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実践活動報告(その1) ~エネルギー融通国に向けた長崎・五島での取り組み~

長崎県五島列島は、世界の中でも海洋エネルギーに対する取り組みに積極的な場所の一つである。筆者は2016年4月より五島の福江島に家族で移り、五島列島での海洋エネルギー導入を支援する活動を開始した。その取り組みについて、近況を報告する。



(長崎県五島列島の位置)



 東京からおよそ1000km、上海からおよそ700kmに位置する「五島列島」は、世界の中で海洋エネルギーに積極的に取り組んでいる地域の一つであり、国内では特に活動が活発と言える地域である。平成22年(2010年)に環境省事業として開始された浮体式洋上風力発電プロジェクトは今年(2016年)より商業運転に移行、現在、洋上風力発電をさらに建設するための検討が行われている。平成26年(2014年)には、海洋エネルギーの実証フィールドとして、新潟県、佐賀県、沖縄県と同時に認定され、その後、潮流発電の実証試地域としての取り組みも検討されている。







https://player.vimeo.com/video/169977978

(五島列島のとある海域における潮流の様子。後ろの灯台の位置に注目すると、潮の流れがわかる。)



 松下政経塾三年目として実践活動に入った今年4月、筆者は五島列島を研修先として妻と共に居を移し、海洋エネルギーによるエネルギー融通地活動を開始した。五島における私の役割は大きく二つある。ひとつは、長崎県下の企業が集まって作った団体「特定非営利活動法人長崎海洋産業クラスター形成推進協議会(以下、クラスター協議会)」の支援コーディネーターとして、五島列島での海洋エネルギー導入を支援し、将来の「エネルギー融通国」に向けたミニチュアモデルとなる「エネルギー融通地域」を作ることである。これは、私の志である「2045年エネルギー融通国ニッポン」の実現に向けた一歩であり、とりわけ、わが国で最も再生可能エネルギー賦存量が多い海洋エネルギーを活用しエネルギー融通の可能性を追求する取り組みである。

 もう一つの役割は、海洋エネルギー導入によって地域が持続的に潤うモデルを構築することである。過去の発電所建設で見られたような、外部の資本、技術、人によって導入が進むのではなく、地元も一体となり、リスクを取りながらでも利益を分かち合って、最終的に皆が笑顔になれる仕組みを構築したいと考える。原発事故以降、発電事業がより私たち市民の手に届くようになっているにも関わらず、その主体者が以前と同様、域外の資本家のままでは、地域にとっての持続性は限定され、依存経済のような体質から抜け出せなくなるだろう。つまり、海洋エネルギー開発が、地域を持続的に潤す仕組みを五島にて構築したいと考える。




(長崎海洋産業クラスター形成推進協議会のメンバーと五島市崎山沖の洋上風車前にて)



 さて、既に別掲のレポート[1]でも書いた通り、五島列島は豊富な海洋エネルギー資源に恵まれているだけでなく、日本の離島の中でも珍しい本土との電力連系が行われている。つまり、島で発電した電力は容易に本土側に送る事ができる。実は、このような場所は日本では限られており、他には北海道(島と言えない?)くらいである。このような環境から、五島列島では未活用地を用いた太陽光発電や、島の風を使った風力発電が盛んに開発され、そこから生み出された電力の一部は既に、本土に“輸出”されている。

 私が五島で行うのは、この“輸出”比率を高め、ゆくゆくは五島列島がエネルギーの一大産地となることであるが、それをわが国の再生可能エネルギー資源賦存量の中で最も大きな「洋上風力発電」によって行うことに意味がある。何故なら、将来、わが国が海外とエネルギー融通を行う場合、エネルギー自給率が低ければ一方的に輸入依存するだけであるが、エネルギー自給率を高めておけば、海外へのエネルギー“輸出”も含めた融通が可能になる。そして、それを可能にする最有力候補が洋上風力発電である[1]。



 とはいえ、このような取り組みが長崎の五島列島で行われていることを知っている方は、長崎県内でも多くはない。NHKや民放などの報道などによって徐々に取り上げられ始めているが、それでもまだまだ認知は十分でなく、今後プロジェクトをさらに大きくするには多くの皆様のご支援とご理解、またそこに関わりたいと思う人材が必要な状況にある。

 そこで今年7月16日(土)から18日(祝)に、日本財団様より助成を頂き、クラスター協議会が主催者となって「君の未来を体感しよう!海洋産業フェスタ in Nagasaki」というイベントを実施する運びとなった。筆者は上述の五島での活動に加え、本イベントの責任者もクラスター協議会メンバーとして担当している。イベントの目的は、長崎で行われている新たな海洋産業の発信と、長期的な人材発掘・育成であるが、同時に、私自身にとっても、イベントを通じて関係者との接点を頂くきっかけとなり、素志を実現するための大変有難い第一歩となっている。まずは7月のイベント成功に向けた準備を着実に進めると共に、続いて五島でのエネルギー融通地域の実現と海洋エネルギーによって地域が持続的に潤う仕組み構築に向けた活動を引き続き活発に実施していきたい。



 なお、海の日周辺でもし、お時間に余裕がある方がいらっしゃいましたら、当日ボランティアなどでイベントをお手伝い頂けますと幸いです。連絡はクラスター協議会事務局、もしくは木村までご連絡頂ければと思います。どうぞよろしくお願いいたします。




(海洋産業フェスタ in Nagasakiについて報じる長崎新聞の記事)



参考文献

[1]木村誠一郎: 2045年エネルギー融通国に向けた私の挑戦(https://www.mskj.or.jp/report/3353.html), 松下政経塾・塾生研究レポート(2016)


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木村誠一郎の活動報告

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Seiichiro Kimura

木村誠一郎

第35期

木村 誠一郎

きむら・せいいちろう

(一社)離島エネルギー研究所 代表理事/(公財)自然エネルギー財団 上級研究員/九州大学 招聘准教授

Mission

「2045年エネルギー融通国ニッポン」の実現

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