グローバル・ガバナンスへ向けて ― WTO競争ルール策定への提言 ―

1)はじめに

 T.クーンのパラダイム理論(1)を紐解くまでもなく、私たちは自らの生きている時代のパラダイムに規定されて生きている。一時代を生きる人々がどのような枠組みによって世界を捉えるかにより、その時代が決まる。次代を担う一員として21世紀を構築してゆく私たちの責任は大きい。私たちが、どのような枠組みで世界を捉え、統治してゆくかによって、21世紀の世界は全く異なったものになる。ベルリンの壁崩壊後10年、世界経済は、未だにブレトン・ウッズ体制にかわる世界経済秩序を見いだせないでいる。しかし経済秩序を構築する基礎として「競争を重視する」という価値を次第に各国の間で共有しはじめている。欧州委員会、国連貿易開発会議(UNCTAD)、そして世界貿易機構(WTO)という世界経済秩序の確立に大きな役割を果たしている国際機関で筆者が研修した経験に基づき、本稿においては、様々なグローバル・ガバナンスの試みの中でも、特にWTOにおける競争ルール策定というテーマを採り上げ、日本がここにどのように参画してゆくべきかを検討したい。

 まず、第二節においては、知的所有権の保護と競争政策というそれぞれ別の理念に基づいた産業政策が、どのように世界各国に受容されてきたか、そして第三節では特に、競争重視の産業政策に焦点を当てて検討する。第四節においては、この競争重視の産業政策に基づいた新たな国際経済秩序構築の試みの一例として、WTOの「貿易と競争の相互作用に関する作業部会」における交渉を概観し、第五節において、WTOでの競争政策に関する協定締結への提言をおこないたい。

2)『社会化と覇権』

 イッケンベリ(G.J. Ikenberry)とクープチャン(C.A. Kupchan)は『社会化と覇権』(2)のなかで、第一次世界大戦後のウィルソン大統領、第二次世界大戦後のトルーマン大統領が、どのように自らの覇権を他国へ浸透させていったかを分析し、二つの方法を示している。
 第一が、経済支援または反対に経済制裁などの物的インセンティブによるもの。そして第二が、他国の政治指導者が覇権国のパラダイムを自国のパラダイムとし、そしてそれに基づいて覇権国の描く国際秩序のヴィジョンを自らのものとして内在化する(覇権国から見れば、内在化するようにしむける)ことにより、覇権を確立してきたとする。もちろん両者は排他的なものではなく、むしろ相互補完的なものではあるが、歴史上の事例研究をとおして、イッケンベリは後者の重要性を強調している。

 冷戦終了後10年を経た現在、世界各国は安全保障、経済の両面で、国際秩序の青写真を描ききれずにいる。特に経済面での国際秩序を考えると、1999年12月の世界貿易機構(WTO)シアトル閣僚会議の失敗を挙げるまでもなく、未だ国際秩序のヴィジョンは共有されていない。このような状況下における、欧米諸国を中心とした新世界秩序構築の試みを、スーザン・セル(Susan K. Sell)がイッケンベリの枠組みを使って分析している(3)

 セルは、国際経済秩序構築の試みの一例として、知的所有権の保護と競争政策の実施を挙げる。知的所有権の保護は、発明者らのインセンティブを高め、イノーベーションを促進することを目指している。これに対して競争政策は、自由競争を確保することによって、イノベーションが促進されるとの理論に基づいて実施されている。1990年代以降、途上国は知的所有権法と競争法を次々に制定している。知的所有権法については、1990年代、米国は自国の知的所有権保護を目的として、悪名高いスーパー301条などの制裁措置などを用い、途上国に知的所有権法の導入を迫った。反対に競争法は、米国が制裁を用いたというよりは、途上国自身が競争政策を自らの産業政策として内在化し、自主的に制定したという側面が強い。
 先のイッケンベリらの枠組みによるならば、知的所有権は物的インセンティブによる制定、競争法は競争重視という価値の内在化の結果ということができる。興味深いことに、この二種類の法律の執行状況は、それぞれ対照的である。知的所有権法に関しては、制定後も、途上国はその実施に消極的であるのに対して、競争法は、ブラジル、韓国といった多くの国々で積極的に執行されはじめているのだ。では、この競争重視という価値はどのように確立されてきたのだろうか。

