論考

Thesis

月例報告

1.総選挙の結果

 第41回衆院選は公示が10月8日、投票が10月20日で実施された。
 今回の選挙は、定数511人を全国129選挙区から選出し、ひとつの選挙区から2人から6人当選する従来の中選挙区制から、有権者は1人2票を持ち、小選挙区選挙の候補者に一票を、残る1票を比例代表選挙の「党」に投票し、300小選挙区でトップ当選者 300議席、11比例選挙区で各党名簿順位による当選者200議席、合計で500議席 を選出する小選挙区比例代表制並立制に変わった、新しい制度のもとで行われた選挙であった。
テレビの討論番組や特集、新聞紙上でもずいぶん取り上げられ、注目された選挙だったが、投票率は天気に恵まれたにもかかわらず低かった。

前回の衆院選の投票率は、67.26%で衆院選では戦後最低であったが、今回はそれを遥かに上回る59.65%であった。実に約8ポイントも下がった。(自治省集計によると、小選挙区選59.65%{男性59.03%、女性60.23%}、比例選59.62 %{男性59.01%、女性60.20%}であった)
10月21日の朝日新聞の調査によると、有権者の投票の棄権の理由としては以下のような結果が出ていた。

(結果)

時間がなかった。  45%

気が進まなかった。 52%

(内訳)

政治が変わると思えなかった。     43%

投票したい政党・候補者がいなかった。 32%

政治、選挙に関心が無かった。     11%

争点がはっきりしなかった。       6%

制度が分からなかった。         4%

 また、各党の消長は以下のような結果が出た。

<結 果>

党名 改選前 改選後 増減
自 民 211 239 28(増)
新 進 160 156 4(減)
民 主 52 51 1(減)
共 産 15 26 11(増)
社 民 30 15 15(減)
さきが け 7(減)
民改連 1(減)
自由連 2(減)
新社会 2(減)
諸 派 0(無)
無所属 10 1(減)

2.選挙の応援をしてみて

 先般の衆院選で政経塾出身者は全部で29人立候補した。当選者は14人で改選前に比べ1人減る。
 私は、山井塾員を手始めに中田塾員、金子塾員の合計3ヶ所で約2週間近く選挙応援した。なかでも一番多く応援したのが中田塾員の所であった。

 これまでの私は投票はしたことがあっても選挙の応援はしたことがなく、今回が生まれて初めての経験であった。選挙応援前に中田塾員から「草間君、カラスやってもらえないかな」と言われて、何のことかさっぱり分からず戸惑ってしまったくらい、選挙用語など全くと言っていいほど知らない素人の私であるが、中田選挙事務所で感じたことを率直に述べてみたい。

 選挙戦全般を通してかんじたのは、有権者の反応が低かったということ。極端に言うと有権者が非常に冷めていて盛り上がらなかったこと。
 例えば朝や街頭演説でビラを配ったり、候補者への支援を訴えているときなど、通り過ぎていく人が「あんた達、なに声を張り上げんの。うるさいから向こうに行ってやってくれ」とか「俺に声を掛けないでくれ」といった表情をたくさん見かけた。
 こっちが声をさらに大きくして訴れば訴えるほど、有権者の方が「関わらないでくれ」・「ほっといてくれ」と引いていくというか冷めていくかんじを経験した。

 団地で街頭演説をしていたときなどは、こちらからも見える、高い所に住んでいるある若い女性が、両手で両耳を力強く「ぎゅっ」と押さえながらベランダに出てきて、我々スタッフに向かって「うるさいわね」をいう表情でグッと睨み付けてきて、露骨に拒否反応を示されたこともあった。

 また、街宣車で各地区に支援を訴えながら回ったときにも、ビラ配りのときと同じ様な反応が返ってきた。他にもこれと似たようなことを数多く経験した。
 私は、「本当にこれが選挙期間中なのか」と何度となくかんじた。正に冷めた選挙を実感した。やればやるほどに悲観的になってしまい、これでは投票率はついに50%を割るのではないかと真剣に考えてしまったくらいだ。

 冷めている理由はいろいろ考えられるだろう。今の私には詳しく分析できない。今後、政治評論家や研究者の主張を参考にしながら考えていきたい。

 次に選挙事務所でかじたことは、事務所の中が活気がありムードが非常に良かったこと。ムードメーカーが1人いて、その人を中心にしてまとまっていた。
 部署間でのトラブルがあったときなど、その人が間に入って調整をして険悪状態にならずに済んだことが幾度となくあった。
 仕事を割り振るときでもムードメーカーが、その人の特性が生かされるような配置を考えながら進めていたのも印象に残った。それそれが自分の持ち味を発揮しながらやっていたように私には映った。塾主の言われた「適材適所」を身を持って実践されていた。

 また、ムードメーカーは、絶えずいいムードを作るように必ず1日一回は全員のスタッ フに声を掛けて、笑顔の絶えない環境づくりにも努めていた。スタッフ間の呼称を「○○さん」と名字ではなく、「○○ちゃん」やニックネームで呼び合うようにしたのも彼の提案だった。
 私自身は、「よしおちゃん」と呼ばれ、名字で呼ばれるより親しみが持てた。このちょとしたアイデアでスタッフの士気が高まったのではないかと思う。彼は、スタッ フからはもちろん候補者にも絶対的信頼をされ、私も一緒に動いていて充実感を覚えた。

 特に投票前日や当選が決まったときなどは、みんなで共に腹の底から感動・感激を分かち合えたことは、忘れられないいい思い出となった。
 厳しい選挙戦をものするには、地盤・看板・鞄、戦略と様々な戦術などいろいろあると思うが、選挙の根幹となる事務所の活気やムードが良くなければ、勝てないのではないか。スタッフのムードが悪ければ、士気も低下し帰属意識も当然のように薄れ、候補者の思惑通りに動いてくれないので、厳しい選挙戦が強いられることになってしまうのではないか。事務所運営の大切さをかんじた。

 つまり、中田塾員が勝てた要因の一つに、事務所運営が良かったことが挙げられると思う。
 また、後援者に恵まれたことも勝因の一つだとかんじた。後援会長は、某大企業経営者である。会長自らスタッフと同じ立場で一緒になって候補者を応援されていた。会長のてきぱきとした動く姿に「感動」したスタッフも多く、触発されて事務所内が活気づいたところが多分にあった。
 特に公示日にある駅で候補者が強く降る雨の中を、2時間に亘って 立候補の挨拶していた間、濡れるのも顧みず会長は、候補者の目の前でずっと直立不動で 耳を傾けられていた光景は、今でもはっきりと目に焼き付いている。その姿に我々スタッフは、「感動と尊敬の念」をかんじた。
 さらに会長の所の社員の方々は業務命令で応援派遣されていたにもかかわらず、同じくてきぱきと動かれ、回りから「さすが○○○○の社員」と一目置かれていた。

 運や縁かも知れないが、いい後援者に恵まれたことも勝因に挙げられると思う。
 短い期間の応援であったが、有権者の反応の低さに考えさせられ、選挙事務所では大切なことをかんじさせられ、有意義な研修ができた。

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草間吉夫の論考

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Yoshio Kusama

草間吉夫

第16期

草間 吉夫

くさま・よしお

東北福祉大学 特任教授

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福祉。専門は児童福祉。

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