論考

Thesis

環境問題に対する基本認識

1.はじめに

 7月8日より9月30日まで、藤沢市環境部環境政策課の研修生として勉強することになった。
 現在決定しているスケジュールは、以下の通りである。

  

7月 

環境フェア 環境政策課 環境保全課 下水処理場 分析センター 

8月 

みどり課 市民農園 ごみ減量課 

9月 

環境政策課 議会 都市デザイン課 

 実際に行政の中に席を置いてみると、大変勉強になる事が多い。これまで、数時間話を聞いただけでは分からなかったことが、いろいろと見えてくる。
 藤沢市の環境部は、意識も高く、環境基本条例とその後の環境基本計画の中で、いかに 進んだ環境政策を打ちだせるか、市役所内外のさまざまなジレンマの中で頑張っている。
 「今は何も出来ていないけれど、将来はここまでやりたいという、理想をしっかり見て ください」とも言われた。 9月まで、出来るだけ多くの事を吸収していきたい。

2.エレクトロラックスの環境戦略

 5月に地球環境問題に対する積極的な取り組みで、グローバルリーダーを自負する「エ レクトロラックス」を訪れた。 50か国に関連会社を持ち、従業員数11万人を誇る欧州最大の家電メーカーであるエ レクトロラックスは、環境オリエンテッドな企業への転換をめざし、世界的にめざましい 成果をあげている。

 エレクトロラックスの環境ビジョンは、

 

1責任 

製品と製品の製造過程に改善を加え続けることにより、持続可能な開発に貢献する責任を持つ

 

2慎重さ 

深刻な環境汚染をさけるべく、生産活動を慎重にコントロールする

 

3トータルアプローチ 

生産、流通、廃棄の全ての段階において、LCAを行い、環境への負荷と資源.エネルギーの消費を最小にする

 

4予測性 

将来の環境ニーズに合致する製品をつくる

 

5優先順位 

エコロジーという観点から、最もふさわしい環境技術への投資に、優先順位をおく

 

6マーケットリーダー 

環境に配慮した製品を作ることで、競争力を維持し、さらにはマーケットリーダーをめざす

 

7利益の追求 

資源の効率的な利用により、大きな利益を生む

 に集約される。

  この環境ビジョンは、エレクトロラックスの「資源の枯渇と環境の悪化は、今後ますま す深刻化する。将来の顧客は、より環境負荷の小さい製品を求めるようになり、限られた 資源であるエネルギー.鉱物資源の価格は上昇する」という認識を根底としている。

 エレクトロラックスは、この環境ビジョンに基づき、次のような取り組みを行ってきた。

 まずはエネルギー消費の削減である。
 1990年から1993年までの間に、社内の全てのエネルギー消費量を8%削減し、 14%のコスト削減に成功している。

 水消費についても、世界の水資源の中で3%に過ぎない真水を、無駄なく使用するべく 、製造過程に改良を加え、毎年水消費量を減らしている。エレクトロラックスは、水を効 率良く使用するための設備投資は、将来的には多くの企業にとって、より重要になってくると考えている。

 交通に関しては、現在エレクトロラックスのヨーロッパ市場における製品の75%は、 トラック輸送から、環境負荷が小さくコストも安い鉄道輸送にきりかえられている。これ により、資源とエネルギーの消費を大幅に削減することが出来るのである。

 エレクトロラックスは、生産,流通.廃棄の一つ一つの工程において、クリーンテクノロ ジーを導入し、資源、エネルギー消費の無駄を省いている。このようなクリーンテクノロ ジーへの投資は、長期的には必ず多くの利益を生むと、そう考えているのである。

 さらに、環境オリエンテッドな企業として積極的なPRを行い、確固たるイメージを確 立しつつあるこの会社は、マーケットでのシェアを確実に伸ばしている。

 93年には世界で初めて、完全にノンフロンの冷蔵庫を開発。これにより、世界の幾つ かのキーマーケットで、シェアの向上をもたらした。

 自社で扱う全ての製品に関しては、製品の環境負荷に対する緻密な分析を行い、冷蔵庫 、掃除機、チェーンソーなどのLCAを開発している。

 エレクトロラックスは、有限な資源を浪費し、地球環境の悪化を加速させるような経済 活動を続ける企業は、消費者に見捨てられる時代がくると、そう考えている。

 このような認識にもとづき、ICCの定めた「持続可能な社会のためのビジネスプラン 」を順守し、94年には製品ラインの全ての工程における、環境改善プログラムを開発し た。
 またエレクトロラックスは、関連会社のある全ての国で、研究機関や財団と協力しなが ら、積極的に環境教育を行っている。

 本社のあるスェーデンでは、ナチュラルステップ(環境教育を行う非営利組織)と全面 的な協力体制にある。
 ナチュラルステップは、持続可能な開発のためには、科学的な4つの原則に則った経済 活動が必要であるとしている。
 この4つの原則とは、1再生可能な天然資源の消費 2環境容量を超えない廃棄3自然と生物の多様性の保護 4エネルギーと資源の効率的な利用である。

 3.環境問題に対する基本認識

 環境への投資にいくらかけているか、専門のスタッフは何人か、と聞くと、エレクトロ ラックスの副社長は、苦笑した。「今は全ての活動が、環境オリエンテッドなものであり 、それは答えられない」と言うのである。
 実際、環境ビジョンの実現のためには、製品ラインのマネージャー全てに、このビジョ ンが具体的なアクションプログラムとして実効されるよう責任を持たせている。さらに部 門の管理者と、環境対策室のスタッフは、環境ビジョンを推進し、さらなる環境政策を打 ちだしていく責任を負っている。
 先日、テレビでドイツの「環境産業革命」が紹介されていた。時代は確実に動き出して いる。日本はその流れに取り残されているのではないか。

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吉田裕美の論考

Thesis

Hiromi Fujisawa

藤沢裕美

第15期

藤沢 裕美

ふじさわ・ひろみ

どんぐり教育研究会 代表

Mission

環境問題 特に環境教育(森のようちえんなど)

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