3)競争重視の価値の受容

 上述のとおり、1990年代以降、競争を重視するという価値が世界中に広がりを見せている。1997年の国連のWorld Investment Report (4)や同年のWTO年次報告書のテーマが競争政策であったことも、この世界的な潮流を示しているといえよう。競争政策は、従来、米国、日本、ドイツなどごく限られた国でしか運用されていなかった。また、競争法は有するものの、運用が消極的な国々も多かった。その背景としては、政府主導により、限られた経済資源を一部産業に重点的に配分し、かつ外国企業から自国産業を保護しつつ、競争力を高めることが経済発展には不可欠であるという認識が広く共有されていたことがある。

 けれども、このような従来の産業政策に変化が生じてきている。欧州連合(EU)においては、1992年の域内市場統合後、共通競争政策が単一市場形成にとって不可欠なものとなっており、日本も1980年代後半からの長期不況と1990年からの日米構造協議の影響などにより、公正取引委員会を中心とした競争政策の運用を強化してきている。旧社会主義諸国も、体制崩壊後の急速な市場経済化やプライバタイゼーションによる、過度の独占・寡占などの問題を抱え、競争法の制定・運用強化を急いでいる。また南米諸国も、失われた1980年代を取り戻すべく競争政策を中心とした産業政策へと方向転換を行っており、韓国などの東アジア諸国も、1997年からのアジア危機を契機に、競争政策の強化を図っている。(5)

 このような世界規模での産業政策の転換に基づき、現在、競争法を有する国は80ヶ国以上にまで至っており、その内50ヶ国以上が途上国である。これらのパラダイム転換ともいえる変化の背景には、国際貿易や海外直接投資(FDI)が国内経済成長のエンジンとして認識されはじめたことがある。途上国の指導者たちの間で、開かれた透明なルールに基づいた多国間貿易システムが自国の経済発展にとって不可欠(6)であり、そのためには適切な競争政策の制定と運用が必要であるとの認識が共有されはじめたということができよう。

 しかし反面、これらの産業政策の転換をもたらしつつある経済の急速なグローバル化は、同時に様々な問題や課題をも引き起こしている。史上最悪の11億米ドル以上の課徴金が課された1999年の国際ビタミンカルテル事件、そして有名なボーイング社とマクドネル社合併時の欧米競争当局の小競り合いなどの事例が示しているように、国際カルテルや国際企業合併などは次第に一国での規制が困難となってきている。また、途上国が競争政策を制定・運用する際の技術支援も大きな課題である。

4)WTOにおける競争政策 ―経済活動のグローバル化に伴うグローバル・ガバナンスの試み―

 これらの問題・課題をうけて、様々な国際的な取り組みが、二国間レベル、地域レベル、そして多国間レベルでなされている。二国間レベルの取り組みとしては、米欧、そして日米などの競争当局間であらかじめ協定を結ぶことにより、協力促進および紛争回避が図られている(7)
 さらに、地域レベルの取り組みとしては、共通の競争当局を有するEUは別格としても、北米自由貿易協定(NAFTA)やMERCOSUR等、多くの自由貿易協定が、競争法に関する規定を有している。また多国間レベルでの取り組みとしては、UNCTAD、経済協力開発機構(OECD)、そしてWTOなどの国際機関において、さまざまなモデル・ローや勧告(Recommendation)などが作られている。これらのうち、本稿においては特にWTOにおける議論に焦点を当て、競争政策の分野におけるグローバル・ガバナンスの可能性を探ってゆきたい。

