活動報告

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宗家研修を終えて

 普段、私は「伝統は大事だ」とか「文化は守らなければいけない」と言った事を口にすることが多かったのですが、よくよく考えてみますと、何気なく感覚で言っているだけで、「伝統」とか「文化」に対する深い考察もないのに、よく分かってもいないのに使用していたと言える気がします。何もこれは私だけではなく、現代日本において間々見受けられるきらいではないでしょうか。確かに、私を始めとして多くの日本人は、何かの折に日本の伝統的な物事に触れることはあっても、日常は西洋的な生活をし、西洋的な思考をし、ほとんど日本の伝統的生活をしていないのが現実です。事実、伝統や文化が大事だと思っている自分も、恥ずかしながらこの政経塾に入塾するまで、茶道や武道といった日本の伝統文化を何一つまともに習ったことがありませんでした。

 御家元のお話の中に、昨年流行したSMAPの「世界に1つだけの花」の歌詞のお話がありましたが、その中に「伝統」「文化」を理解する一つのヒントがあったように思います。

 「確かに一つ一つの花を見れば、どれもきれいである。しかし、それが集まって全体を見たとき、色もバラバラ、大きさもバラバラ。まとまりがない。」このことを、人間社会に当てはめて考えてみますと、1人1人の人間が違うのは当たり前の話であって、そのバラバラの1人1人の人間が集まって、社会生活を営まなければならないわけです。そこに何か、1つの基準というか共通の規範というものがなければ、点でバラバラ、無秩序、無規範で集団での社会生活は困難であると思います。「伝統」や「文化」は代々受け継がれてきた基準や規範なのではないだろうか、と私は思います。茶道はその基準や規範が、その作法や型の中に凝縮され、1つの体系として顕わされたものの1つなのではないか、と御家元のお話を聞いて、またお稽古を通じて思った次第です。

 人間は何か比較する基準がなければ、自分と他者との違い、また自分そのものを正しく把握できない、たとえますと、鏡がなければ自分の姿を見ることができません。価値観が多様化し「個」の時代であると言われる現代こそ、無秩序、無規範に陥らず、正しく「個」というものを確立するためにも、何か1つの基準、規範が大切になってくると思います。「一人一人が主人公」的な「主人公」ではなく、今日庵のお軸にあった真の「主人公」の意味が現代にこそ生きてくるのではないか、と思いました。また、その基準、規範である「伝統」「文化」は、その型をそのまま受け継ぎ守ると同時に、時代に合わせた解釈やマイナーチェンジをし、進化もまた同時にする。実はそうやって受け継がれていくことこそが、「伝統」であり「文化」であり、真の「守る」ということなのではないか、ということも学ばせていただいた次第です。

 「伝統」とは何なのか。「文化」とは何なのか。今回の宗家研修は大変短い期間ではありましたが、私にとってそのことを理解する一つのきっかけにすることができました。本当にありがとうございました。

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長谷川毅の活動報告

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Takeshi Hasegawa

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第25期

長谷川 毅

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