活動報告

Activity Archives

100km行軍 感想

 100km行軍は、入塾以来、気にせずにはいられないイベントとして、頭の片隅でいつも存在感を発揮していた。私は高校時代から長距離が得意ではなく、30mダッシュならば陸上部にも負けない自信があったが、持久力を要求されると、200mが限界であった。そこへきて、100kmというのは、どうも桁が違いすぎるのだが、走るのではなく、歩くのであるから、なんとかなるであろうというよくわからない結論で、当日を迎えた。

 そういった個人的なつまらない不安をよそに、「イ組」リーダーとして、「イ組」が無事完歩できるよう全力を尽くさねばならないという立場にもあった。さらに、一人でもリタイヤすれば全員リタイヤというルールのなか、3年連続完歩の記録をかけている海老名先輩も同じ組であり、24期生としての連帯感が強く試されていた。

 さて、この「イ組」が絶対完歩するにはどうするものか、いろいろ考えたが、工夫するよりもなにも「感動的なゴールをしたい」ということに落ち着いた。最期のシーンは、無理にでも元気な私が誰か大変衰弱した状態のメンバーを数キロおんぶしてゴール、であるとか、予想を大きく裏切ってロ組よりもかなり早くにゴール、とか、かってにストーリーを描いていた。

 実際、歩き始めて気がついたのだが、時速5kmという速さが、私の普段歩く早さよりも早く、20kmを超えたあたりで、もうすでに膝の裏が伸びきってしまった。足を曲げるのも伸ばすのも痛い。この時点で、描いていた「元気な私」が誰かをおんぶして「感動的なゴール」をすることは断念せざるをえなくなった。しかし、まだロ組よりは先行していたため、もう一つに望みをかけるかと思ってはいたが、今度はその膝裏をかばってか、股関節が痛み出し、両足の小指に血が溜まりだした。これは、痛い。50kmあたりで、ロ組にもあっさりとぬかれ、とうとう自前に描いていた「感動的なゴール」のシナリオは破綻した。

 しかし、ここからが本当に「感動的なゴール」へのシナリオが始まりだしたのである。「事実は小説よりも奇なり」とあるが、まず福田さんが、私と川条さんの鞄を持つといい始めた。鞄を持ってもらうことによって、精一杯の速さで歩こうとすることができたが、それもとうとう限界に来た時、話のながれのなか、なぜか川条さんが「痛み止め」をもっていることが分かり、それを飲むことにより気休めかもしれないが、私はかろうじて早く歩くことが出来始めた。どれも、妙にタイミングが良かったのを覚えている。しかし中盤でペースが遅れたため、後半は、時間との戦いとなった。完歩はできたが、時間切れという「最悪のゴール」を向かえる可能性が出て来たのである。80km地点という、30分くらいは休憩したくなる休憩地点で、「イ組」に許された休憩時間は、なんと「3分」。夜通し歩いた変なテンションのなか、バナナを頬張り、ペースを速めた、それから、1時間後、85km地点で見たのは、なんとロ組の後ろ姿であった。ここは足を止めてはいけない。「イ組」の「感動的ゴールのシナリオ」の復活である。後ろがついてきてくれることを願って、猛追をすることを決意した。怒涛のロ組全員抜きを達成し、これでイ組のトップは確実と思ったのも束の間、すでに90km地点では無理がたたって、さらに足の痛みは絶頂に達し、痛み止めも切れてしまった。そして、ここからの10kmが政経塾を通り越して迂回してくるというなんとも皮肉なコース設計であったのである。帰りたいけど帰れない、戻りたいけど戻れないもどかしさのなか、進行担当の福田の指示にすがって足を進めていった。最後、99kmポイントから「イ組」全員で歩調を合わせて行進し始めた時、この上ない感動を覚え始めた。

 政経塾の門をくぐっての数十メートルは、サポートしてくれた先輩方や職員の皆様の笑顔にあふれており、なんと100kmを24時間以内に歩いたということが本当に過去のものになったものだと感動し、横一列でゴールする姿には「素直」「感謝協力」とは、と語りたくなるほど涙の落ちる「感動的なゴール」であった。

 「この道を 素直に歩む わが心 己に克ちて 夢を果たさん」

 事前に辞世の句として詠んだ歌であるが、夢を果たそうとするならば、己に克って笑顔で困難を乗り越えようとするのはいかにも心強くなり、ともに輪の中で感謝協力するようになることが当然かつ必要不可欠であり、その近道は「素直」な心になることであるというように改めて感じる。

Back

前川桂恵三の活動報告

Activity Archives

Keizo Maekawa

松下政経塾 本館

第24期

前川 桂恵三

まえかわ・けいぞう

前川建設株式会社

Mission

『地域主権型国家日本の実現』

プロフィールを見る
松下政経塾とは
About
松下政経塾とは、松下幸之助が設立した、
未来のリーダーを育成する公益財団法人です。
View More
塾生募集
Application
松下政経塾は、志を持つ未来のリーダーに
広く門戸を開いています。
View More
門