 1999年11月のWTOシアトル閣僚会議は、NGOの活動や米国通商代表部のバーシェーフスキー氏の「決裂」宣言など記憶に新しい。1993年に最終合意にいたったウルグアイ・ラウンドは、2000年に農業やサービスの交渉を再開するという「ビルト・イン・アジェンダ」といわれる合意を含んでいる。
 この「ビルト・イン・アジェンダ」交渉を機に、新たなラウンドを開始しようというのが、ミレニアム・ラウンドである。けれども、どの分野を交渉分野とする、またその交渉方式をどうするかに関しては、世界各国の思惑が入り乱れていた。周知のように、新ラウンドの立ち上げはなされなかったが、その原因としては、従来の不透明な意志決定過程が、加盟国数の増大、さらにはNGOなど市民社会のWTOへの関心の高まりなどの急速な変化に対応できなかったことが挙げられる。しかしなんといっても、WTOが扱う分野が、各国のどうしても譲ることのできない分野、言い換えれば、国家主権にそのまま抵触するような分野にまで及んできたことが、その決裂の直接の理由であろう。農業、環境などとともに、この国家主権に直結する分野としてあげられるのが、競争である。どのような競争政策を採用するかは、自国の経済体制をどのように統治してゆくかという問題に直結するからである。

 この競争についてWTOで協定を模索して、1996年のシンガポール閣僚会議によって設置されたのが、WTOの「貿易と競争に関する作業部会」である。この作業部会は設置以来、年数回のペースで会議が開かれ、各国の意見交換がなされている。作業部会等での議論を踏まえ、シアトル閣僚会議においては、日欧、そして韓国や南アフリカがWTOにおける競争ルール策定に積極的な立場を示していた。
 これに加えて、最近の作業部会ではブラジルなどの南米諸国も積極的な関与を見せており、さらにはシアトルでは消極的であった米国も、EUなどがWTOでの競争政策では、米国が懸念を示していた国内の個別事例は扱わないことを提案していることから、態度を軟化させている。シンガポールや香港など、自らは競争政策を有さずにも、自由で競争的な市場を保持してきたと自負している一部の国々が、懸念を示してはいるものの、概して交渉は好転しているということができよう。この背景には、先述の通り、競争政策を次代の産業政策の中心とするという考え方が、WTO加盟国間で共有されてきていることが大きな要因となっている。

5)WTO競争ルール策定への提言

 以上のように、世界各国による競争政策を重視する価値が共有されてきており、また同時に国際カルテルなどのグローバル・ガバナンスを必要とする問題が生じていることからも、WTOにおける競争ルール策定は、危急の課題であるといえよう。ここでは、WTOにおける(1)TRIPS形式の協定、しかも(2)ハード・コア・カルテルに対象を絞った競争協定の締結を提言したい。まず、(1)TRIPS形式の協定についてであるが、すでに締結されているところのTRIPSを参考にしつつ、加盟国に競争法の制定と運用を義務づける協定締結を提言したい。
 確かにWTOで競争に関する作業部会が開始された際には、WTO協定が法的拘束力を有することから、個別的な国内事例に対してWTO紛争解決機関が有効に機能するのではないかとの議論も見られた。けれども、個別事例へのWTO協定の適用に対する米国の強い拒絶もあることから、現時点では、国際カルテルや国際企業統合などに関する個別的な問題はWTOにおいては扱わず、二国間協定によって対応するのが妥当だと思われる。そして第二に、その協定の内容に関しては、誰の目から見ても明らかに不公正であるとの合意が得られるであろう(2)ハード・コア・カルテルに対象を絞ることを提案したい。富士・コダック事件において問題となった垂直的制限や、企業統合などに関しては、各国の商慣習や経済的な特性などに大きく左右される部分が多く、現段階でWTOにおいて国際基準を設定するのは望ましくない。
 まずは、既に先進国間で合意がなされているOECDの勧告などを参考にしつつ、加盟国間でハード・コア・カルテルに関する合意を形成し、その後、さらに議論を進めるべきであろう。

 この(1)TRIPS型の(2)ハード・コア・カルテルに関するWTOにおける合意は、以下に述べるように、現在グローバルエコノミーが直面する3つの問題点、すなわち(a)国際カルテル、(b)国際企業合併、そして(c)途上国支援というグローバル・ガバナンスを必要とする国際的な問題に対しても有効に機能するものと思われる。

