論考

Thesis

食と暮らしの転換 未来食を知っていますか

1はじめに

先日、知人の紹介で、以前から興味を持っていた「未来食」の大谷ゆみこ氏に、お会いすることができた。
氏は現在、雑穀を使った未来食「サバイバルセミナー」の主催、未来食レストランの経営、「ライフシードキャンペーン」の実施など、多彩な活動を展開されている。また、山形の小国町で、食とエネルギーのほとんどを、家族だけで自給する生活を続け、それを都会からきた人たちに公開するという、大変ユニークな試みも始められた。
大谷氏が考案した、雑穀を使った「たかきびのハンバーグ」や「うるちあわのナゲット」は、「これが本当に雑穀なの」と誰もが驚くおいしさである。
今回の月例報告では、大谷氏が何故「雑穀」に興味を持つに至ったか、「未来食にはどんな意味があるのか」など、大谷氏のお話をもとに、まとめてみたい。
2未来食ができるまで

大谷ゆみこ氏は、現在45歳。栃木県足利市の出身で、母方の実家は農家だったそうである。
氏は、地方の川や農地が、急激に埋め立てられ、日本社会そのものが「経済」を優先する中で、氏の言葉で言う「いのち」をきりすてていくのを、「何か自分のめざすべき方向とは違う」という不安を抱えながら見ていた。
氏は子供の頃から、漠然と「食料やエネルギーを自給する生活がしたい」と考えていたが、「肉も魚も、すべてを自給するのはとても無理」とあきらめていた。しかし、十数年前のある日、「人間は玄米が、年間一人I俵もあれば、あとは塩と少しの野菜だけで生きていける」という記事を読み、目の前がぱっと開けたような気がしたそうである。
多くの人たちは、「食べる」ために、無理な生活を我慢して続けている。しかし、たった「玄米1俵」で人が生きていけるのであれば、「自分の好きなこと」をして、生きているのではないか。
そう考えた大谷氏は、夫婦と子供一人で、その「穀物、塩、少しの野菜」だけの生活を、実験的に始めてみることにした。
そんな生活の中で、玄米や穀物に関する多くの書籍を集め、「日本や世界の食文化」にかんする研究を続けていると、ある時から「雑穀」に興味を持つようになったと言う。
集めた「雑穀料理」に関する資料によれば、日本でも昭和44年頃までは、山間地に住む人々は、ひえやあわを作り、塩以外のほとんどの食べ物を自給していたと言う。
その雑穀が、ここ数十年の間に急激に姿を消しており、今ではこれを栽培する農家が、ほとんどないという状況に、大谷氏は強い危機感を持った。
氏は、さまざまな雑穀を片っ端から集め、いろいろな調理法で料理し、食べ続けた。そして、「何でこんなにおいしく、人間にとって必要な栄養がぎゅっとつまっている、雑穀を見捨ててしまうのか」という、素朴な疑問を持ったという。
大谷氏はそれ以来、雑穀を使った魅力的な料理を次々に考案し、それを世に出すとともに、雑穀を作ってくれる農家を支援する活動を始めている。
人間にとって必要な、三大栄養素は、(炭水化物、たんぱく質、脂肪)である。そして、炭水化物とたんぱく質は、8対1の割合で摂取するのがもっとも望ましいとされているそうだが、雑穀は驚くべき事に、ぴったりこの割合で栄養分が含まれていると言う。
また、雑穀は一粒が二千粒になる力があるので、数房の雑穀があれば、150坪の土地にまくことができ、それで最悪の場合には一家の食料を自給することさえ可能になると言う。
3雑穀は地球の贈り物

雑穀は土地を選ばず、どこででも(庭先でも山の中ででも)栽培でき、しかも農薬を使用する必要がない。
またその中に、「生命バランス」を整える「いのち」が含まれているので、食の汚染、環境汚染から自分をまもるのにも役に立つ。
私は、現在の日本は、食、資源、エネルギーを完全に、途上国に依存(と言うより寄生)している状況にあると考えている。
私たち日本人が、穀物中心の食生活を取り戻し、食の自給をすすめていくことは、「途上国の人から食べ物や土地を奪わない」ためにも、もっとも大切なことではないだろうか。

Back

吉田裕美の論考

Thesis

Hiromi Fujisawa

藤沢裕美

第15期

藤沢 裕美

ふじさわ・ひろみ

どんぐり教育研究会 代表

Mission

環境問題 特に環境教育(森のようちえんなど)

プロフィールを見る
松下政経塾とは
About
松下政経塾とは、松下幸之助が設立した、
未来のリーダーを育成する公益財団法人です。
View More
塾生募集
Application
松下政経塾は、志を持つ未来のリーダーに
広く門戸を開いています。
View More
門