論考

Thesis

本物の政党とは

この3月、スウェーデンの与党、社会民主党の新党首選出と党大会の模様を取材した。

新党首(首相)となったG・パーション(47)の内閣では若い人材が着実に表舞台へ登場している。平均年齢は47歳。30代の閣僚は珍しくなく、労働大臣は28歳の女性だ。彼らは西暦2000年までの財政再建、雇用創出のプランと数値を具体的に提示し、新しいスウェーデンを手堅くスタートさせた。これらのビジョンは刺激的だった。が、それにも増して思わぬ副産物をこの大会で発見できた。民主政治を作動させるうえで、「政党が担う機能」ということがそれだ。議員後援会どまりで本当の政党を作り上げる努力を怠ってきた挙句、「政党政治は時代遅れ」とうそぶくこの国の政治に、ポッカリと抜け落ちた視点でもある。 まずは政策と公約の作り方と、それらの重みについて。大会前の数カ月をかけスウェーデン中の党員から持ち寄られた動議は2300。内容も福祉から安全保障までと総合的で、5巻、厚さ15センチほどの冊子になるほどだ。ひるがえって今春の日本の社民党大会では議案は2つ、50頁ほどの印刷物のみである。

 議論はと言うと、今回は特別大会ということで、3昼夜徹して行われた。通常は1週間ほどかける。自身も党員でスウェーデン地方自治研究の権威であるA・グスタフソン博士が先日来日した際、「今度の大会は短すぎた。えっ日本の党大会は1日?、何を話し合うの」と青い目を白黒(?)させていた。

 議論が煮詰まると、政策の細かい数字まで党員が逐一挙手で賛否を示し、党の公約を決めていく。政治家が一方的に出したり破ったりするばかりが公約ではない。逆に党員から政党と政治家を紐付きにする。よほどの度胸がない限り約束違反はできないだろう。

 そして会場に目を向けると、日本とは好対照で女性と若者が多かった。彼らに話を聞くと、「自分のイッシュー」を持っている。環境、女性、国際援助などだ。これらの問題意識で行動しようとする人は、私たちの国でならNGO等を活動の場に選んでいる。日本で政治に携わるとなると、即選挙であり、「シャバを捨てて」となる。その際求められるのは「覚悟」。一方スウェーデンの政党ではそんな悲壮感は似つかわしくない。多彩な社会的テーマとその解決へ向けた回路として、党の組織を若者にアクセスしやすいよう開いている。求められるのは「関心」だった。

Back

高橋仁の論考

Thesis

Hitoshi Takahashi

松下政経塾 本館

第10期

高橋 仁

たかはし・ひとし

自営業

Mission

社会保障、北欧社会民主主義

プロフィールを見る
松下政経塾とは
About
松下政経塾とは、松下幸之助が設立した、
未来のリーダーを育成する公益財団法人です。
View More
塾生募集
Application
松下政経塾は、志を持つ未来のリーダーに
広く門戸を開いています。
View More
門