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1997年3月

朝鮮半島問題における日本の対応
稲富修二/卒塾生     大串正樹/卒塾生     尾関健治/卒塾生     関口博喜/卒塾生     高野靖子/卒塾生     丁英順/第17期インターン     徐梅/第17期インターン     李光鎬/松下政経塾元研究員     鄭喜在/第17期インターン

「早期崩壊論」「軟着陸論」「軍事冒険論」と様々な仮説が語られる北朝鮮の将来。金日成の死から2年半経ったが、まだ大きな変化はない。今回は、日本はこの問題に対しどのように対応すべきかについて考える。

 
 将来起こる可能性のある朝鮮半島の事態について、日本に求められている最も重要な対応は、1.有事の際の対応と、2.対北朝鮮外交の2つである。
  1. 有事の際の対応

     現在、日米両国は「日米防衛協力のための指針(ガイドライン)」について見直しを進めている。主な論点は、米軍に対する後方支援、在外邦人救出、沿岸・重要設備などの警備・難民救助などである。これらの争点には憲法や集団的自衛権の問題が深く関わるため、憲法改正も含めた全面的な検討が要求されるが、現在進めている作業は個別的自衛権に関するものについてである。
     日本政府のこの対応は、朝鮮半島で有事が起きても短期間に米韓軍が勝利する可能性が高く、日本への要求も多くないと考えられる点で現実的なものといえる。とくに、憲法改正論議は国内での強い反発が予想され、時間的な制約があることを考えればきわめて妥当な対応である。
     しかし、将来的には早期に憲法改正をし、集団的自衛権を認め、極東有事に備える必要がある。集団的自衛権を認めるかどうかについては次の点を考慮して判断すべきだろう。

    (1)米国の国民感情
    有事が起きた場合、日本に期待される貢献は有事の大きさ、緊迫度による。米軍に大きな被害をもたらすものであれば、日本が軍事的貢献を避けるわけにはいかない。なんらかの軍事的貢献を果たさなければ、日米安保条約はもたないだろう。
     考えなければならないのは、米国の軍事同盟国として何をすべきか、ということである。軍事的貢献なくして米国民の信頼は得られない。
    (2)憲法上の問題
     有事における全ての状況を考慮することが不可能な以上、グレーゾーンの色分けには限界がある。有事が起こった場合、自衛隊の前線部隊が判断を下すことになり、武力行使に繋がる行為が行われる危険性がある。これはできるだけ大きな後方支援を模索する一方で、個別的自衛権を死守するために出てくる矛盾である。
     日本の将来の安全保障に必要なのは、個別的自衛権の範囲を国民の知らないところで広げることではなく、また政策に合わせて国民に理解できないような憲法解釈することでもない。政府がやるべきことは、国民に集団的自衛権の必要性をはかり、憲法を変えることである。
    (3)周辺諸国への影響
     集団的自衛権については、現行の解釈が近隣諸国に安心感を与えており、それを認めることはアジア周辺諸国を刺激し、戦争を誘発する恐れがあるという意見がある。
     その一方で、平時にこそ集団的自衛権について話し合い、日本の方針を明確に示すことが、周辺諸国に安心感を与えるのだという意見がある。後者の意見に賛成である。有事が起こった場合、日本の世論が急激に右に振れるのは想像に難くないことである。それを考えると一時的反発はあるにせよ、一貫性のある政策を示すことこそが、アジア諸国から信頼を得る道だと考える。

  2. 対北朝鮮外交

     北朝鮮の早期崩壊の可能性が低いことを考えると、日本にとって重要なのは対北朝鮮外交である。
     具体的には朝鮮半島エネルギー開発機構(KEDO)、国交正常化問題がその柱となる。KEDO、コメ支援については、日本国内でも様々な議論が起こった。KEDOは、もともと巨額な支出に懐疑的な声が強かったところへもってきて潜水艦事件が起きたため、感情論に走ったきらいがある。しかし、このKEDOへの財政負担は、北朝鮮に核開発をさせないための安全保障費である。北朝鮮が再び核開発に向かえば、日本の安全が脅かされるのは間違いない。それを避けるためには積極的に支援すべきである。

     次に、国交問題に対し、日本政府はどのような政策を採ればよいのだろうか。
     まず北朝鮮が軟着陸できるような政策を採るべきである。また、米韓両国と協議しながら決定することはいうまでもない。北朝鮮の経済状態は危機的状況にあり、もはや自力で解決できないところにまで追い込まれている。日本との国交正常化が北朝鮮の経済再建に有効であるならば、日本は国交正常化を推進すべきである。日朝国交正常化は北朝鮮の緩やかな変化を促すための、必要十分条件ではないにせよ必要条件であることは間違いない。北朝鮮を国際システムの中に巻き込むことが、いま一番望まれていることである。

     次に国交正常化を図るうえで日本政府は以下の点に留意する必要がある。
     まず第1に、米・朝「合意枠組み」は将来にわたって確実に履行されなければならない。日朝国交が正常化しても、米朝合意が揺らぐようなことがあれば朝鮮半島情勢は安定しない。
     第2に、日朝交渉は韓国と北朝鮮の南北交渉と並行して進展させなければならない。南北間の経済交流なしには、北朝鮮の経済開放、再建はありえない。
     第3に対北朝鮮外交を日本の国内政治に利用したり、逆に国内政治を北朝鮮外交に持ち込んだりすることは厳に慎まなければならない。
     これらの条件を熟慮したうえで、日本政府は、米韓両国と足並みをそろえ朝鮮半島問題に取り組むべきである。


稲富修二尾関健治大串正樹関口博喜高野靖子・ 丁英順・ 徐梅李光鎬・ 鄭喜在)
1997年3月 執筆
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