松下幸之助塾主ゆかりの地を訪ねるという私にとってまたとない貴重な体験が繰り広げられた。その中で特に印象に残った出会いや、気づきについて筆を進めていきたいと思う。

　ＰＨＰ研究所の江口副社長との懇談が初日行われた。その中で興味深いお話は「事前衆知」についてでした。塾主はまず自分なりにある結論を出す。その後結論を持った上でいろんな人の意見を聞くことをされた。そして自分の考えていたこと、人が言っていたことを融合させてよりよい一つの意見を出した。そしてとらわれずにこだわらずに自分の意見を考える。このときに「素直な心」で聞き、考えることが大切だとよく言われていた。そして人の話を聞くことを喜ばれていたのも自分で決断するための情報材料を蓄えておく目的を持っていたようである。非常に合理的な方だという感想と、人から慕われ、話を聞き出す能力に長けていたのだなという気がしてきた。今後ぜひ参考にしたい姿勢だと思う。

　次に真々庵の訪問で感じたことを書きたいと思います。塾主が生前ここに来て日本のことを考え、ＰＨＰ活動をさせていたとは聞いていたが、ここはなんと心が清らかにしてもらえるところなのかと感動が体に走った。ここは、塾主がひとつひとつこだわりを持ってすべてが配置されていると聞いた。非常に何事も徹底されている方なのだなというのと愛情が深い方なのだなというのがひしひしと伝わってきた。そして政経塾に対する志の深さを改めて徳田さんから教わった。胸が熱くこみ上げるものがあった。心してがんばらなくてはと内からこみ上げる思いが沸いて出てきた。そして自分はここに2度と来ることはないのだろうか？いやまた来たいと強く思った。

　知事訪問を今回は楽しみにしていた。それは私自身が日本を地域に根ざした味のある世界に誇れる国にしていきたいと考えるからである。そのために知事がどんなことを考え、改革をされているのかお話を伺うことは大きな示唆を与えていただけると考えていたからです。今回は京都府、和歌山、三重の３知事にお会いしてきましたが、とても3人ともフレッシュでなにかしてくれそうという第一印象を持ちました。そしてその県ごとに取り組まれるべき課題の優先順位は異なり、おかれている環境に違いがあるのがわかった。また直接選ばれているだけあって生活者、住民への対話の意識が強く、議会との対立や議論も当然のことと受け止め、果敢にチャレンジしている姿が浮かび上がってきた。これからは首長が日本を変える時代なのだと改めて痛感した。そして日本の官僚社会構造を変換させるためには、国民の意識レベルを上げ、国をゆすっていくことから始めることが大切だと北川三重県知事から伝わってきた。私もこうした知事と共に日本をよくしていきたいと強く思った。

　松下本社では、正治理事長と正幸副会長との懇談があったが、理事長のお元気な姿にほほえましさを感じた。こうして活動させていただいていることにただただ感謝しなくてはいけないなと強く思いました。政経塾生への塾主の思いがこうして今も受け継がれていることに感心するばかりであった。

　松下電器歴史館では、塾主の創業時の写真などを拝見した。とてもわかわかしい好青年であった姿はいままで見たことがなく、自分と照らし合わせて考えていた。自分だったらどうやって経営をしていっただろうか。何度も危機を乗り越えてきた経営手腕と運のよさのようなものを歴史からも垣間見た。それもすべて小さいころの修行の賜物であり、商人の心を師匠とする方かた学んでいたのはないかと思った。当時の時代背景からすると学歴よりもそうした実学こそ信じられる生きる術だったのだと思った。それにしても技術力にも勝る発想のすごさが他の人よりも数段長けていたのではないか？塾主の経営の本質は創業当時にまで遡る視点が大切な気がした。

　伊勢神宮参拝での感想は、日本の稲を収める倉庫が、あの内宮の正殿の神明造りだと聞き、驚きました。神道が自然を敬い、稲の豊作を願う人々の心からもしかしたらできたのではないか。豊作を祈る昔の日本の人々が思い浮かんできた。これは日本の精神文化だったというのもうなずけた。

　神宮の近くにあるおかげ横丁を周遊してきた。以前橋川さんが勤めていた赤福のおもちは格別おいしかった。おかげ横丁は橋川さんも中枢となってプロデュースしていたと聞いていたが、各地からおいしいものを集めてきただけあって多くの観光客が来ていてまたゆっくり回りたいと思わせるしかけがされていた。こういうまちつくりはおもしろそうだとつくづく思う。

　こうして1週間以上にもわたる関西研修であったが、まだまだ自分の中で整理されていないことが多いと感じている。改めてこの研修を振り返り、訪れた歴史の地や知事の活動に注目して自分のものとしていきたいと思っている。こうしたすばらしい機会を与えてくださった皆様に感謝しています。そして政経塾の今後の発展に私も微力ながら寄与して参りたいと思いました。