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2017年2月

実践活動報告 ~ワールドロボットサミットの展望~
岡田吉弘/松下政経塾第35期生

松下政経塾に入塾して、早いもので、3年が経過しようとしている。社会のお役に立つべく、志実現に向けて一日一日大切にしていく所存である。

 

はじめに

 2020年オリンピック・パラリンピックイヤーに、ロボットの国際競技大会が日本で開催される。通称ワールドロボットサミット[1](以後、WRSと略称する)である。

 経済産業省および国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が主催する本事業の目的は、①ロボットの社会実装および研究開発の加速化、②世界の叡智の結集、③ロボット活用の理解促進、の三点である。

 私は昨年11月より、WRSに注目し、活動している。本報告では、WRSの課題と展望について述べさせていただく。

ロボット国際競技会は研究開発を加速化する

 ロボットの競技大会は、既に世界各国さまざまな大会が存在している。ロボットコンテスト(通称ロボコン)は、森政弘先生(東京工業大学名誉教授)が創設した教育的イベントであり、小学生から高専生や大学生を対象にするものまで幅広く、人材育成を目的として展開されている。

 高いレベルの技術力を競い合う国際大会では、アメリカの国防高等研究計画局(DARPA)が主催した大会が有名である。DARPA Grand Challengeは、今日実用化が本格化している自動運転車の技術を大きく発展させたと言える。また、 DARPA Robotics Challenge (DRC) は、災害救助用ロボットを競い合う大会であり、人間が近づけない災害現場で活用するロボットの研究開発を進めるのが目的であった。DRCではプレ大会で優勝を果たした東大発スタートアップのSCHAFTが、Googleに買収されたことで注目を集めた。また、私の個人的な経験であるが、昨年ストックフォルムで開催されたICRA AIRBUS SHOPFLOOR CHALLENGEでは、私が研究生としてお世話になった奈良先端大・ロボティクス研究室[2]のチームが優勝を果たし、参加した学生らの歓喜と熱気を感じることができた。

 このように、ロボット国際競技大会は、ロボットの研究開発を加速させ、研究者や技術者の人材育成の機能を果たしてきたと言える。


自動運転車の研究開発の礎をつくったDARPA Grand Challeng[3]

WRSの課題と展望

 WRSは、2018年に東京ビッグサイトでプレ大会、2020年に愛知県と福島県で本大会を催す。競技大会は、ものづくりカテゴリー、サービスカテゴリー、インフラ・災害対応カテゴリーに加えて、ジュニアカテゴリーが開催され、展示会ではロボットの導入事例を世界に発信する機会とする。

 WRSの特長の一つは、「社会実装」を目的としていることがあげられる。本プロジェクトを通して、身近な家庭の中や生活用品を購入するコンビニエンスストアで役立つロボットを生みだすことが期待され、また、トンネル事故等の災害現場で一人でも多くの人を救出するロボットの開発につながる。ロボット技術が現場とつながることがWRSの意義の一つであると言える。

 WRSの課題としては、第一回目の開催であるために、現時点知名度は決して高くないことがあげられる。ロボット業界とは無縁の人にWRSについて説明をした際、概要を正しくご理解いただくまでに時間を要することが少なくない。そのために、一般の方に対しても、WRSの意義や魅力が伝わるような工夫を重ねているところである。

 WRSを成功に導くか否かは、準備運営が加速する2017年の取り組みにかかっており、具体的には、スポンサーシップを募る広報活動や競技大会へ参加する国内外の研究者や技術者へのPR活動が重要になると私は考えている。また、ロボット活用コミュニティーの拡大のために、ロボットの専門家だけでなくより多くの一般の方にロボット活用に対する理解を求め、共感を得ていくことも必要であろう。私は、WRSに関わることで、官民連携の橋渡しの役割を担っていきたいと考えている。

 WRSの展望として、研究者や技術者がいきいきと自らとチームの力を発揮することで、人材育成に向けた取り組みが進められることがあげられる。特に、ロボットの社会実装段階における人材育成手法の確立はとても意義深いと考えている。ジュニアカテゴリーにおいては、ワクワク感を持って子どもたちがWRSに参画することを願っている。先日、広島県呉市の小学校の4年生を対象とする、自らに向き合って夢を抱くワークショップ[4]を見学させていただいた。子どもたちにロボットの話をしたが、興味関心度は思った以上に高かった。特に、「身体の不自由な人のために、役に立つロボットを開発したい」と語った男の子の言葉に私は胸を打たれた。WRSのジュニアカテゴリーが子どもたちの夢を大きく膨らませ、ロボット教材を用いる教育を前進させ、次代を担う人材の育成につながるよう、微力ながら貢献していきたいと思っている。


「ロボットクリエーターになりたい」という生徒が数名いた

さいごに

 SF映画や小説で語られるように、ロボットは人間の夢や希望が作り出した。私たちが想像した姿かたちとは少し異なるかもしれないが、人間とロボットの共生・協働は、度重なる技術革新によって現実的になりつつあると言える。WRSは、新たな社会のあり方を模索していく契機となるのである。それは、ロボットの普及による、自然災害に強い国づくりであり、健康長寿で誰もが幸せに暮らせる国づくりである。

 ロボットの社会実装は、アカデミアの研究開発だけでなく、民間によるロボット活用が足並みをそろえて進められる必要がある。これには、政策的な誘導が必要であると私は考えており、WRSに貢献することが日本と世界の未来に貢献することにつながると信じ、今後の活動を力強く進めていきたいと考えている。

[1] ワールドロボットサミット http://www.meti.go.jp/press/2016/12/20161202001/20161202001-1.pdf
[2] 奈良先端大・ロボティクス研究室 http://robotics.naist.jp/
[3] DARPA Grand Challeng http://archive.darpa.mil/grandchallenge/
[4] 一般社団法人ひろしまドリームマップ協会 http://hiroshima-dreammap.info/

2017年2月 執筆
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