 まずWTOにおける加盟国への競争法の制定義務化は、(a)国際カルテルや(b)国際企業合併の有効な取り締まりにとって不可欠であることを指摘したい。すなわち、国際カルテルや国際企業合併を取り締まる際に欠かせない競争当局間の情報交換や共同捜査などは、二国間協定によってカバーするにしても、相手国が競争法を有しておらず、競争当局が存在していなければ、協定を締結しようがない。
 ここで、特に強調しておきたいのは、これは米国など、先進国の競争政策の取り締まりにとって大切なだけではなく、途上国にとっても非常に重要であるという点である。例えば、国際カルテルによる市場価格のつり上げが行われている際、もっとも経済的な打撃を被るのは、先進国というよりは、むしろ経済基盤の脆弱な途上国であるといえよう。そしてこのような国際カルテルを途上国政府が単独で取り締まることは、ほとんど不可能に近い。
 また国際企業合併が、先進国と途上国の企業間で行われる際にも、先進国の競争当局との意見交換を制度化し、途上国が自国の状況を的確に相手国に伝え、先進国の判断に自国の状況を反映させるシステムをつくっておくことが必要である。そのためにも、途上国が競争当局を有する必要性は、今後一層、高まってくることが予想される。
 また、(c)競争政策の制定・運用にまつわる途上国への技術支援についても、WTO協定によって、少なくともハード・コア・カルテルについては、その内容に関して合意がなされるであろうから、各国の立法過程における負担軽減がなされるであろう。

 このように、WTOにおける競争政策に関する協定締結は、経済活動のグローバル化に伴う問題、すなわち(a)国際カルテルや(b)国際企業合併、そして(c)途上国支援といった課題を、どのようにグローバルに統治してゆくかという問いに、ひとつの可能性を示している。

6)グローバル・ガバナンス確立への参画の重要性 ―まとめにかえて-

 21世紀を目前に控え、私たちは流動的かつ不安定な世界経済の現実に直面している。そして私たちは、一旦、世界システムが確立した際には、そのシステムに少なくとも今後数十年は、拘束されるという事実を忘れてはならない。このようなシステム確立期に日本の果たすべき役割は大きいと同時に、ここでどのような舵取りをするかによって、今後の日本と世界の進路が決まるともいえよう。
 国際社会におけるリーダーシップの確立のためには、イッケンベリやセルの研究が示唆しているように、世界経済を律するような枠組みを相手国に内在化させることが不可欠である。日本は、得てしてこの枠組みの提示が不得手であると思われる。例えば、先のWTOシアトル閣僚会議においても、日本の交渉姿勢をみると、アンチ・ダンピングと農業だけに関心が集中し、その他の分野については我関せずとの感が否めなかった。これをEUと比較すると、確かにEUも農業など、自国の利益を最優先する分野を有することは確かであるが、反面、本稿で検討してきた競争政策の分野などにおいては、WTOにおいて競争ルールをつくり、グローバルな統治体制を確立することが21世紀の世界経済全体にとって不可欠であるとの考えから、自国の利益というよりは、むしろ世界秩序構築へのビジョンに基づいて競争政策分野における交渉を進めている感が強い。
 確かに、農業やアンチ・ダンピングなど国内の一部利益団体の利益を確保することも国家の大切な任務であろう。けれども、そこから一歩進んで、来る21世紀の世界経済を律する枠組みを世界各国に提示し、世界経済のグローバル・ガバナンスへの指針を提示してゆくことが、今、日本にはもとめられているのではないだろうか。

 では、どのようにして自らの良しとする枠組みを日本は提示してゆくべきなのであろうか。
 欧州委員会、UNCTAD、WTOと、これまで競争政策に関するグローバル・ガバナンス確立に大きな役割を果たしている国際機関で研修してきて強く感じることは、21世紀の世界経済を律するための枠組みは、永遠・普遍の真理といった形で提示され受容されるよりも、様々なチャネルを通じて世界各国によって共有されてきた価値を基に、漸進的にしかもテンポラリーなものとして形成されてくる、ということである。

