そこで、私は永世中立国、国民皆兵制で知られている国の〈民間防衛〉におけるいくつかの考え方に触れてみたい。
松下政経塾入塾以来、イスラエル、韓国と常に軍事的緊張下にある国々を訪れ、いずれも〈民間防衛〉のシステムが行き届いているのに驚かされたが、私は〈民間防衛〉は次の3つに大別できると考える。
(1)国民が臨機に戦いができるシステム(武器を管理し、定期訓練を行うといったシステム)を作ること。
(2)最終的には核によって攻撃されることまで念頭に入れて社会資本(シェルターなど)を整備すること(スイスは核戦争を想定したシェルターが整備されており全国民の95%を収容可能だ)。
(3)どの都市が攻撃されても国全体の機能が停止しないような国作りを進めること。
1つ目のシステム作り、2つ目の社会資本の整備は、イスラエルや韓国においても目を見張るものがあったが、3つ目の国作りにおけるスイス人の知恵は驚異ともいえる。
とりわけ感心したことは、永世中立を維持するために都市の機能分散と国際政治を意識した主要都市の配置をしている点だ。
例えば、ジュネーブは国際都市、チューリヒは商業都市、ベルンは首都(国内政治の中心)として、それぞれ機能を分散させている。地理的にもチューリヒはドイツの国境近く、ジュネーブは周りをフランスに囲まれ、首都ベルンはチューリヒとジュネーブの中間あたりと、地理的にも分散させていることが素人目にもうかがえた。
スイスは1291年に建国され、16世紀頃から中立政策を取っている。紀元前からフランク族、ゲルマン族の侵略の対象となっていたため、失敗を繰り返し、長い時間をかけ狭い国土(日本の約9分の1)の上、山が多く平地が少ない悪条件の下で、このような機能分散型の国作りを進めたのだろう。
ジュネーブはの街に一歩足を踏み入れると、国連のヨーロッパ本部をはじめ国際赤十字本部・ILO本部・WHO本部・ガット本部などの国際機関が所狭しと集まっており、どんな名分であっても侵略されづらい街となっている。有名なスイス銀行に世界の富が集まるのも、ただ声高に中立を唱えるだけでなく、あらゆる側面から国の防護性を高めた結果だということがよくわかった。
翻って日本に目を向けると、国民の臨戦体制は皆無、社会資本は未整備、国作りの面ではほとんど全ての機能を東京に集中させるなど、スイスよりはるかに恵まれた環境にありながら非常に立ち遅れている。
日本が今後、世界的に名誉ある地位を占めたいと思うなら、お金を配るだけでなく自国の防護力を増す努力も必要になってくると思う。こういう点から一極集中解消を考えるのも一計ではないだろうか。



















