活動報告

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100km行軍レポート

1.はじめに

 松下政経塾伝統の100km行軍。困難の時、一番苦しい時にニヤリと笑えるリーダーとなるために、私も塾生としてその伝統を経験した。頭で考える、「痛い、苦しい、辛い」の更に先にある極限の苦しみを経て、非日常のその中から見えてきたものとは、何気ない日常の大切さであった。

2.「素直」の大切さ

 私たち塾生にとって、この100km行軍は特別な研修である。第1期生から途絶えることなく毎年決行されてきたものであり、これを経て初めて真の塾生となるとまで言われる一大研修であるからだ。だからこそ、不思議と一度もなぜやらねばならないのかと思うことはなかった。私にとっては、そこに根拠も理由もいらない。伝統を継承したいと素直に歩いたからこそ、この過酷な挑戦に向かい、そして達成することができたのだと思う。なによりも、素直な心であるがままを見つめることが、まずもって大切であると感じた。

2.「誇り」の大切さ

 とは言っても、肉体的・精神的に限界を超える厳しい道であることに変わりはない。それを支えたものは何だったのか。それは、自分が政経塾の看板を背負って歩いているのだという塾生としての誇りと、政経塾の伝統を守り、継承するという気概だったに他ならない。私の生き方もまた同じ。日本人としての誇りと、先祖代々の血脈を守り継承していくのだという気概があってこその道なのである。そしてそこに、その名に恥じない美しい姿を求めるとき、その誇りが本物になっていくのだと思う。何事においても、誇りをもって美しく生きるという心の持ちようが大切であると感じた。

3.「日常」の大切さ

 今回、非日常の極限に身をおいて感じたのは、想定外の状態に追い込まれた時にこそ、本当の自分が見えてくるということである。80kmまで、かなり苦しく、痛みに耐えるのに必死であったが、言って見れば想定内の苦痛であった。しかし、後半20kmは、もう想定を超えていたし、スタートする前に色々と頭で描いていた行軍後半の自分のリーダーシップ像や行動などはどこかに吹き飛んでいた。痛い、苦しい、無心、放心、そしてまた痛みと、目の前に現れる現象が右から左へ過ぎていくのを歯を食いしばって薄眼で見るしかできない、全く情けない姿だった。しかし、こうやって極限の中で醜い自分に出会えたことで、自分の無意識の偽善に気づき、今迄以上に日常の大切さを身にしみて感じることができた。今回、極限をも想定しようとして色々と頭で考えてしまうことのナンセンスさと、それこそが偽善なのであるということを体感した。常日頃から変わらぬ心の持ちようを大切にして生きることこそが重要なのである。頭が真っ白になった時、無意識に出るのは、日常の反復された考え方や行動に基づくものであった。日常の心持ちのみが極限に生きるのである。それを痛いほど分かって過ごしてきたはずなのに、いつのまにか頭でっかちになって偽善者になっていた恥ずべき自分の姿に、いみじくも出会ってしまった。やはり、何事においても、日々の日常こそ大切にしなければならない、改めてそう思うのである。

4.最後に

 今回の100km行軍は、単なる私の13万8235歩の積み重ねの結果であった。そして修験道の塩沼亮潤大阿闍梨に倣って、右足に「感謝」を左足に「素直」の願いを込めてひとつひとつ踏みしめた23時間24分の旅だった。極限の中で見えてきたものは、とてもシンプルなものであり、今まで何度も重要だと頭で良く理解していたものであった。偽善にならず、大切なことをしっかりと実行して歩を進める、その中にしか人生の答えは存在しないということがストンと肚に落ちた気がしている。チームの仲間やサポートして下さった皆様という枠を超えて、全ての人々に感謝を感じた100kmの道のりだった。これからも長く険しい道が続くのだろう。しかしこれまた同じ。一歩一歩の真摯で誠実な美と誇りの積み重ねでしかない。しっかりと日常を大切に歩いていきたい。いつか必ず本物の人物になれることを信じて。

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杉島理一郎の活動報告

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Riichiro Sugishima

杉島理一郎

第31期

杉島 理一郎

すぎしま・りいちろう

埼玉県入間市長/無所属

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