論考

Thesis

インド、不可触民

1/9より、当塾理事曾野綾子先生と共に、インド・ネパールに行ってまいります。今回の主目的は、先生が主宰されている海外邦人宣教者活動援助後援会(JOMAS)の援助活動の一貫なのですが、援助後の視察にあります(総合雑誌『諸君』の~神様それをお望みですか~に連載中)。インドへのJOMASの援助の1つが不可触民の村に行われ、現地を視察する予定となっています。
 その話を聞いたとき、私が3年半前にインドで2ヶ月間研修をしたときの事を想い出しました。仲良くなった人々と談笑していると、彼がシャツの内側から何かの象徴らしきペンダントを取り出し、「僕はブラーミン(司祭階級)だよ!」と誇らしげに言いました。
その存在は知っていても、具体的事項に関して殆ど知識が無かったので、2冊の本(1.「不可触民、もう一つのインド」山際素男著、三一書房刊、2.「アジアハイウェー、褐色のインド亜大陸」NHKアジアハイウェープロジェクト、NHK出版)を読むと共に、カースト制度について改めて調べてみました。今月はそのレポートをしたいと思います。

カースト制度

紀元前15世紀以降、アーリア人(白色人種系)が西北インドに侵入した。そして、 トラヴィダ族などの先住民族(肌の色の濃い人々)との接触により、ヒンズー教が生まれたと言われている。
そして、アーリア人は先住民族の平定過程において、ヴァルナと呼ばれる身分制度を 作り上げた。ヴァルナとはサンスクリット語で色を意味するが、即ち、肌の色の違いに よる身分制度であった。そして、アーリア人の司祭階級『バラモン』を頂点に、王族・武士階級の『クシャトア』、農民・商人を中心とした庶民階級の『ヴァイシャ』、そしてこうした上位カーストに仕える奴隷階級の『シュードラ』という四姓制度に分化さた。しかし、この氏姓制度にすら属すことのできない最下層階級としてアンタッチャブル(不可触民)がおかれた。更に、ヴァルナとは別に職能別に身分を分けたジャーティ(サブ・カースト)では職業が2,000~2,500に細分化され、それぞれは世襲化される。

カーストの語源

15世紀末、初めてインド・マラバール海岸にやってきたポルトガル人が、インド特有の身分制度に気づき、それをカスタ(ポルトガル語で種族や血統を意味する)と呼んだ。それを語源として派生した英語のカーストは、ヴァルナとジャーティを区別せずに呼ばれたものである。

 

憲法17条  

1950年に制定されたインド憲法17条では、不可触民の差別を禁止した。また、カースト全体についてもカーストによる差別の禁止も明記している。

 

リザーブ・システム  

セジュールド・カースト(不可触民を指す役所用語。憲法17条により、カーストそのもので呼ぶことができないため、この呼称が使われている)と公認された人々に対し、公共機関や施設が一定割合(平均15~18%)で優先的雇用機会を与えられる制度。学校入学や奨学金制度にも適用される。しかし、この制度適用のための申請用紙には、数 百に及ぶカーストやサブカーストが列挙され、自らの出自を明らかにしなければならないため、その後の差別を呼んでいる。

  

ヒンズー教(イミダス’96より)  

バラモン教を基に成立したインドの民俗宗教。2大主神であるビシュヌ神とシバ神を信仰する2つの主要な派がある。業・輪廻の苦の世界からの解脱を説く。カースト制度と人間世界を等級化する浄・不浄の観念によって、厳しい差別体系である階級制度を形成してきた。

 特に、「不可触民」には彼らがどのような差別(虐殺・強姦・拷問)を受けてきたかが、著者のフィールドワークによって詳しく述べられていました。それぞれの例についてはここで述べませんが、興味のある方は是非ご一読下さい。また、私自身がこの問題についてコメントするには2冊の本のみでは不足と思われるのであえて致しません。

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堀本崇の論考

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Takashi Horimoto

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第13期

堀本 崇

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