 一例として、「貿易と競争の相互作用に関する作業部会」で推進役を果たしているEUが提出しているペーパーの変容をみると、各作業部会で、例えばインドなどの途上国が経済発展と競争の問題を指摘すると、その後のEUのペーパーには、経済発展への考慮が現れ、米国が国内事例へのWTOルールの適用に強い難色を示すと、その部分がEUのペーパーの中から落とされたりしている。もちろん、加盟国の国益を賭けた外交交渉を短絡的に捉えることは厳禁であるが、欧州委員会内で研修した経験からいえば、これらの変化は、EUが当初から想定していたというよりは、作業部会等における議論の中で、他の加盟国の国内事情を知り、そのうえでEUの立場が修正されてきたといった方が正確だと思える。けれどもここで強調しておきたいのが、価値やパラダイムの共有は自然発生的に醸成されるものではなく、各国の議論を整理し、合意形成へと導くリーダーが重要であり、そのリーダーによって合意内容自体も大いに変化してくるということである。

 日本が今後、その経済力に見合ったリーダーシップを発揮し、世界に対して貢献してゆくためにも、日本政府のWTOにおける競争ルール策定への積極的な関与を期待したい。
 日本は、国内企業保護と輸出事業への優先投資という産業政策を積極的にとって成功した国の代表例であり、しかもこのような産業政策で成功した多くの国々とともにアジアに位置する。日本が、その経験の効果と限界を分析し、積極的にWTO加盟国とその経験と分析を共有することにより果たす貢献は計り知れない。また、単に加盟国全体のためにというだけではなしに、従来から世界規模での経済システム形成に不得手であった日本にとって、この変革期に積極的にルール作りに参画することにより蓄積される人材と経験は、何にも代えがたい財産となることは疑いない。また、今後数十年の世界経済を律することになるであろうルール形成の過程で、日本の国益をしっかりとそのルールとシステムに埋め込むことも可能となる。
 私たちは、間違いなく歴史の大きな変換点に経っている。これにどう対応するかで、日本と世界の将来は決せられる。けれども、残念ながら、いまの日本は国内に山積する課題にばかり目を奪われ、この世界規模での変換点にあるという認識が乏しいと思われてならない。確かに国内改革も急務であるが、国内の改革が終わったら、世界の情勢はすでに決せられたという結果にもなりかねない。現在の日本に求められているのは、明確な時代認識と、高度経済成長とバブル崩壊後の長期不況という自らの経験に基づいた価値を、世界に提示してゆくことである。


(1) T. クーン、『科学革命の方法』、みすず書房。通常、パラダイムというとクーンの説やその後の諸議論を思い浮かべるが、その議論に拘泥することなく、本稿では物事の捉え方として定義しておきたい。
(2) G. John Ikenberry and Charles A. Kupchan, Socializationand hegemonic power, “International Organization”, Vol. 44, Num. 3, Summer1990.
(3) Susan K. Sell, “International property protection andantitrust in the developing world”, international organization, vol.49,No.2, Spring 1995.
(4) United Nations, World Investment Report 1997 ? TransnationalCorporations, Market Structure and Competition Policy – , 1997.
(5) 一例としてWTOの貿易と競争に関する作業部会における両国の発言等を参照のこと。
(6) op. cit.
(7) John J Parisi, Enforcement Cooperation Among Antitrust Authorities, Speech before the IBC UK Conferences Sixth Annual London Conferenceon EC Competition Law, London, England. 19 May 1999. http://www.ftc.gov/speeches/other/ibc99059911update.html
 但し、日米の競争当局間での協力がどの程度今後進むかは、注意が必要であると思われる。欧州委員会競争総局のKiriazis氏によれば、EUと米国との協定の意義は、官報やホームページ等で公開されてはいないが企業秘密等にも該当しないような情報の取り扱いについて、制度化を行ったことにあるとされる(WTO Working Group on Interaction between Trade and Competition, June 2000における発言による)。これに対して、筆者が行った複数の公正取引委員会職員へのインタビューによれば、公正取引委員会においては、現時点では、実務上、米国との協定締結により何らの変化もないとのことであり、米欧が達成しているレベルでの協力関係構築には、さらに時間がかかるものと考えられる。

 

 

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小林献一の論考

Thesis

Kenichi Kobayashi

小林献一

第19期

小林 献一

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Philip Morris Japan 副社長

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産業政策(日本産業界の再生) 通商政策(WTO/EPA/TPP)

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