論考

Thesis

ナチュラルステップと企業

「ナチュラルステップアメリカ インターフェース社の実践」

1 TNSアメリカの設立
(報告者 インターフェース社CEO レイ・アンダーソン氏)

 1995年、ロベール氏のアメリカ訪問をきっかけとして、TNSアメリカが設立された。TNSのコンセプトに対する反響は大きく、ワンデイセミナーへの参加者は、これまでに1000人を超えている。また、ナチュラルステップの環境教育は、現在50を超える企業に導入され、MITなどの大学や博物館、政府機関にも広がりを見せている。
 地域レベルでの取り組みも進んでおり、オレゴン州では、アメリカ銀行、ナイキなどの支援を受けて、ワンデイセミナーが積極的に開催されている。

2 インターフェース社の取り組み

 以前は、環境問題に取り組む企業は、収益を落とすという考え方が一般的だった。しかし、現在では、環境問題は企業活動にとって大きなプレッシャーとなりつつあり、「持続可能性」を戦略的に打ち出すことで、企業は競争力をつけることができる、という考え方が、主流を占めつつある。
 ナチュラルステップの考え方は、それぞれの専門知識を持つ従業員の意識を一つにまとめ、共通のフレームのもとに行動することを可能にするという点において、強力なツールである。
 TNSの環境教育を導入することによって、企業は将来の動向を予測することができる。また、新しい商品を開発し、新マーケットを創出することが可能になるのである。また、従業員に会社の方針を理解させ、仕事に対するモチベーションを高めることに役立つ、利害関係者とのコミュニケーションを活性化するなど、さまざまな効果をあげることができる。
 インターフェース、カーペット社は、1996年度の売り上げ高10億ドルを誇る、世界でも有数のカーぺット製造会社である。
 世界各国で事業を展開し、従業員数は5300人であるが、1991年以降、収益率の低下に陥っていた。そこで、最高責任者を中心とする新しいマネジメントチームを作り、検討を重ねた結果、1993年に「インダストリアルエコロジー」というコンセプトのもとに、企業活動を再編することになった。

 インターフェースでは、年間12億ポンドの原料を消費し、そのうちの8億ポンドを焼却している現状に鑑み、環境問題に正面から目を向けることの必要性を強く感じた。そして、まずは廃棄物の削減プロジェクトをくみ、ゼロエミッション(生態系に対する排出をゼロにする)を実現するべく、さまざまな取り組みに着手した。その結果、2年間で4000万ドルの経費が節減された。
 また、インターフェース社では、カーペットのリサイクルに加えて、リースという新しい事業展開をはじめた。この新しい事業によれば、顧客が返却してきたカーペットは、また工場に引き取られ、商品として再生されることになる。さらに、インターフェース社では、自然のサイクルに着目し、自然界に排出される物質はすべて、生分解されるようような工業サイクルをつくりあげた。
 こうした一連の取り組みにより、1995年から1996年にかけて、インターフェース社の売りあげは、2億ドル増加したが、原料の消費は12億ポンドのままで抑えられているという。

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吉田裕美の論考

Thesis

Hiromi Fujisawa

藤沢裕美

第15期

藤沢 裕美

ふじさわ・ひろみ

どんぐり教育研究会 代表

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環境問題 特に環境教育(森のようちえんなど)

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