１ はじめに

　「１１日間」という長くて短い「関西研修」。松下電器本社をはじめ、ＰＨＰ研究所、真々庵、霊山記念館といった松下幸之助塾主ゆかりの地の訪問、宗家における茶道研修や伊勢神宮参拝、関西自治体訪問と知事との対談など、内容が盛り沢山であった。

　今回の研修を通じ、これからの人生を歩んでいく上で、重要かつ有意義な刺激と教訓を頂き、同時に多くのことを考えた。

２ 塾主の思い

　第一に、最も強く感じ入ったのは、「松下幸之助塾主の、人間、企業経営や社会生活、日本の歴史や文化に対する思い（志、愛情）の広さと深さ、そして熱さ」である。

　ＰＨＰ総合研究所、真々庵、霊山歴史館、松下電器歴史館、松下電器本社などを訪問し、様々な方々からお話をお伺いし、また継承・展示されている物を拝見することで、それを新たなる「感動」と「尊敬」の念とともに感じることが出来た。

　塾主が常に心の拠り所とされた「根源の社」の４つ目は、「政経塾」に設置されたかった、と伺った。また、その塾主が晩年、本業以外に最も心血を注がれた３つのことは「ＰＨＰ」「霊山顕彰」「政経塾」であった、とも伺った。ある意味、塾主の人生の結晶が詰まるこの「松下政経塾」で、まさに２１世紀の日本の舵取りを託され、学ぶ一人の塾生として、身の引き締まる思いを強くした。江口副社長の「松下幸之助と『同行二人』で、自らの身を律し、志は高く持ち、１秒たりとも無駄にせず…」という激励をかみ締めながら、日々の修行に取り組んでまいる所存である。

３ 誇り高き日本

　第二に、今回の研修を通じ、「わが国・日本の歴史や文化に対する理解と誇り」を改めて深めることが出来た。

　宗家研修では、「茶道」のお点前の実技研修を通じ、五百年にわたる茶道の歴史と、そこに脈々と通じ、１つ１つのもてなしの所作に体現・表現される「日本人のもてなしの心」を感じ得ることが出来た。また伊勢神宮では、悠久古来の「日本人の自然崇拝の歴史」に思いを馳せた。

　「茶道」も「神道」も、数多くある日本の伝統的な「道」の１つに過ぎない。しかし、その精神が数百年、数千年もの間、日本人の日々の生活の中に流れ続け、発展させられてきていることに改めて感銘を受けた。日本の教育や政治も、そのような日本の伝統精神からかけ離れた形では決して存続し得ないだろう。いや、むしろグローバル化し、多様化する現代だからこそ、そのような日本古来の伝統を貫いた、また歴史や文化に根ざした教育や政治を堂々と行っていくことが必要なのかもしれない。

　そのためにも、今回、改めて学び始めた私たち自身が、さらにより広く、深く日本の伝統精神に触れ、探究し、その精神を日常生活の中で体現・実践していくこと、またそれらを次の世代に自信を持って、しっかりと伝え継いでいくことが重要であるとの認識を強くした。

４ 期待と責任

　今回の研修は、いずれの訪問先においても、格別のご配慮とご指導を賜った。それは、松下幸之助塾主が建塾した松下政経塾で学ぶ私たちに対する「期待の大きさ」の表われだと受け止めている。同時に、それに応えていく「責任」を改めて強く感じた。

　特に、京都府・和歌山県・三重県の各知事との胸襟を開いた対談は印象に残った。準備・知識・経験の不足故、突っ込みの甘さに悔いが残るものの、各知事からは「変革のリーダー」としての気概を感じ、「次に続け！」という心からの激励を頂いたと思っている。同時に、一人ひとりの国民（府県民）の日々の生活に根差した変革、国全体の枠組みを変えるための地方主導の変革の必要性と可能性を感じ得ることが出来た。

５ さいごに

　今回、このような数多くの有り難く、素晴らしい経験をさせて頂いたことに対し、松下幸之助塾主をはじめとする関係者の方々に心からの感謝の念を禁じえない。

　関塾長から「松下幸之助塾主も、感動・感激したことを出発点に、実践してこられた」とのお言葉を頂いた。私自身、今回の関西研修を通じて感動・感激・感謝の念をもって感じた「松下幸之助塾主の思い」「誇り高き日本の歴史と伝統」「それらを受け継ぐことに対する期待と責任」、いわゆる「原点」を胸に、これからの実践活動に邁進してまいりたい。

以上

2002年11月 執筆