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100キロ行軍を歩いて

 10月19日は明らかに特別な日であると感じていた。なぜ特別なのか?100キロを24時間で歩くからだろうか?それとも自分の未知への挑戦をするからだろうか?もっと他に深いものかもしれない。この特別な思いも、まとまらないままにスタート台にたった。不思議な心境だ。

 単純に考えよう。24時間で100キロメートルを歩くと言うことは、1時間に5キロ歩けば4時間も余る。1時間に5キロとは通常人が歩くスピードで歩けば十分すぎるくらいのものである。そして休みを5キロごとに毎回10分取っても1時間はあまるのである。

 しかし人間とは不思議である。脳はそれがわかっているのに気持ちは不安や緊張を感じる。そして、24時間同じ体調を保てないのである。怪我をすれば痛くなり、疲れれば足が進まなくなり、眠くなればあくびが止まらなくなる。そして、応援があればやる気が出てマイナス要素がなくなったり、その逆もある。つまり人間は変化する。体の形ではなくて、気持ちが変化し、体に伝わる。変化の生き物といえる。

 それ故に私も緊張や不安を感じる。そして安心もするのである。100キロ行軍とはまさにこの繰り返しだ。同じでいて変化しないのは楽なことである。しかし変化があるということは共鳴があり、また打ち消しもあるということだ。その繰り返しを楽しめるようになれればそれは面白い。それを楽しみ、それをうまく生かせる人間はほんの一握りの偉人だけかもしれない。しかし、その境地を目指す価値はあるだろう。それが挑戦というものだ。人間は挑戦し障害を乗り越えられる努力をすることができるからだ。真の指導者を目指すならやってみたい。努力してみたい。それが意欲というものだ。

 私のチームのメンバーは個性的なメンバー達だった。リーダーは黄川田仁志、そしてムードメーカーの井桁幹人、体重はほぼ同じの塔村俊介、安全歩行管理責任者の榎本研修担当、三崎口から合流した石田樹里インターン生、そして私である。端からみると非常に不安があるようだ。さまざまな不安の要因があるチームだが、だからこそ開き直り、気分良く100キロ行軍にのぞめるものだ。私はそうとだけ思っていた。

 スタート、いつもと違う声援といつもと違う緊張感の中、確かな一歩を刻みはじめた。途中予定より早くなりながら、30キロまでは順調だった。そしてここから黄色のランプが点灯しはじめた。チームも暗くなり、ペースも落ちる。ゴールできるかという不安は少しずつ増える。心労が一番大きい。やはり予想通り、人間の心は変化し、しかも甘いほうへと向かおうとする。妥協や諦めやリタイヤ、そしてわがまま。それに向かい合い乗り越えようとする。するとまた新たに現れる甘さが出てきてそれと戦う。30キロ以降はその繰り返しだった。

 自らと戦い、チームとして協力しながら65キロをすぎる。行けるかもしれない。そう確信した。それは体力的な問題ではない。甘えや弱さとの戦いの中で、人間の心が変化したのだ。好転だ。そして自分だけの力ではない。それは応援していただいた先輩方や政経塾のスタッフの皆様のおかげであり、遠くで見守っていてくださる方々のおかげである。強さとはこうして生まれる。そして自信もつく。

 そしてゴール。実際に歩いて、100キロ行軍は自分との戦いではあると言われているが、やはり励ましや声援によって歩いている。ゴールまで問題は度々あったがリタイアしようとは思わなかった。ゴールをして疲れるというよりも感謝の気持ちで一杯になった。それだけ私は支えられていたということを理解した。そして、リタイヤしたくなかった気持ちの中にはもちろん感謝が一番大きい気持ちかもしれない。しかし無意識ながら、自分の気持ちの変化を楽しみ、辛さを辛さと感じ、心地よさを心地よさとしていたところ、変化に身を任せその中で歩けたことが大きかったのだろう。まだまだ未熟ながら、変化する人間の気持ちは確かに存在することを学んだわけだが、しかし100キロを歩きぬくという不屈の志を持っていたことも忘れないで欲しい。漠然とした目標をまっすぐ行くか、曲がりながらいくか、それはその人間が決めることである。

 ゴールして、本当にありがとうとまず言いたい。そして、支えていただいたことに本当に心から感謝の気持ちを伝えたい。今後、この感謝の分も日に新たな思いを持って自らの目標へ挑戦していきたいと思う。全員完歩おめでとう。

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菊池 勲

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