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1997年4月

第1部 財政再建序論としての行政改革 ~ 第1報 「メタシステムとしての行政」
大串正樹/卒塾生
 

1997年5月 月例報告

                                       第17期生 大串 正樹

第1部 財政再建序論としての行政改革 ~  第1報 「メタシステムとしての行政」


§0.はじめに

 月例報告を提出するにあたって,初めにテーマ「財政再建序論としての行政改革」の概要を記す。本テーマは,昨今叫ばれている「行財政改革」というものに関して,問題抽出と論点整理を体系的に行いつつ,最終的に目指す「財政再建」のために行うべき真の「行政改革」は何かを問うものである。従って,「財政再建結論としての行政システム」という次のテーマも,既に内包しつつ,これを並行して進めている。つまり,「財政再建」を実現するためにはどのような「行政改革」を行うべきであり,さらに,この行政改革によって日本はどのような「行政システム」を構築していくべきかを提言していくものである。

§1.行財政改革の意図するもの

 昨今「行財政改革」という言葉が頻繁に使われているが,意図するところは何であろうか。おそらく,財政赤字が累積する中,ケインズ政策の是非という経済学の論争を巻き込みながら,多岐にわたる日本の行政の問題点を解決していこうという意識に他ならない。ある時は,非効率な特殊法人を槍玉に挙げ,またある時は,省庁再編を政策課題の中心に据えたり,行革がひとつのブームとさえなっている。我々が目指すべき,出口は一体どこにあるのだろう。

§2.認識の欠落

 我々を含めて問題を共有する全ての人々に,改革のベクトルという認識が欠落しているのではないだろうか。確かに,今の行政は初めに思想がなかった(あるいは明確でなかった)という点では,パンドラの箱であった。様々な問題が解決されないまま,その場しのぎの政策が,更なる問題を呼び起こす。気が付けば,至る所に「改革」という白羽の矢が立つ。例えるなら,基礎工事の手抜きを見過ごしたままビルを建設したがために,建築中に既にあちらこちらが修理の対象となって,今やつぎはぎだらけとなっている。それでも,このビルはより高く建築を進めざるを得ない設計で,誰も止めることは出来ない。普通に考えれば,初めに,目的に見合った構造のビルを設計し,それに応じた,基礎工事を行って然るべきである。話を戻すと,今の行政課題においては,初めに,どのような行政システムを構築すべきか,その設計条件を明確にしつつ,解決方法を考えるべきである。場合によっては,全てを取り壊し,基礎工事からやり直さねばならないかも知れない。省庁再編とはいわばこの基礎工事に相当するものとして認識するべきであって,決して,内閣の支持率を支える道具ではないはずである。

§3.定量分析の必要性

 今や我こそが問題の核心を斬ると言わんばかりに,各人が行政の問題点を掘り起こしている。それぞれが問題であることは認めるが,果たして,問題の優先順位を誰が示したであろうか。ここに,諸問題の定量分析の必要性が認められる。では,何をその指標として採用すべきかであるが,端的に示すなら,やはりそこに流れる資金量であろう。平成8年の予算書等から拾い集めて,金額の多い順に目立ったものを羅列すると,資金運用部資金(374兆円),国債発行残高(243兆円),郵便貯金預託金(212兆円),厚生年金・国民年金(116兆円),特別会計会計(勘定)間繰入金(114兆円)などである。誤解の無いようにつけ加えるが,あくまで資金量であって,この全てが問題となっている訳ではない。ただ,我々はこう言った巨額の資金が動いていることを十分認識するべきで,先の住専処理策(6850億円)ばかりに気を取られているべきではない。問題にすべき,あるいは,優先順位の高い問題はもっと他にあると考えられる。

§4.定性分析の必要性

 定量分析が軽視されているのは事実であるが,それだけではやはり不十分である。我々は,数値による分析とともに,システム全体の構造や問題点を見渡すべく,定性分析も行っておく必要がある。やはりこれも,不十分であるのは昨今の議論を見ても明らかである。取り立たされている問題が,システム自体の問題なのか,あるいは,運用上の問題なのかを明確にするべきである。さらには,問題の本質を見極める上でも,その背景に潜む問題にも目を向ける必要がある。一例を挙げると,公共事業をめぐる問題では,システム自体の問題のなかに「予算配分」という構造の問題があげられる。さらに,運用上の問題として「政官財の癒着」の問題,そして,背景には「族議員」の問題がある。これらの諸問題の解法については次報告に譲るとして,現状はしっかりと問題の性格が整理されていないのが実状である。

§5.メタシステムとしての行政

 本報の最後に,議論の着地点,あるいは,本テーマの最終的な目標を掲げる。いくつかの問題は個別に思想を持って差し支えない。例えば,税制や社会保障といった問題である。しかし,おおよそ他の多くの問題は,やはり,根底にひとつの共通した思想が流れていてしかるべきである。改革のベクトルが各々異なる方向を向いていてはいけない。しかるに,行政はいかにあるべきか,あるいは,日本の文化や,これをとりまく環境に最もふさわしい行政システムは,どのように設計されるべきかがメインテーマになる。ここで,重要なのは,行政システムは財政システムを包括していなければならない。つまり,行政は財政のメタ(超)システムであるべきで,並列でも,行財政システムというような混同されたものでも無いはずである。昨今の,財政均衡か財政出動かに終始する論争を見る限り,そのような認識は薄い。もちろんそれ以上に,今の行革を歌い文句にしている政界には,そのかけらもない。

                                            第2報に続く。

1997年4月 執筆
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