論考

Thesis

インターカタログネット出発!!

12月1日(日)、起業家育成塾「起業シミュレーション」がスタートした。6月の開講以来、参加者、コーディネーターが思いを込めて議論に議論を重ねたビジネス・プランを実際に市場で実戦する時がやってきたのだ。
 コンセプトは「地域情報物流拠点」。地域の人々に対して、本当に知りたい情報を的確に検索し、求める商品を提供するサービスを目指している。

 事業内容は1、海外通販カタログの閲覧サービス 2、海外通販カタログの販売 3、インターネットを利用した海外通販 を主な柱としている。

 今では多くの日本人は海外渡航経験を持ち、国内に比べてより良い商品が、より安く販売されている事実を知っている。いわば体で実感してしまった内外価格差に多くの消費者はいらだちを感じているのではないか。
 また「人が良いと言う商品」ではなく「自分が良いと思う商品」を求める購買者が日に日に増加している。言い換えればブランドによって製品の品質を保証された商品よりも、自分自身で商品の品質を見抜き、その上でコストを考慮して商品を購入する「賢い消費者」が静かに増えつつあるのではないか。
 彼等に対して「彼等の自分らしさを演出する商品を、彼等の求めに応じて世界中から集め、現地価格に限りなく近い価格で提供するサービスに対してニーズは多くあるのではないか」。以上の現状分析を踏まえて、今回のビジネスプランは誕生した。
 しかし、ビジネスプランを組み立ててからがまた一苦労であった。それは借入金無しで実際に店舗を開き商売をして欲しいというコーディネーター・事務局の強い願いがあったためだ。

 創業時の資金は、平均して約2000万円以上と言われている。これだけ高額な資金はサラリーマンや学生には集められない。これもベンチャーがなかなか生まれない阻害要因となっている。故にあえてこの壁に挑戦した。「限りなく安い資金でベンチャーを始められないか。」
 シミュレーション期間は3カ月。その間店舗を構えて商売をするといくらかかるのか。皆で議論を始める。既に店舗を開設した経験を持つ参加者が発言する。「一階店舗で月坪4万円。20坪なら80万円。3カ月で240万円。敷金が3カ月分で会わせて480万円。店内改装費で100万円。1.5人雇うとして人件費が100万円。コピー・コンピューター・電話・Faxをリースして100万円。カタログの仕入れに50万円。維持費に30万円。最低限これだけで810万円。第一3カ月だけ貸してくれる地主はいないが。」

 既に参加者一人あたり30万ずつ集めた総軍資金210万円をオーバーしている。 一瞬参加者の間にあきらめの空気が流れるが、コーディネーター奥村昭博慶応大学教授の「我々は金が無いから知恵で勝負」の一言で、再検討が始まる。
 本当にこれだけ資金がかかるのか。それはどうしても必要なのか。必要ならばどうすれば安くすませるか。問題が提起され、ブレイクスルーのためのチエが集まり始める。 店内改装は自分達でやれば安くできる。素人臭くなるが、この店はあくまでもお客様の立場に立って運営しているとお客様に感じて頂けるような演出に変えてしまえばよいではないか。捨てられるコピー・FAXを探せばタダではないか。ベンチャーに興味を持つ学生を捜してお店の運営を任せれば人件費もカットできる。賃料もあらかじめ全額前払いすれば敷金は払わなくてよいのではないか。・・・。

 余談であるが私はその時事務局員として議論の端に加わっていたがまるで夢を見ているようだった。解決不能と思われた問題が魔法の呪文が掛かったように次々と解決されていく。これが塾主の言われた「衆知を集める」か。目の前で展開される議論に私はただただ魅せられていった。
 そして開店。店の名も「インターカタログネット」。カタログとインターネットを使い、適切な商品情報をお客様に提供し、購入する目的を込めて命名された。
 どんなドラマが参加者達を待ち受けているのか知るべくも無いが、私は今はただビジネスの成功を信じ、彼等の支えになるよう努力するだけである。

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豊島成彦の論考

Thesis

Naruhiko Toyoshima

豊島成彦

第16期

豊島 成彦

とよしま・なるひこ

公認会計士・税理士

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リーダーのための公会計

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